2013年7月20(土)~21日(日)に茨城県北浦・霞ヶ浦水系でJBトップ50シリーズ第3戦東レソラロームCUPが開催された。強風により金曜日は中止、土曜日~日曜日の2日間での競技となった。近年の霞ヶ浦水系の好調っぷりを示す高いウエイイン率の乱打戦を制したのは北大祐。シャローでキーパーを集め杭でキッカーをとるという理想的な展開で悲願のトップ50シリーズ初優勝を果たした。
プリプラクティス期間はまだスポーニングの影響がじゃっかん残っており、シャローではバズベイトや表層ノイジープラグ系での釣果がみられた。水温は25度前後。北浦中流域はアオコが広がっていた。一方の霞ヶ浦は比較的水質が良かった。オフリミット期間に梅雨明けが発表され水温も30度近くまで上昇した。
そのまま真夏に移行するのかと思われたが、公式プラ初日から一気に気温が下がった。朝夕は20度を下回り、ボートで走れば手がかじかむほどであった。それに伴い水温も徐々に下がり、2週間前に近い26度程度まで下がった。この時期の水温低下がバスに与える影響はプラスかマイナスか。少なくとも30度よりは26度のほうがいいように思える。試合前の各選手のSNSやブログを見ると、けっこう釣れているような雰囲気を感じた。「釣れる」と表立って書いている人はいないが、ネガティブなコメント・愚痴がほとんど無かった。実際に何名かに直接きいてみても、好感触を得ている選手が多かった。
7月19日。大会初日の朝。強めの北東風がスロープに当たってザブザブ状態。いつくかのボートが下ろしていたものの、後ろから大量の水を被る状態。その時点での風予報は4mだったが、帰着の15時には8~9mに強まる予報もあった。過去にもスタート時にこれくらいの波の時はあったものの、帰着出来ない・マリーナまで帰れないという事態をさけるために安全第一で初日は中止となった。
2003年のワールドシリーズ芦ノ湖戦で初日中止になったことはあったが、現在の予選・決勝方式になっていらい初めての事態だ(3日め中止はあり)。
これにより、予選・決勝方式は採用されず、土曜~日曜の2日間全員が参加する方法がとられた。
関東の沖に低気圧が居座り、木曜日の夕方から吹き始めた北東風は金曜日、そして土曜日の朝までやまなかった。本湖西岸はつねに風波に晒された。さらに、気温も低い状態が続き、まるで秋の大会のような服装を強いられた。
7月下旬の青空だけど寒い!そんな妙な天候の中、フライトが始まった。荒れた湖面を滑走するバスボート。上流へ向かうボートはすくなく大半が下流へ向かっていった。
震災復旧工事もかなり進み、走れる湖岸道路が増えてはいるものの、この広大な水域で陸上から選手を見つけるのは困難である。北浦下流~外浪逆浦~霞ヶ浦本湖最下流をまわってみたものの、収穫は乏しかった。
唯一の5キロオーバーを持ち込んだ田渕秀明が初日のトップ。アシ際でキーパーサイズを3本釣ったのち、風による流れの変化に絡む縦ストで、テナガエビを捕食しているであろうバスに狙いをシフト。小さいワームのネコリグ(イマカツ・アンクルゴビィ)とダウンショット(スナイプ・スキニーシェイプ)で鉄杭を狙った。この狙いが功を奏しキロフィッシュが連発。入れ替えも行い最終ウエイトを5255gとした。
2位は小野俊郎。狙いは北浦・常陸利根のベイトが絡む杭・ハードボトム。ネコリグ(ジャッカル・フリックシェイク5.8)とバックスライドリグ(OSPドライブスティック)を使い、横の動きでアピール。ダウンショットで縦・点の釣りをする選手が多い中、スライドフォールやスイミングという横の動きで差別化をはかり6本キャッチ。4230gで初日2位に。
3位は市村直之。前日から自信ありげだったが、そのとおりの結果に。(1)岸にブレイクが寄っている (2)風が適度に当たっている (3)水深1m前後の石。 これらの条件を満たしているスポットをチョイス。ポイントの規模にあわせて、大きい(広い)ところはチャターベイト、中~小規模なところにはネコリグ(ゲイリーカットテール・スワンプクローラー)を投入。5投以内にバイトが無かったら即移動というハイペースランガンで4220gをもちこんだ。
優勝候補の一人、篠塚亮が3835gで4位。北大祐は5位で初日を終えた。
頼末敦がボート不調で帰着遅れの失格となってしまったが、それ以外の全員が検量。頼末も魚は持っていたらしいので、ウエイイン率は100%といっても良かった。リミットメイクも約3割近くで、近年の霞ヶ浦の好調ぶりを証明する結果となった。
2日間に短縮されたことにより、2日めは競技時間が拡大された。前後それぞれ一時間延長し5:30受付・14:00帰着締め切りとなった。気温はあいかわらず低い状態だったが、最終日にして長く続いた北西風がようやくおさまり競技エリア全域を自在に駆けめぐることができるようになった。
快適に釣りができるエリアと競技時間の拡大がプラスに働いたのか、この日も絶好調の霞ヶ浦水系だった。
ウエイイン率は96%、リミットメイクも初日とおなじ16人が果たした。
全体的には釣れているものの、2日間連続して高ウエイトを釣るのはやはり容易ではなく、初日上位3名が2キロ以下に沈んでしまった。
単日3位は奥泉悠介。水温が下がった早朝・曇天時はブレイクに絡む杭。日が照っているタイミングはシャローのアシ・カバーのシェイド。それぞれを1/64ozネコリグ(ゲーリー4インチカットテール #ウォーターメロンブルーギル #クリスタルクリアーノンソルティラミネート)で狙い4290g。
2位は片岡壮士。常陸利根のシャロー~ブレイクをチャターベイト(ジャッカルブレイクブレード10g+アイシャッドテール4.8)の早巻きで攻めグッドサイズを連発させた。帰着間際に消波ブロックへ立ち寄り、ネコリグ(ジャッカルフリックシェイク4.8)を投入。ギリギリのタイミングでキーパーサイズが釣れ奇跡のリミットメイク。結果4375gとした。
初日5位で好発進した北大祐は2日めにトップウエイトを持ち込んだ。北浦本湖上流部のシャローをキーパー場とし、スピナーベイト(OSPハイピッチャー1/4oz)・クランクベイト・スモラバスイミング(ティムコミニラバ1/16oz+マルチスティック)などで狙った。キーパーを2~3本釣ったら、杭のキッカー狙いにシフト。5gのダウンショット(ゲーリーカットテール4インチ)が火を吹きグッドサイズを連発。風の当たる向きとリグのスパイラルフォールがキモだったとお立ち台で語っていた。
個体数の減少やバッグリミットが3本(チャプター・ローカルJB)になったことなどにより、近年のJB/NBCトーナメントでは「大きいのを3本」狙う釣りが多くなっている。一昔前によく聞かれた「キーパー場・キッカー狙い」等の用語が死語になりつつある。そんな中、今戦の北大祐は往年のトーナメント全盛期を思い出させてくれた。
霞・北浦水系はけっしてバスの密度が濃い場所では無いが、エリアが広大なので、57名の選手を賄うだけの器はじゅうぶん過ぎるほどある。前回の遠賀川戦はその対局にあり、あれはあれで過去に例を見ないほどエキサイティングだったが、今大会もバストーナメントの面白さを再認識させてくれた。
北大祐は2006年に頭角を表しJBマスターズ年間優勝2回、NEOマスターズ年間優勝、エリート5優勝、クラシック優勝などなどビッグタイトルを数多く獲得してきた。が、意外なことにトップ50の優勝は無かった。2006年の初参戦から3位~5位のお立ち台は9回。10回目のお立ち台が悲願の一番高いところになった。
今大会で年間ランキングもトップになり、このままワールドチャンピオンになれば数少ないグランドスラム達成選手の一人となる。
総合2位は片岡壮士。得意のチャターベイトを主軸に戦い、初日を7位でスタート。2日め2位までまくり上げたが北には一歩及ばす準優勝。トップ50参戦初年度初戦で準優勝という華麗なデビューを飾ったあとは、すこし大人しくなってしまっていたが、ここで再び存在をアピールした。
総合3位は田渕秀明。2日め3本2786gで18位まで落としてしまったが、初日の貯金と重量ポイント120満点中119点が効いて3位に踏みとどまった。
4位は篠塚亮。トップ50に地元有利は無しといわれるが、この選手だけは地元でもけっこう強い。というか、濁り水はたいがい強い。田渕どうよう2日めにスコアを落としてしまったが、安定力が上回り4位に踏みとどまった。
5位は澳原潤。トップ50では2年目だが、トーナメント歴はかなり長くポテンシャルはハンパ無い。スーパーキッカーを釣ってくることも多く、今戦も1994gでビッグフィッシュ賞を獲得した。
折り返し地点となる今戦を終えた年間ポイントランキング上位10名は以下のとおり
次戦は晩夏の桧原湖戦である。近年の北大祐の桧原湖での成績は6位・19位・5位・6位と好成績を残している。野尻湖でガイドを行なっていたこともあり、スモールマウスは得意なはずだ。
市村直之はこの4~5年は平凡な順位であるが、2006年と2008年にはお立ち台に上がっている。
SHINGOは波が激しいが2006年には優勝をしている。また今年は桧原湖によく通っているようだ。
そして篠塚亮は15位・6位・33位・優勝・4位とこれまた得意なほう。
※上記順位の開催時期はバラバラだが、基本的にディープの釣りがメインになる夏~秋の開催ではある。
澳原潤はいわずもがな桧原湖がホームレイクである。
上位5名はいずれも桧原湖には良いイメージを持っていると思われ、更に激しい年間ランキング争いになると思われる。
そんな第4戦エバーグリーンCUPは8月30日~9月1日に開催される。お盆過ぎの気難しい季節の開催となるが、トッププロならではの熱い戦いと素晴らしい技術を見せてほしい。
写真:NBCNEWS・オブザーバー
レポート:NBCNEWS H.Togashi