令和時代のハイテク魚探戦 藤田京弥が快勝
3月13~14日奈良県津風呂湖でJBマスターズ第1戦ismカップが開催された。津風呂湖でマスターズ戦が開催されるのは初。全選手レンタルボートでの戦いとなった。戦前の予想よりはよく釣れた大会で3~4割の検量率だった。優勝は藤田京弥。8~10mラインをうろつくバスをライブスコープで狙い初日7575g、2日目3044gを持ち込んだ。
雨の初日 藤田京弥が7.5キロでぶっちぎる
終日曇りの予報だったが実際は一日霧雨~小雨の初日。朝の気温は10℃ほど。体感的には温かい春の雨という感じ。なんとなく「釣れそうな」朝だった。
スタート地点の津風呂湖観光から左へ向かった選手が3割、右へ向かたのが7割。大会中も多少の人気エリアはあるにせよ、かなり広範囲にボートが散らばっている感じだった。
検量が始まる。マスターズの初戦は毎年春の早い時期に開催されるため「1日1本釣れるかどうか」のサバイバルゲームが多い。今回もそうなるのか?と思われたが、予想を遥かに超える釣れっぷり。
103名参加で検量は42名にもなった。例年第1戦のウエイイン率は0.5~20%ほどなので、稀に見るよく釣れた初日だった。
記者は津風呂湖に来るのは初めてで、検量を見て一番印象に残ったのは釣れるバスのサイズがバラバラなこと。上位陣は1000~1500gクラスのとても美しいコンディションの良いバスを持ち込んでいた。一方で5本で2キロちょっとのキーパーサイズギリギリのバス、600g~800gクラスの中型バス、単発の1800クラスなどなどとてもバラエティに富んだサイズのバスが持ち込まれたことに驚いた。いろいろなサイズのバスが混在していてとても健康的なフィールドだと思った。
予想を遥かに超える釣れっぷりで、もはや死語に近い「リミットメイク」「入れ替え」なる言葉も耳にした。
藤原啓司・佐々一真・藤田夏輝・梶原智寛・濱田禎二がそれぞれ3~5本で4キロ前後を持ち込み単日2位から6位。一つ頭飛び抜けて藤田京弥が5本7575gで暫定トップに。
初日の夕方には青空がでた。大会2日めは天気が大きく変わって終日晴れの予報。早春の大会では気温・水温変化が釣れ具合に大きな影響を及ぼす、と記者は長年思っていたのだが・・・・
2日め 天気変われど藤田京弥は強かった
大会2日めは朝から気持ち良い青空に。早春の新月大潮のタイミングなので、いままであれば「温かい雨でシャローに差しやすい・ローライトで活性が高いはず」や「晴れによる水温上昇で10時過ぎるとメスが浅場にあがってくる」などなど色々言われていた。特に早春は水温変化で大きく状況が変わる、と思っていた。
が、しかし、藤田京弥によれば、ライブスコープの映像を見る限りそれらはたいして影響がなかったそう。むしろ、100人のフィッシングプレッシャーによる影響のほうが遥かに大きかったという。
河口湖・芦ノ湖・琵琶湖など比較的都市部に近い湖は頻繁に観光船・モーターボートが走り回ってたりするためバスも人間の気配に慣れている。が、津風呂湖のような山間リザーバーは釣りボートのプレッシャーが大きくなる。
そんなフィッシングプレッシャーで2日めは2本のみのキャッチに終わった藤田京弥だったが、周りの選手も釣れていなかったため2日め単日4位、トータルポイント237点で優勝した。
総合2位は梶原智寛。今回の上位では唯一の(人間の目での)サイト組。2m前後のブレイクをクルーズする見えバスを狙い初日2本3,928g、2日め3本3,266gで準優勝。
3位は藤原啓司。チャプター津風呂湖・JB津風呂湖に長年参戦するローカルプロ。初日4本4,966g、2日め2本2,456gを持ちこみ地元の意地を見せた。ライブスコープでディープの中層を泳ぐバスにジグヘッドを直接アプローチする技で津風呂バスに口を使わせた。
4位は藤田夏輝。お兄ちゃんのほうも今大会からライブスコープを実戦投入。8~10mを回遊するバスに直撃~ミドストで総合4位。意外なことに今大会が初の「兄弟でお立ち台」だった。
佐々一真もライブスコープを使い、地形変化・沈み枝・バスなどを画面に映しながらジグヘッドをボトムシェイクしつづけ総合5位に入賞した。
1位から順に24、21、32、27、31歳。トップ50に比べ比較的若い選手が多いマスターズだが、もはや令和時代のバストーナメントに「過去の経験」は不要なのかもしれない・・・初老の記者としてはちょっと寂しい・・
藤田京弥インタビュー
今までのバスフィッシングの常識が色々覆された感じの今大会。改めて藤田京弥に電話インタビューをしてみた。
Q:津風呂湖の経験は?
A:去年の1月にちょっと行ったけどほぼ初めてのフィールドです。
Q:プリプラはいつ、どれくらいやりましたか?
A:2月末から3月の頭まで一週間入りました。全域を魚探がけし、地形を把握、沈みもののマーキングなどを行いました。ライブスコープで探すと湖全域の8~10mラインにバスがポツポツ映りました。
Q:今までのバス釣りのセオリーからすると、2月末の山間リザーバーでは「越冬場所」にバスがいるイメージですが・・・
A:小さいバスは越冬場所に居ると思うんですが、大きいバスは冬でも泳ぎ回っています。それは河口湖でも同じで真冬でも大きいバスは中層を泳ぎ回っています。
Q:プリプラで実際に釣りをしましたか?
A:ディープの中層に浮いているビッグバスをライブスコープで簡単に釣ることができました。
ブレードアラバマでも1時間でリミットメイクできましたよ。
試合初日に他選手がたくさん釣っていた600g~800gの魚が上流に溜まっていたのも発見していて、おもしろいように釣れました。
Q:周りの選手は釣れていないのでは?
A:あまり釣れていなかったと思います。
Q:ということは勝ちを意識しましたか?
A:勝たなくちゃいけない試合だと思いました。
Q:大会前日の金曜日の公式プラについておしえてください
A:自分のプリプラは割と早いタイミングでした。その後に他の選手がたくさんプリプラに入ったようです。なので、プレッシャーはけっこう蓄積されたと感じました。プリプラに比べて、前日のプラでは反応が少し落ちていました。プリプラのときはジャッカルRVドリフトフライ(3インチワーム)のジグヘッドで簡単に食ってきたけど、前日プラでは食いが悪くなってました。そこで、ワームやリグをあれこれ変えてみました。結果、最終的に辿り着いたのがDBユーマを小さくカットしたものの2.7gダウンショットでした。それまで無視していたバスが、それに変えたらすぐに口を使いました。他のバスにも効果てきめんで自分でもびっくりの展開でした。
Q:ジグヘッドからダウンショットに変えた理由は?
A:上下にパタパタとスイミングさせたかったのでダウンショットにしました。リーダーレスのセッティングにしたのは、シンカーがブラブラすると食いが悪くなると感じたからです。
Q:2.7gのダウンショットシンカーで、あんなにワームが小さいと抵抗がほぼなくなって横に泳がせるのはかなり難しいと思うんですが、縦の釣りなんですか?
A:横に泳がせることができますよ。ちょっと工夫はいりますが。
Q:え?冗談でしょう?私もそれなりに釣りやりますが、2.7gシンカーで、あのワームの小ささで3lbsフロロラインだとフォールは異様に早いし、8mラインを横にきれいに泳がせるのってラインの入水角度的・出てる長さ的にも無理じゃないですか?
A:できます(笑)しかもリグを不自然に上下に揺らすとバスは警戒して口を使いません。i字系のように揺らさずきれいに泳がせないと釣れません。
Q:そんなこと物理的に可能です?もしかして50mくらい遠投してます?
A:工夫は必要ですが可能です!キャスト距離は10mくらいです。2.7gにしてるのはフォールスピードを速くするためです。
Q:絶句・・異次元過ぎてもう頭が大混乱です・・・・。えっと、この辺の話ってすごいキモになると思うんですが公開しても大丈夫ですか?
A:ぜんぜん大丈夫ですよ。
Q:それは「真似できるものならやってみろ」的な?
A:かなりの練習が必要だと思います。
Q:大会初日を迎えました。前日と同じ雨でしたが、天候は気にしましたか?
A:プリプラのときから天気がどうであれバスは映ったので気にしていませんでした。
Q:ライバルはいましたか?
A:ゆいぴー(青木唯選手)と冨沢さん(冨沢真樹選手)は気にしました。
Q:ふたりとも同じ河口湖のライブスコープ使いですね。
A:ゆいぴーとはプラクティスのときも普通に話してたのですが、自分と同じ釣りをしてて、同じくらいのバイトを得ていたようです。
Q:大会初日が始まりました。最初に向かったのは?
A:会場でて左の筋の「みかえり橋」~「山口吊橋」へ向かいました。ライバルの2人も同じ方向へ向かっていました。
初日は11時までに1500、1500、1000、1000gくらいの4本でした。時間がたつにつれてプレッシャーがかかってきた感じでした。なので後半はエリアを大きく変えました。移動しながらライブスコープで魚を探し1本1500g追加でリミットメイク。プレッシャーが掛かってないエリアなので簡単に釣れました。その後、13時頃に1500gクラスを2連発して1500gフィッシュで揃いました。
Q:結果7575g、ぶっちぎりのトップウエイトでした。トップ50と違ってウエイト制でなくポイント制です。天気が大きく変わる翌日への不安はありましたか?
A:1500gを釣るのも2500gを釣るのも難しさは同じです。1500gベースの5本で7500gでしたが、この湖には2500~3キロクラスもいるので、できればそれを混ぜたかったですね。ゆいぴーや富沢さんがもっと釣ってくると思っていました。
天気はがらっと変わる予報でしたが、プリプラのときからの感触で天気は気にしていませんでした。それよりも、プレッシャーでどんどん難しくなっているのが懸念材料でした。
Q:2日目は朝イチから右の筋へ向かったそうですね
A:はい。左の筋はプレッシャーがかなりかかった感じなので右の本流へ向かいました。ですがこの日はDBユーマのマイクロサイズで完璧なアプローチをしてもなかなか反応がありませんでした。焦り始めた9時頃に、DBユーマでようやく1本キャッチ。次に見つけたバスにDBユーマをアプローチするも無反応だったので、アラバマリグを投げてみたら猛烈に追ってきて一発で食いました。
Q:JB/NBCでのアラバマリグは今年の2月17日にルール改定で使えるようになりました。いきなり実戦に投入するのはさすがですね。
A:実はアラバマリグはあまり使ったことがなかったんです。なのでJB/NBCルールに関係なくこの冬は河口湖でずっと練習していました。河口湖はワームが使えないので、ブレードとプラグのセッティングで研究していました。
そしてたまたま今年から使えるようになったので投入しました。プリプラのときは、簡単にたくさん反応させられました。
Q:アラバマを投げるタックルの強さからして今回使用したスリークマイキー90はトレブルフックが小さくないですか?
A:6番なのでなんとかなりました。でも強引にファイトすると伸ばされることはあります。センターのプラグをもっと大きくすると35cmくらいのサイズのバスがバイトを躊躇う感じがあったので90mmのスリークマイキーを使いました。
Q:9時頃に湖岸からジャッカルのNさんと地元奈良かつJB津風呂湖最多優勝の山岡計文選手が京弥選手の釣りを見ていたそうです。レジェンド山岡選手にして「次世代の釣りだ・・」と感激してたそうです。
A:9時頃に2本キャッチして、その後も連発してバイトがあったのですがミスりました。2日目はアラバマリグで合計5回バイトがあったけどキャッチは1本でした。なので、がっかりして帰着に向かいました。
Q:結果は優勝でした。
A:2日目は思ったよりも周りも釣れてなかったですね。
Q:お立ち台で「河口湖でライブスコープの釣りを練習してるので、他の湖では比較的簡単だ」と言っていました。
A:そうですね。河口湖では自分の他にも複数のライブスコープ使いが居ます。そして一年中練習しています。去年のマスターズ河口湖戦以降は更に周りのレベルも上がって、より難しくなっています。そのようなライブスコーププレッシャーの中で日々練習しています。なので他の湖だとまだライブスコープで狙われている魚は少ないと感じます。津風呂湖もプリプラのときはとても簡単に釣れました。
Q:道具を買っても高度に使いこなすのはまた別の話ですね。
A:この釣りは常に動いているバスを狙っています。常に人間が歩くくらいのスピードでバスが泳ぎ回っています。そしてライブスコープではバスがどっちを向いているかはわかりません。今回は風が弱かったけど、風が強い状況でボートを操船・ステイさせつつも、バスの泳いでいく方向にライブスコープのビームを当て続けるテクニックが必要です。風向きとバスの泳ぐ方向は関係ないので、かなりの操船テクニックが必要です。これはなかなか難しいです。
Q:振動子のクルクルシステムはなしで、エレキのヘッドにつけてるんですよね?
A:そうです。
Q:ライブスコープ歴は?
A:発売されてすぐに導入したので長い方です。
Q:京弥選手は普通のサイトも上手だしデジタルサイトもトップレベルです。
A:ライブスコープによるサイトは、普通のサイトを知らないとできません。
Q:普通のサイトやっててバスの状態やアプローチ方法で反応が変わるのを自分の目で見て経験を蓄積した。それをライブスコープの画面を通して脳内で補正し実行するってことですね?
A:そうです。
Q:と、簡単にいいますが、それには途方も無い練習時間とセンスが必要ですね。他の選手が今から猛練習しても追いつくのはかなり難しそう・・・
A:バスが中層に浮いている状況での大会なら、ライブスコープの釣りは最強です。今年のマスターズは全大会がライブスコープ向きなんですよ。
Q:だったらもう全戦優勝で!(と、冗談半分でゆったら)
A:そうですね。狙ってます。(と、あっさり)
令和時代のトーナメント=ハイテク魚探戦
ライブスコープを使ったサイトの釣りを、この大会に参加していた野村俊介が自身のSNSで以下のようにコメントしていた。
まだついてない選手は「俺もあれば」って思えるからまだ幸せだと思う。
装着していてもあの極小リグは映す事さえ難しい。今ライブスコープを使い年間300日くらい湖上でその「経験」を積み重ねている若い選手達に自分が追いつける要素がなくなってしまった気がしたのがノーフィッシュよりも痛い今回の気持ちでした。 https://www.facebook.com/shunsuke.nomura.96/posts/3727473394034698より引用
JB最高優勝回数を誇る野村俊介が頭角を表したのは約20年前。野村が今の藤田京弥と同じくらいの歳の頃。まだまだ野村俊介も強いが、今の20代の勢いには追いつけないと自身で語っている。それが「令和時代の新トーナメント」を物語っている気がした。
レポート:NBCNEWS
写真:NBCNEWS/BASS MAGAZINE