2015年3月27日~29日福岡県遠賀川でJBトップ50シリーズ第1戦ゲーリーインターナショナルCUPが開催され参戦5年目の小池貴幸がクランクベイトとラバージグを使いトータルウエイト8562gで優勝した。春一歩手前の厳しいコンディションだったが、今年から採用された「総重量制」新ルールで会場は大いに盛り上がった。
公式プラクティス
3月25~26日の公式プラクティスは霜が降りるほどの気温で始まったが、快晴に恵まれ日中の気温は高め。水温は上昇傾向で13~15度。桜開花ニュースのように水中にも春が訪れていることを期待。ただ午後になると海から冷たい北風が吹いて来ることが多く、そうなると水温上昇率は鈍る感じ。
記者も2日間釣りをしてみたが、素人に簡単にキャッチできる感じではなかった。バッティングが多い遠賀川なので、本戦では2~3割がノーフィッシュでは?という印象だった。
ただ天気は味方してれそうな予報だった。天候の影響をもっともと受けやすいこの時期の開催だが、週末に向かって気温がどんどん上昇する週間予報。トップ50開催期間はネガティブな天候に見舞われるケースが極めて多いが、今回は天気の神様が味方してくれたレアな大会だ。むしろ水温が上がりすぎて、魚のポジションが劇的に変わったり産卵前の食い渋り状況になりかねない感じだった。
総重量制ルール施行
2015年からJBトップ50シリーズは総重量制に変わった。最終的な順位は3日間の合計重量が重いほうから上になる。他の競技団体と同じ方式に変わった。ただし予選は従来どおりのポイント制。この改革によって選手達の戦略に大きな変化が現れることになる。今までは3日間通して「ハズさない」釣りを強いられることが多かった。特に最終日はゼロ申告だけは避けなければならず、釣り方も「守り」になることが多かった。3日間平均して釣って来る能力が問われていたが、今回からは違う。1日くらいハズしてもOK、3日間通して1番釣った選手が1番という単純明快なルールになった。
予選初日 小野俊郎がスピナーベイトで6キロオーバー!
遠賀川のトーナメントエリアについては2年前のこの記事をご覧頂きたい。 直線の川でエリア自体が広くないため、バッティングが多い。また、誰がどこで釣っているかが丸わかりの釣り場でもある。普通の釣りでは楽しいフィールドと思われるが、トーナメントとなると遠賀川特有の「バッティング・丸わかり」が選手を悩ませる。
初日のフライトをみてみると約20のボートが最上流側へ進んだ。インターセクション・堰・橋脚・リップラップ・ボトムの地形変化などなどバラエティー豊かなストラクチャーがぎっしり詰まった最上流部は他魚種を含め圧倒的に生命感に満ち溢れている。リリースフィッシュを含めサイズを問わずバスの魚影も濃い。当然のことながら選手の密度もあがり、朝イチは複数回のヒットシーンが目撃された。
一方、密度は高くないものの、一発大物が狙えるのが中~下流域。また、今時期は冬から春に移行する魚が立ち止まるであろう地形変化も多い。
そんな初日の中~下流で1人爆発した選手がいた。6065gを釣った小野俊郎だ。赤工場前と呼ばれるエリアでスピナーベイト(ジャッカル・メディス)とキャロライナリグ(ジャッカル・シザーコーム)を使い脅威の4連発。最終的にはリミットメイクし6キロの大台を持ちこんだ。
同じ中~下流組の小池貴幸も4本ながら5490gをウエイイン。今回小池が狙った地形は「深めのリップラップ沖」だ。具体的には岸際の水深が2mくらいある護岸ストレッチでボトムにリップラップがあるところ。そして、そのリップラップの切れ目に絡む2.5~3mのブレイクをゲーリー4インチダブルテールグラブをセットしたフットボールジグで狙った。
人気だった割に上流~中流域でビッグウエイトは出なかったが、1人気を吐いたのが藤井大介。細身のクランクベイト(ジャッカル・チャブルSR)で1.5mまでのシャローを狙い2キロフィッシュを含め3本キャッチ。サブとして2.5gダウンショットのズル引きでキーパーを集めリミットメイクを達成した。チャブルSRでは公式プラクティスでも3キロオーバーを釣ったそうで、全幅の信頼をもとに投げまくった。
誰もが認めるミスターオンガの沢村幸弘もさらりとリミットメイクし4230gで初日4位という好位置でスタートを切った。
全体的には59名中46名が検量し、その率は77%。釣れているように思えるが、0~1匹が過半数という厳しい状況だった。
予選2日目 ルーキー小林翼が3990gで単日トップ
朝の冷え込みが緩んだ予選2日目。日中の気温も20度を超えた。開花した桜・土手に咲き乱れる菜の花・霞む山並みという感じで春爛漫な地上。水温は15度を超えいよいよ水中にも春が来たか!と期待したものの現実はそう甘くなかった。
初日で懲りたのか最上流部のボートは半減し全域にボートが散る感じに。赤工場ポイントに行ってみると小野俊郎・沢村幸弘・今江克隆を見ることができた。100mほど上流には小池貴幸も。絶好の撮影ポイントではあるが、誰のロッドも曲がらなかった・・・。騒音防止のため8時までは全域スロー走行が義務付けられている。8時を過ぎたら一斉に動き出す選手たち。たくさん行き来するボート、そして次々落ちてくるルアーにバスは怯えているのだろうか。上がりたくても上がれないプレッシャー? ずんずん進む季節の割に水面下は沈黙を続けていた。
ただし、この季節は「春爆」という言葉があるように「どこかで誰かがハメる」のも事実。2日目ハメたうちの1人はルーキー小林翼。下流のリップラップエリアでシャッドを岩に当てながら巻いて5本キャッチ。3990gを持ち込み単日トップに。
もう1人は小森嗣彦。前日プラからメスが浮いている感触を掴んでいたため、ノーシンカーリグ(ゲーリーカットテールワーム)で中~下流にある水門前の50cm~1.5mハードボトムを狙った。狙いは的中しており、初日にも何度かグッドサイズ(メス)のチャンスがあったそうだがキャッチには至らず。2日目は風の弱い時間帯に爆発し5本キャッチ。オスが多くウエイトが伸び悩んだそうだが、それでも単日2位の3910gを記録。釣り方自体はドンピシャだったようだが、ノーシンカーリグ故に風の影響を受けやすく、初日・3日目は上手くアプローチ出来なかったと悔やんでいた。
単日3位はルーキー五十嵐将実。キャッチは2本ながらビッグフィッシュ賞獲得の2184gを混ぜトータル3144gとした。2日目後半からショートバイトに悩まされたが、閃きでルアーを変えたり、前日プラ~初日に一切触っていないが、プリプラでマーキングしていた新しい沈みモノスポットに入って一発で釣るなど、新人らしからぬ見事な試合運びだった。
全体的には0~1本が7割超え。その中には初日トップの小野俊郎・同3位の藤井大介も含まれる。初日以上に厳しい2日目だった。
予選結果
従来通りのポイント制での予選結果トップ10は以下のとおり
- 小池貴幸
- 沢村幸弘
- 五十嵐将実
- 泉和摩
- 五十嵐誠
- 川又圭史
- 小野俊郎
- 長谷川太紀
- 澳原潤
- 藤井大介
総重量降順で並び替えた実質順位は以下のとおり
- 小池貴幸 8,098g
- 小野俊郎 6,715g
- 沢村幸弘 6,342g
- 五十嵐将実 5,336g
- 藤井大介 4,989g
- 長谷川太紀 4,887g
- 泉和摩 4,342g
- 川又圭史 4,002g
- 五十嵐誠 3,992g
- 小林翼 3,990g
初日6キロ、2日目0.6キロの小野俊郎だが初日の貯金が効きまくって暫定2位にランクアップ。逆にポイント制4位の泉和摩が7位まで下がってしまう。
小池貴幸と小野俊郎の差は約1300gでメス1本で入れ替わる。もっと言えば、予選ギリギリ通過の青木大介も、2キロフィッシュ5本揃えれば脅威の29人抜きでウルトラ大逆転優勝することができる。もちろん可能性は限りなく低いがゼロではない。そこまで極端でなくとも、2キロクラスが何本か検量された今大会だけに、誰にでも大逆転の可能性は残された。これが総重量制の面白いところだ。
Day3 早野剛史が2850gでトップに
2日目が終わった時点で3日目の朝は雨予報だった。小野俊郎をはじめ巻物で釣っている選手のテンションは上がっていた。だが予報はハズれ晴天の朝を迎えた。気温は6時で13度もあり、数日前の寒さとは別世界だ。
この日もスタート直後から赤工場前へクルマを進めてみた。決勝日のフライトは予選順位順になるため、小野俊郎・沢村幸弘・五十嵐将実・小池貴幸という上位の顔ぶれが同エリアに結集した。が、誰のロッドも曲がらず。8時になると待ってましたとばかりに、各選手が下流方向へプレーニングで向かった。
ボート数が半減するとガラガラな感じになる。強いて言えば最上流部が人気エリアとなっていた。
風がなければ汗ばむほどの陽気。ボートプレッシャーも低減することから、最後にビッグウエイト続出か!?と期待が高まるが、現実はやはり甘くなかった。
30名でリミットメイクは0。単日トップは巻物で3本を持ちこんだ早野剛史。2852gを記録した。単日2位は市村修平。中~下流域の護岸をミノーのジャークとシャッド(デュエル SH-60)の巻きで流し3本ヒットの2本キャッチ。ミノーで釣った1本が2キロクラスで2本2550g。3位は関和学。予選29位通過だったことと雨予報だったため「とにかくビッグワン狙いで巻きまくる」作戦をとった。護岸を流しながらクランクベイト(エバーグリーン ワイルドハンチ)を投げまくり巻きまくり。エンジン移動無しで上流から下流方面へ流し続け浮いてるメスを2本キャッチし2066gをマークした。
Result 小池貴幸が逃げ切り初優勝!
暫定トップの小池貴幸は初日4本・2日目2本と数は釣っていない。1300g差で実質暫定2位の小野俊郎は初日に6キロ釣ってきた。1700g差で後に着く暫定3位の沢村幸弘は初日5本・2日目3本と安定している。「あの」遠賀川最強の沢村幸弘が最終日にハズすとは思いにくい。実質暫定4位の五十嵐将実との差も2762gしかなく、まさにヤバインチャン。プレッシャーが減るが競技時間も減る最終日。ツィッターには小池貴幸が1本釣ったとの報告があった。ウエイトは不明。
そして13時に検量が始まった。小野俊郎ゼロ申告、沢村幸弘が990g、五十嵐将実が686g。この時点で小池貴幸の勝利は決まった。
近年の若手ゲーリーファミリーの活躍は目覚しい。青木大介は言わずもがな、2013年に澳原潤・奥泉悠介、2012年に岩堀航、2011年市村直之と、小池貴幸の同世代ファミリーが優勝している。
その当時「自分は向いてないのか」と悩んでいた時期もあった。が、去年あたりから頭角を表すようになってきた。去年のトップ50北浦戦では予選2位通過、総合4位。
先日開催されたマスターズ第1戦も初日トップだった。2日目にノーフィッシュを食らってしまったが「この悔しさはトップ50の開幕戦で晴らす」と宣言し、見事にその通りの結果となった。試合の時は真剣だが、基本明るいキャラで戦い方もクリーンな選手ゆえに優勝発表時には多くの仲間に祝福されていた。
釣り方は前出のとおり、水温変化に強いであろう最下流域リップラップの切れ目ブレイクをフットボールで狙うのがメイン。具体的な使い方は着底後に2~3回ホップし、着底で少し待つ感じ。サブとして朝イチはクランクベイト、北風が強い時は流れが巻く中流域に移動というパターンで3日間戦った。トータルウエイトは8562gだった。
Mr.Onga沢村幸弘は今回も強かった。トータルウエイト7332gで準優勝。エリアは全域。釣り方はピンスポットのライトリグ(サワムラバレットのダウンショット・スイミーバレットのネコリグ)とブレイクでのフットボールジグ(ジャッカルナカタジグ+ゲーリーフラッピンホグ)によるリアクション釣法。フットボールジグのリフト幅やフォールスピードなどに肝があるようだ。前日プラクティスでメスを釣ることが出来なかったが、大会初日の朝に2.5~3mのピンスポットでグッドサイズのメスをキャッチ。思ったよりも季節は進んでいなくメスがまだ深い事を本番の早い段階で知ることができたのがキーだったという。
総合3位は初日に6キロの大台を持ちこんだ小野俊郎。2日目~3日目はその1/10の605g。「ウエイト制バンザイ」とお立ち台で言っていた。ルール改定に伴い一番に考えたのはシーズナルパターン。それこそがビッグバスへの最短ルートであるとプラクティス前から考え、基本通りに実行した。狙う魚は沖のハンプやハードボトムエリアで浮いているメス。使ったルアーはスピナーベイト(ジャッカル メディス1/2oz)とクランクベイトの巻物。サブでワームも用意したが、あくまでもボトムを取らずに浮いているメスを狙うためにリグはキャロライナ(ジャッカル シザーコーム+2.5gキャロシンカー)。
初日は狙いが的中しまくりスピナーベイトで1800gと1400g。キャロライナリグもワームが浮いている状態で食ってくるのはキロフィッシュ。ボトムベタではオスが釣れたそう。読み通り・狙い通り釣れる、しかもビッグバス。バスフィッシングの醍醐味中の醍醐味を大会中に味わい初日は6065g。2日目以降も同じ展開をしたもののプレッシャーの影響なのか差してくるバスがいなくなり総合3位。
総合4位は早野剛史。最上流エリアの流れが当たる旧堰跡(+反転流)をメインポイントとした。朝イチにその場所でフィーディングが起こることをプラクティスで掴み、朝の4時間ほどをその釣りに割いた。ルアーは3.5gダウンショット(ジャッカル フリックシェイク・ゲーリーヤマモト レッグワーム)で初日は7バイト4キャッチ。2日目も同じ戦略だったが思い通りには釣れず。3日目も同じ轍を踏みそうになり、急遽新しい釣り方を模索。結果、シャッド(ジャッカル ソウルシャッド)が火を吹き最終日のトップウエイトを持ちこんだ。
総合5位はルーキー五十嵐将実。メインエリアは下流域。誰もが敬遠した岸から遠いハンプやオダ状の沈みものをネコリグ(ゲーリー5インチカットテール・ジャッカル フリックシェイク)やフットボールジグ(ジャッカル ナカタジグ+チャンクロー・レイドジャパン オカエビ)で狙った。2日目の2キロフィッシュはフットボールジグのズル引きでキャッチしたが、その後、ショートバイトが続くようになり、バスが吸い込み易いスモラバにチェンジ。最終日は12時までゼロだったが、686gを絞り出し6キロの大台を達成。ルーキー初戦でお立ち台へ上がった。
第2戦ベイトブレスCUPは4月24日~26日に茨城県北浦で開催される。時期的にはもっとも釣れる(はずの)タイミング。15キロ台の乱打戦を期待したい。
写真・レポート:NBCNEWS H.Togashi