まばゆいほどの新緑に包まれた七色ダムで2008年JBトップ50シリーズ第2戦『東レ・ソラローム』カップが開催された。紀伊半島の数あるビッグリザーバーでメジャートーナメントが開催されるのは今回が2度目。ワールドシリーズ2年目(1998年)の池原ダム戦以来となる。
七色ダムはフロリダバスの生息で知られる池原ダムと同じ北山川水系に造られたダム湖で、池原のすぐ下流に位置している。バスアングラーには池原の方が有名だが、「池原でバスが釣れる」という情報が流れ始めたころ(27~28年前)にはすでに七色ダムは爆釣のピークを過ぎていた。
しかし、優に30年以上の老舗バスレイクの魅力は尽きることはない。そのスケールの大きさと、紀伊山地の豊富な降水量は今なおグッドコンディションのバスを育み、今年も69cmを筆頭に数多くのロクマルが捕獲されている。
今大会は3日間ともに初夏らしい好天に恵まれた。大会初日は**除名**選手が58cmの3kgフィッシュを含む6,075gを持ち込んでトップに立ち、最終日まで手堅くまとめてトップの座を死守した。
**除名**選手は早いテンポで湖の広範囲を回り、大会初日のビッグワンは自らのリクエストでティムコからリリースされた6inシャッドシェイプのフォーリングでキャッチ。ハッスンやアイバムシ、シャッドシェイプなど大小さまざまなベイトを駆使し、長期プラクティスで絞り込んだスポットをラン&ガンで走り回っての勝利だった。1スポットに固執せず、1つの立ち木エリアを数投で見切り、イージーに反応してくれるバスとの出会いを多くしたことが勝因だと表彰台で語ってくれた。
今回はプリからアフター、回復したフィーディングのバスまでさまざまなバスが混在していた。どれを狙ってもビッグウエイトを叩き出せる可能性を秘めていたが、すべてのバスがイージーには攻略できないというのが今回の七色戦だった。
ウイナーの**除名**選手は動くことでそれを克服したが、それとは正反対の“静”のスタイルで優勝を争ったのが準優勝の加藤誠司選手と、3位入賞の北 大祐選手だった。この両選手はともに上流エリアに絞り込んでのサイトフィッシング。しかし、2人が狙っていたバスはまったく異なっていた。
加藤選手は大会初日、特大バスを持ち込まずして5,540gをマーク。エリアは3日間通して北山川上流と、西の川。立ち木やレイダウン、岩盤などのショアライン沿いの変化に付くバスをチェックする選手が多かった中で、同選手は上流エリアのインサイドベンドに広がるシャローフラットの沖側に浮かぶ時間が長かった。
狙いはズバリ、フィーディングに上がってくるバス。**除名**選手とはまったく逆の発想で、同じエリアに長く浮かんでバスが浮き上がってくるスポットをある程度察知してのサイトフィッシング。「シイラやカツオのナブラを撃つような感じかな」とヒントをくれたその釣り方は、ビッグバスは狙えないものの最小500gとアベレージサイズが高かった。あちこちでボイルが見られたのでフィーディングバスがいることは誰の目から見ても明らかだったが、難易度はウルトラA級。加藤選手はマスバリを鼻掛けしたiシャッドやヴェイロンで次々とグッドサイズをキャッチした。メインとなったiシャッドはフックセッテイングやネイルシンカーの挿入位置にもこだわり、ラインは2Lb。かなり繊細なリグでのアプローチだった。
加藤選手の誤算は水位の変化。2、3日目は減水したことでキロクラスが思い通りにフラットへ上がってこなくなり、3kg台でフィニッシュ。だが、特大バスが入らなくてもビッグウエイトが狙える加藤流フィーディング系サイトは、十分に優勝を手中にできるストロングパターンといえるだろう。
3位入賞の北選手は「上流エリア」&「ビッグベイト」のスペシャリスト。手堅くリミットをまとめてから一発必中で大きくゲインするスタイルで今大会のゲームを組み立てた。
大会2日目にはジョインテッドクローでビッグバスをキャッチしてトップウエイト(4,820g)をマーク。勝負が懸かった最終日は張り付く4人のプレスの前で2本のビッグバスをジャイアントミール9inで掛けるも、エレキに巻かれるなどのアクシデントで痛恨のバラシ。“タラレバ”になるが、1本取れていれば優勝できた可能性が高く、2本取れていれば確実に表彰台の真ん中に立てただけに、残念な結果となった。
それでも総合3位でフィニッシュ。TOP50屈指のデカバスハンターの今後の活躍を期待したい。
ロクマルフィーバーは池原ダムで火が付いたが、七色ダムでも少し遅れて体高のあるフロリダバス系のビッグバスが見られるようになった。その数は池原ダムには劣るが、軽く60cm UPを越す個体も少なくはない。ナナマルクラスの目撃談は今大会においても数名から聞くことができた。
今大会は誰が勝つかということ以外に、誰がロクマルを持ち込むかが注目された。プラクティスでロクマルをキャッチした選手はいたが、ハイプレッシャー下ではその確率はさらに低くなる。しかし、さすがはTOP50メンバーと七色ダム。多くのファンの期待に応え、大会初日に秦 拓馬選手が62cm・3,915g、最終日に小林知寛選手が65cm・3,880gを持ち込んで会場を沸かせた。
この2本のロクマルはともに会場となったスポーツワールドのすぐ下流エリアで捕獲され、ともにビッグベイトのサイトフィッシング。秦選手はヴェイロンのステイ、小林選手は廃盤となったT’sリーチ6”(ホワイト)を1-1/4ozという超ヘビーウエイトのショートリーダーDSにセットして仕留めることに成功した。
体調では小林選手が65cmで3cm上回ったが、ウエイトでは秦選手が3,915gで35g上回り、注目のビッグフィッシュ賞は秦選手が獲得。
この他にも3kgフィッシュが数本持ち込まれ、『ビッグベイトにビッグバス』というフロリダバス系のセオリーをTOP50メンバーが改めて証明した大会となった。
次回のTOP50戦は8月22~24日。**除名**選手の野尻湖メジャー6連勝が懸かった注目の1戦となる。