JBマスターズ 第4戦 ダイワCUP
10月19日()~10月20日() 長野県 野尻湖

ストーリー

2日間4キロ超えでパーフェクトゲーム!瀧本英樹がマスターズ初優勝

2013年10月19日~20日長野県野尻湖でJBマスターズシリーズ最終戦ダイワCUPが開催され126名が参加した。気難しい秋野尻を制したのはトップ50桧原湖戦優勝経験もある瀧本英樹。ほとんどの選手がディープを攻める中、ミドルレンジのハゼ付きバスを攻略するという裏技で2日間トップウエイトのパーフェクト優勝を飾った。

プラクティスデイ

 

記者は公式プラクティスの木曜日から野尻湖入りした。見事な秋晴れで朝の気温は4度。妙高山の山頂はうっすら冠雪していた。紅葉はそれほど進んでいない。水温は18度前後。日中は暖かいが、風が吹くとかなり寒くフル防寒を必要とする気候だった。
例年マスターズ最終戦ではシースピ沖や菅川ディープのフラットに船団が形成され多くの上位陣を輩出する。が、今年は様子が違っていた。シースピ沖がやや多い程度で、ほとんどのボートはバンクに沿って浮いていた。聞けばディープフラットではワカサギの群れを捉えるのが難しいらしい。

ディープフラット船団の中で特定の選手だけが連発する「○○劇場」という言葉がマスターズ野尻湖から生まれた。僅かな違いで一人だけ連発し、周りの選手は呆然と指をくわえるだけという状況。去年の主演は五十嵐将実だった。そんな「劇場開演」も最終戦の見どころだが、今年はそれが見られないようだった。

全体的には、秋らしく簡単に釣れる状況ではない。少し前は1500クラスの連発もあったそうだが、今は少し落ち着いてる状況。推定ウイニングウエイトは800~900を5本×2。ただし現実は厳しく2~3本釣れば上出来という感じであった。

曇天のDay1

薄曇りで始まった初日朝。放射冷却の影響がなく朝の気温は9度。日中の最高気温は14度。終日曇天でお昼近くに南よりの4mの風が吹くような状況。一見「釣れそう」な天気だった。

シースピリットさんから取材艇をお借りし、湖を時計回りに一周してみた。琵琶島の裏側に10艇ほど。樅ケ崎から松ヶ崎にポツポツ。菅川フラットは人気薄。一方その対岸の南面は人気ストレッチとなっており、優勝の瀧本英樹もそのストレッチでキャロシャッドのドラッギングを行っているような動作をしていた。準優勝の********の姿も。

竜宮崎を超えてみると一気にボートの数が増えた。おそらく過半数がこのワンドに浮いていた。圧巻はカトリック前で、20~30艇が密集していた。船団は深いレンジを狙っているが一艇だけかなり浅いところに浮いていた。総合4位の田畑二郎だった。
また船団の一番北側には総合3位の林直樹が浮いていた。初日2位の伊藤康晴もこの船団。今大会はラフィーネマルタ~寺ヶ崎とカトリック前の2つがキーエリアだった。

その後ボートを進めると、針の木ワンド~砂間ヶ崎でポツポツ、国際村~大崎沖はガラガラという状況だった。

最後に島の裏側でヒットシーンを見ることができたが、それが最初で最後。すれ違いざまに何名かに釣果を尋ねたが、ほとんどが1匹。お昼前から風がでたため、そのタイミングで釣れたのかもしれないが、取材艇で回っている時間帯に限ればかなり厳しい状況に思えた。

14時検量が始まる。思いのほかよく釣れたようで、検量所には長蛇の列が。126名参加で89名70%が釣ってきた。ただし1~2匹の選手が過半数を占めた。

700~800gのバスが多く、4本2キロ後半でシングル、3キロでお立ち台圏内という感じ。そんな中、瀧本英樹は4匹ながら4780gというビッグウエイトを叩きだしトーナメントリーダーに。サブパターンだったフットボールジグにビッグラージマウスが混じるラッキーもあった。

単日2位は伊藤康晴。カトリック・砂間ヶ崎・ジャンプ台ワンドの9~12mを1.3gダウンショット(ガルプアングルワーム)でスローに釣ってリミットメイクし4605g。

3位はYMCAと砂間ヶ崎のディープとシャローから釣ってきた西川慧。ディープはキャロライナ(OSPドライブシュリンプ)、シャローは表層I字プラグ(ジャッカルセイラミノー)で攻めた。セイラミノーでキロフィッシュを連発し5本で4080g。二年連続お立ち台にリーチをかけた。

終日雨のDay2

初日終了間際は晴れ間が覗いたが、強い風が吹き荒れた。そして2日めは朝から雨。気温は終日12~13度。地上に居る限りそれほど冷たい雨という訳ではないが、神経をすり減らしながらの大会の釣りで湖上に浮くには、厳しい雨だったと思われる。

余談になるが、初日に湖上を一周して感じたのは「野尻湖戦ではライントラブルが多い」事。他のフィールドに比べ小口径多数ガイドのロッドが多く使われる事、リグが回りやすいうえに水深が深いため回収時に糸ヨレが発生すること。更にラインが2lbクラスの細さであること。これらの理由に依るものだと思うが、湖上でガイドの糸絡みを直してるシーン、リグり直しに通常以上の時間がかかっているシーンに高確率で遭遇した。
それプラス、この本降りの雨である。細いラインはロッド本体に張り付くだろう。リグが軽いだけに余計。寒さと雨、そしてライントラブルなどのストレス。選手にとってはかなり過酷な一日だった。寒い河口湖・灼熱の三瀬谷、マスターズのエムはドMのMと自虐的に使われるが、天気の神様は最後の最後まで楽をさせてくれなかった。

激しい雨のため湖上にでることが出来なかった(カメラが無理)&バンク張り付きが多いため地形的に湖畔道路からの観戦も無理なのでこの日のようすは不明。雨により魚が上ずっていたという話はきけた。

13時に検量が始まる。この日も初日と同じく行列が出来た。釣れ具合もほぼ変わらず。
そんな中、カトリック船団で劇場をひらいたらしい林直樹が5本で3750gをマーク。伊藤・西川・佐藤大介らの初日上位陣がスコアを崩す中、初日5位の********が4キロを超えるビッグウエイトを持ち込んだ。これでお立ち台は確定。

その後現れた初日トップの瀧本英樹は真海を上回る4165gをウエイイン。瀧本の後に4キロを超える選手は現れなかった。

Result

初日4,780g、2日め4,165g。両日共にトップウエイトで瀧本英樹が完全優勝の偉業を成し遂げた。長野在住の同選手はスモールマスターの一人である。2007年のトップ50桧原湖戦ウィナー。チャプター野尻湖では優勝3回+お立ち台も多数。更に今年は河口湖での成績もよく、マスターズ3位、JB河口湖A優勝、JBII河口湖4位と絶好調だ。今シーズンが始まる前にダイエットに励んだ結果と本人は言っていた。

今大会ではプラクティスの段階でシャローにビッグスモールがたくさん居ることを発見。例年では見られない光景。その理由はハゼ系のベイトフィッシュにスモールが着いていたから。本番時は見えていたバスが居なくなっていたが、ミドルレンジにベイトフィッシュ共々落ちたと仮定した。ハゼ系ベイトは岩やカバー回りに集まっていて、それにバスが一緒にいるのは知っていたが、通常の食わせは効かなかった。ならばということで、シャッドプラグをカバーにぶち当てるというスゴ技で口を使わせた。その釣りをメインパターンとしつつも、シャローでのフットボールジグ、サイトのダウンショット(ロイヤルシャッドエコ2インチ)のサブパターンも織り交ぜ2日間連続してトップウエイトを持ち込んだ。

ほとんどの選手が10m前後のディープを狙っていたが、シャロー~ミドルで自分だけの魚を狙った見事なパターンでの完全優勝だった。

総合2位は********。大まかなエリアは瀧本と同じだが、こちらは10m超えのディープを狙った。ハゼ系ベイトのシェイプ・サイズに合わせたであろう超小型イモ仕様ワーム(サワムラスイミーバレットをカット)のキャロライナリグをズル引きし、初日5位の3815g、2日め2位の4130gをウエイインした。

3位は林直樹。一番人気のカトリックディープで林劇場を開演。キモは「リグを絶対に浮かせない事」だったという。1/32ozネコリグ(ティムコスーパーフィネスクローラー・レインエコスワンプミニ)を確実にボトムにつけながらのシェイクという、実際にやるとかなり難しいテクニックで他を圧倒。野尻湖マスターの意地をみせ総合3位。

4位は田畑二郎。同選手はどこのフィールドでも他より浅いレンジに浮き懐かしい銀色のロッドでミノー・シャッドを投げている姿をよく目にする。隠れたシャッドマスターだ。今大会もカトリックのディープ大船団に背を向け一人シャロー~ミドル勝負。初日が700g台、2日めが500g台と、ディープよりも平均サイズが落ちるものの、数で稼いで初日5本3462gで7位、2日め5本で2484gで10位の成績を叩きだした。

5位は中川雄介。竜宮と水道局エリアの4~7mをネコリグ(ノリーズ2インチシュリルピン)で狙い初日16位スタート。2日めに3260gを持ち込み単日4位。最終成績を一気にジャンプアップさせお立ち台へ。

去年までの最終戦は「ワカサギ絡みのディープフラットをキャロライナリグで」というパターンが多かった。今年はワカサギの生息域とバスがリンクしていない上にエビの数も少ないらいい。代わりにキーとなったベイトはハゼ系。天候不順で産卵が遅れたという当才魚が例年になく各地で湧いていた。釣り方もキャロライナリグよりはネコリグが目立った2013年だった。

AOYは五十嵐誠が獲得

第1戦優勝・第2戦3位・第3戦9位。第3戦を終えた時点で420満点中410点という圧倒的なポイントを獲得していた五十嵐誠。ただし2位の山村道祐も371ポイントを持っており、その差は39点。
シーズン中、野尻湖でガイド業を営む五十嵐にとってはホームレイク。一方の山村もパートタイムでガイドをしているほか、桧原湖ウィナーの肩書もある。同世代の熱い戦いが繰り広げられた。

「まわりに楽勝でしょ、って言われてるけど、大会一週間前は満足に寝られなかった」と言っていた五十嵐だが、初日に中型ながらもリミットメイクを果たし、肩の荷は降りた。2日めも1本ながらウエイインし111ポイント獲得。合計521ポイントで2013年マスターズ年間優勝、いわゆるバスアングラーオブザイヤーを獲得。2005年のクラシックチャンピオンに続き、JB3大タイトルのうちの2つを手中に収めた。

年間2位は大場直樹。第1戦から第3戦までの計6日間で5匹のバスを検量し、暫定6位で迎えた最終戦。2日間ともグッドサイズを2匹ずつ持ち込み年間2位までジャンプアップ。来年49歳。果たしてトップ50昇格はあるのか?!

3位は五十嵐誠を脅かし続けた山村道祐。最終戦は45位となった。

4位は長友政貴。2011年年間7位、2012年12位、今年は4位。毎年トップ50昇格権利を得ながらも辞退している。来年は一番になって昇格したいと抱負を語った。

5位はトップ50昇格を夢見て三カ年計画で九州から河口湖へ移住した長身のイケメン林晃大。見事計画通りに昇格権を獲得した。

アナザーストーリー:野尻湖で70cmのスモール?!

2日めの朝9時頃、一人の選手がポツリと会場に居た。どうしたのかと尋ねると「エリア違反で失格ですわ」と言った。そこから詳しく話を聞くと驚きの事件があった。

その選手は頼末敦。去年のマスターズ野尻湖戦で4位、今年のトップ50桧原湖でも4位と関西在住ながらもスモール戦に強い選手の一人だ。今大会も初日6位。食わせのキモが解っていたそうで、優勝する自信もあったそう。

そんな頼末がナゼ、エリア違反などという過ちを犯したのか。

結論から言うと「ナナマル級のスモールがヒットし、禁止エリアまで引っ張られた」から(驚)

2日め朝、野田屋沖の15mラインに入り、その2投目に事件は起こった。バスっぽいバイトを感じてフッキングしたその化け物は、過去に経験がないほどの抵抗をみせたという。「その時、鯉とかソウギョだとは思わなかったのか?」という問いに対して「バイトの感じもバスだったし、首振り感も絶対にバス、しかも相当巨大なバス」だと確信したらしい。首振りのピッチが過去に感じたことがない幅だったそう。琵琶湖でもよく釣りをするのでロクマルの経験は少なくないそうで、信憑性が高まる。

はじめは沖側に走っていたそうだが、突如進行方向を変えた化け物。ジリジリと迫る禁止エリアの境界線。しかしどうにも化け物の走りはおさまらない。
その時点で「トーナメンターより釣り人」の気持ちが勝ってしまった。まわりの選手に白い目で見られつつも、ついにその境界線を超えた。たまたま親しい庄司潤が近くに浮いていたため、事情を説明し、後から本部に自己申告する旨を伝え、そのまま禁止エリアにボートごと引っ張られた。

40分ほどのファイトで桟橋が間近に迫った。水深は5m。それでも「5mってこんなに深い?」というくらい化け物はなかなか上がってこなかった。桟橋に走られたらすべてが終わる。ただし運が味方してくれ、そのタイミングで化け物もとうとう観念した。
真横を向いて上に浮上してきたその化け物は正真正銘スモールマウスバス。長さはロクマルどころの話ではなかったという。公認ランディングネットの柄くらいあったそう。当然、ネットランディングできるサイズを超越してた。

そして・・・・

運悪く一瞬強めの風が向きを変え、ボートの向きが急変。化け物がボート下に入ってしまい、船底でラインが擦れてブレイク・・・・

という話だった。

体高はめちゃくちゃあってヒレもピンピンだったそう。スモールマウスの世界記録は5.4キロとのことだが、そこまではないにせよ間違いなく日本記録だったはず。

「大会失格は仕方ないけど、みんなに見せたかった」手の震えが止まらず放心状態の頼末敦は言った。冗談で「どうせ失格だし、まだ時間あるから禁止エリアで釣りをしてみては?」と言ってみたが「もう釣りをする気になりませんわ~」と笑っていた。

優勝が絡んだ状態で、競技を捨てて追った化け物。惜しくもキャッチはできなかったが、一生の思い出になることだろう。というか、一生悪夢にうなされるかも?

実際逃げられたので証拠はない。長さも推測ではある。だが、優勝が絡んだ2日めに、そんな嘘をつくとは思えない。近年は50アップがそれほど珍しくなくなった野尻湖。数クラス上の化け物が居てもおかしくはない。琵琶湖に続き日本に世界記録級のバスがいるフィールドが誕生した。

※文中の禁止エリアとはJB/NBCルールでの禁止エリア(琵琶島インサイド)です。

写真・レポート:NBCNEWS H.Togashi
取材協力:シースピリット&一番館 http://www.seaspirit.jp/

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