
2人だけ違う世界線?
異次元ライブシューティング対決は僅差で青木唯に軍配
2023年6月2日~4日に山口県小野湖でJBトップ50シリーズ第2戦東レソラロームCUPが開催された。同会場での開催は実に21年ぶりとなる。殆どの選手にとっては未知のフィールドでの戦いとなった。多くの選手が遠いバイトに苦しむ中、青木唯・佐々一真の2名が異次元のハイスコアを叩き出すデッドヒートを繰り広げ、最終的には124gという僅差で青木唯が逆転優勝した。
広大な小野湖
今大会の一番のトピックは21年ぶりの小野湖での開催である。山口県宇部市にある厚東川・太田川をせき止めた厚東川ダムによる人造湖で、その歴史は古く1949年に竣工された。標高はわずか30m前後でいわゆるマウンテンリザーバーではない。水色もクリアではなく関東でいう亀山・高滝ダム・水が良いときの霞ヶ浦水系に近い。厚東川上流は雨濁りが入っていた。周りに生える木々は種類がとても豊富だった。写真コーナーにいつも以上に風景写真を載せているので参照していただきたい。冠水状況からしてほぼ満水状態での開催だと思われる。
トーナメント会場は厚東川と太田川のインターセクションにある「アクトビレッジおの」に設置された。会場から太田川の最上流まで5~6km(バックウォーターは行けるところまでOKというルールで、限界地点が定かでない)、厚東川の最上流まで4km、最下流まで4km、その他インレットが複数あり。


湖のルールでエンジンが禁止されているため、河口湖よりも広い(長い)流域をエレキだけで移動しなくてはならない。JB/NBCのトーナメント会場としては最大規模のエレキレイクである。
21年前は鉛バッテリーとブラシ式モーターしかなかったため「エレキ壊した武勇伝」をたくさん聞けたが2020年代はハードウエアの進歩により大きなトラブルや帰着遅れはなかった。とはいえ、バッテリーの運用管理に神経と時間・お金を使うのは間違いなく、釣り以外での負担は少なくないのがエレキ戦である。
小野湖の特異な点がもうひとつ。全選手のボートの上げ下ろしを行う"アクトビレッジおの"の営業時間に合わせプラクティス中は9時からの出船だった。故に全選手9時前の状況は未経験なのだ(早朝岸釣りプラはOKとされた)。大会当日に初めて9時前の湖で釣りができる。これは長いトップ50の歴史で初のケースだ。
21年前にも参加した選手は7名。現在42歳の小林知寛が当時も参加した最年少選手。21年前とは湖の状況も異なっており、ほぼ全員が初めてのフィールドと言っても過言でなく会場が固定化された近年のトップ50では極めてレアな大会となった。
Day1 青木唯・佐々一真が6キロオーバーでいきなり独走
台風2号の影響で大雨も懸念されたが杞憂で終わった。日本列島には東西に伸びる長い雨雲が2本横たわっていたが山口県宇部地方はちょうどその合間に位置していた。終始曇~小雨といった天気だった。前出のように会場となるアクトビレッジおのはインターセクション部にあるため、ここを起点に厚東川の上流・下流・太田川の3方向へ行ける。7時にフライトが始まると47のボートがきれいに3方向へ分散されたような動きだった。
9時から取材艇でまわってみた。まずは厚東川の下流へ向かってみる。岸沿いを流しながらカバーを打っている選手が多い。岸沿いにジグをキャストしそのまま手前に泳がせるいわゆるジグストをしてる選手が多い印象。次に多いのはやや岸よりでライブシューティングをしてる選手だった。
そんな中、だれよりも沖側に浮きボートを高速で流し、360°グルグル回っては止まったりバックしたりの明らかに違う動きしてる選手が1名。記者はもうその姿は見慣れているが、初めてみるひとは衝撃を受けるであろう操船テクニック。そう青木唯。
最下流付近まで下り特に収穫ないまま取材艇をUターン。中流域にて遠くでしゃがみこんでいる青木唯を見かけた。ヒットシーンにシャッターは間に合わなかったがグッドサイズをライブウエルに入れるところだった。
太田川をのぼってみる。ここでもヒットシーンに間に合わなかったが佐々一真がライブウエルにバスを入れるシーンを遠目で見た。厚東川の上流も行きたかったがバッテリー切れで断念。
寒くはなくローライトで霧雨・小雨。6月というタイミングを考えるとすごく釣れそうに思えるのだが果たして・・
大会前の釣れない話はどこへやら。検量台には長蛇の列。47名中38名がウエイイン。ただし1~2匹が29名。リミットメイクはわずか3名だった。
初日トップは青木唯。5本6,235gを持ち込んだ。もはや青木唯がどこでどんなウエイトを持ち込んでもそんなに驚かなくなっている。佐々一真も5本で6,050g。3位以降は3キロ台でダブルスコア。この2名が異次元過ぎた。
2日めは天気が180°変わる予報だが果たして・・・・
Day2 初日と真逆の天気な2日めだがライブシューターには影響ゼロ!?
台風の影響がなくなり2日めは朝から快晴となった。スタート前に軽くそのことについて青木唯にきいてみたが愚問のようだった。ライブスコープ以降の釣りをBASS2.0とするならば、1.0の頃、バスに限らず魚釣りは天候に大きく影響されると言われてきたし実感としてそうだった。しかし2.0は違う。過去に同じような質問を藤田京弥にもしたことがあるが天候変化は気にしていなかった。
この日は7時に取材艇をだし厚東川下流側から回ってみた。はじめはベタ凪だったが8時ごろから強風が吹き荒れ白波の場面も。そんな状況でも青木唯はいっさい姿勢を崩すことなく淡々とボートを意のまま操っていた。
青木唯以外の選手は初日と同じくほとんどが岸沿いを流しながら岸ベタ~手前をスイミングさせたりしていた。
太田川を遡ると昨日と同じポジションに浮いていたのが佐々一真。数十mの範囲を行ったり来たりし島の横にある浚渫を狙っているらしい。
青木唯は中~下流域の沖に泳ぐバス(主にベイト絡み)をハイペースで探し回る感じ、佐々一真は浚渫の地形変化に絡む沈みモノ等をじっくり、と両者狙いは全く異なるがこの2名だけが岸に依存せず沖でライブスコープを駆使して魚を釣っていた。
取材艇は厚東川上流にも向かってみた。茶色い濁りが入っていた。最上流域にはトップ50きってのシャローマン三原直之と薮田和幸が浮いていた。プラクティスでは寝食をともにする仲の二人だが、大会期間中釣りの話は一切しないらしい。にも関わらず大会が始まったらいきなり同じエリアでバッティングしたと薮田和幸は苦笑していた。
この日はヒットシーンに遭遇することはなかった。そして選手の空気から釣果を聞ける感じでもなかった。果たして結果は・・・
佐々一真がこの日唯一のリミットメイク!そして2日連続リミットメイク。ウエイトは4,930gで会場がどよめいた。青木唯も3匹ながら4,215gを記録。ライブシューティングの達人に天候変化はやっぱり関係なかった。3位の川口直人以降は2キロ台。上位2名が違う世界線で戦っているかのよう。
全体では47名中35名がウエイインするも1匹のみが19名。成績表をみると1匹200g台、2匹500gが比較的多い。小野湖はノンキーパー~キーパーギリギリサイズは比較的数が釣れるそうである。一方でキロアップも多く持ち込まれてるので、その間の700~800gクラスが少ないという世代構成のようだ。
予選結果
予選トップは太田川浚渫の沈みものにつくバスを狙う佐々一真で10,980g。2位は青木唯で10,450g。その差は僅か530g。3位は鈴木隆之で5,198g。4位安江勇斗4,860g、5位井上泰徳4,278g。上位2名が10キロ、3位以下が4~3キロという二人だけ別世界な予選結果となった。
総ウエイト500g差ながら佐々一真は両日リミットメイクした一方で青木唯は2日め3本と失速気味。ただし佐々一真にも余裕はなく自分のエリアの魚は釣りきった感があるうえ新しい供給もなく危機感を感じていたという。
予選通過ボーダーはウエイトでいうと1500g前後。30位の福島健、29位の梶原智寛は単日1300gクラスを1本釣って予選通過した。
決勝日ラスト5分で佐々一真にヒットするも124g差で青木唯が逆転優勝
最終日も朝から快晴の天気。この日は取材艇がないため陸から上位2名を追った。青木唯は3日間を通して厚東川の中~下流域を攻めきった。道路から見える範囲は狭いが初日・2日と同じようなコースを流しているのを確認できた。
佐々一真も3日間同じ太田川の浚渫エリアに浮いていた。開けたワンドの沖に浮いているため佐々一真はずっと目視出来る範囲に浮いていたが、ロッドが曲がることはなかった。佐々に密着しているBasser誌取材班によれば1本はキープしているらしい。9時をすぎるといよいよ浚渫エリアを見きったのか、周囲のシャローカバーに狙いをシフトしていた。
13時前に会場へ戻り帰着する選手のボートを撮影していたとき、対岸に浮く1艇のボートが腰を落としてファイトしていた。黒いサウザーにGARMINロゴ、そう佐々一真だった。
遠いのでサイズははっきり分からないが小さくはないようだった。無事にネットインしたのは帰着僅か5分前の奇跡だった。後に「初めてライブスコープを当てずに普通に釣りをして釣った」と言った。
そんな奇跡の1匹が入ったものの結果は青木唯が124gの僅差で逆転優勝。決勝最終日、佐々一真は2本3,130gだったのに対し”まくりのゆいP”は3日めに釣り方を大きく変えて3本3,784gをキープした。数字的には僅差だが、佐々一真は自身のブログにこう記した。
でも彼のインタビューを聞いて「負けていたな。」と思えました。
今回僕は勝利の女神がめちゃくちゃ微笑んでいた。
チャンスがそこら中にあった。
運が味方に付いた僕に対して彼は練習からMAXウエイトを狙って自分の魚を釣って勝った。
差は124gと僅差に見えますがそこには大きな差があったなと思っています。
https://sassa-kazuma.com/?uid=956より引用
佐々一真の結果も運ではなくしっかりした練習と戦略・テクニックあってこそなのは間違いない。大会終了後に本人に聞いてみた。みんなライブスコープ積んでるけど何故佐々一真にだけ釣れるのかと。青木唯の場合は沖の空中戦≒3Dの釣りなので一朝一夕で真似できるものではない。一方で佐々一真の浚渫の釣りは失礼な言い方になるかもしれないが昔からの定番な釣りであり、ライブスコープ的な機材はほとんどの選手が装備してるため、浚渫の釣りなら佐々一真以外でも釣れるのでないか?という疑問・・愚問?。しかしそれは間違いだった。佐々一真はライブスコープを2台フロントに用意し、一台はパースペクティブモードで沈みものを探し、もう一台は前方モードでバスを探す。
ここまでは誰でもできるかもしれないがキモはその先にあり一言で言えば「精度」が違うらしい。肉眼で行うサイトフィッシングと同レベルのことを画面内で行えるほどの精度。藤田京弥・青木唯の活躍でやや目立たない感はあるが佐々一真はMr.ガーミンとして日本で一番古くからライブスコープ画面を見ている選手の一人であり実績もじゅうぶん。佐々一真はとてもジェントルな選手なので自ら多くは語らないがひとことで言えば「ライブスコープの釣りが他の選手より圧倒的に上手い」というシンプルな答えのようた。
ただし今回は青木唯が一枚上手だったようだ。普段優勝してもそれほど感情をださない青木唯だが今大会は優勝が決まった瞬間感情が爆発。大きく手を上げ、そして号泣した。青木唯にしても決して楽な展開ではなく苦しみ抜いての優勝だったようだ。
総合3位は厚東川最上流域をビッグベイト・フットボールというマイスタイルで攻めぬいた薮田和幸。4位はディープの水中岬+ワカサギにからむバスを狙った鈴木隆之。総合5位は厚東川中~下流のミドルレンジを狙った江尻悠真。余談だが1位・3位・4位が山形県出身だった。
青木唯インタビュー
4月末~5月頭のプリプラクティス期
--よろしくお願いします。
A:第1戦にロングインタビューなかったんですが今回はやるんですか?
--やるんです。第1戦でやらなかったのは大会中に最上流で河野君が釣りしているところを全く見れなかったからです。Basserさんが2日間同船してたのもあるけど基本的に自分の目で見れてない時ロングインタビューはやらないんです。今回は3日間青木くんが釣りしているのを見ていたのでやらせてもらいます。
ではまずプリプラの話から聞かせてください。プリプラはいつぐらいから何日やったんですか?
A:4月下旬、24くらいからずっとです。
--全選手のなかで一番長いくらいですかね?
A:そうですね。代わる代わる色んな選手は来てました。
--エレキのみであの広いとこを回るのはけっこうたいへんだと思うけど、どんな感じでまわったのでしょうか
A:5日間かけで全域回って、いろんな釣りで釣れたんです。ってめちゃくちゃ釣れた訳でなく1日1本とか3本みたいな。打っても巻いてもサイトしても。どんな釣り方もできる湖だな、と。で、トップ50は色んな釣りが上手い人が多いので僕がやっても勝てないと。
--打ったり巻いたりで釣れるけど、そういう釣りは自分以外に上手い人が多いから、それで戦ったら負ける。だから自分の得意なライブシューティングの釣りをする、と。
A:そうです。
--4月のその時期というとバスはどんな状況でした?
A:いろんなの混在していました。もう回復もいました。
--けっこう季節進行早いんですね。それを踏まえ例の沖の釣りをやり切るとプリプラで決めたんですね。
A:言うほどそんな沖じゃないんですけどね。
--あ、そうなんですか。それはじゃ後で聞かせてください。
A:はい。で、本当は決めつけては駄目なのかもしれないけど、その時点でもう釣り方は決めて、あとはその釣りか効くであろう場所をひらすら探しました。だいたいここらへんをバスが通るのかな、っていう場所を探していました。
直前プラクティスの感触は3本、2本、1本
--一ヶ月近く経過して直前プラになりました。
A:直前プラの5日間はその釣りしかやっていません。タックルも2本だけ積んで。会場から下流側だけを5日間見てまわって。どういう感じかな?って初日だけ2本釣ったんですよ。そこでタックルのセッティングなんかも確認して、あとはもうずーっとフックを折って、どれがバスかな?ってずーっと見て回りました。
--えーっと新時代の釣りなのでなかなか分かりづらいんですけどライブスコープの画面にバスっぽいのが映るんですよね。
A:プラクティスのときは投げ続けました。バスじゃないかもしれないけど、投げ続けました。バスかもしれないという法則性を見てました。
--バスじゃないのも居るんですよね?
A:9.9割バスじゃないです
--なのがいるの?ギル?
A:ヘラとワタカ
--あーワタカもルアーに食ってきますもんね
A:ワカタが厄介です。

--ワタカのサイズは?
A:だいたいバスと一緒なんで
--画面にも同じ感じで映ると。レンジも同じ?
A:うーん・・・他の魚たちはまちまちすぎて。
--プラクティス中に他の選手でバッティングしそうなひとはいました?
A:たぶん他の選手もシューティングは混ぜていたとは思うんですが、それだけをやり切るのはできないだろうな、って思ってました。
--取材艇でさっと見た感じだとシューティングっぽい動作の選手も居たは居たけどそんなにたくさんは居なかった印象で
A:いろんな釣り方でそこそこ釣れちゃうからそれだけをやり切れないんだと思います。
--直前プラ終わって、どれくらいイケるって感触でしたか?
A:他の選手のウエイトは全然読んでいなかったんですが、僕の釣り以外で凄いパターンがあるかもしれないって思ってました。僕はたぶん3本とれたら上出来と思ってました。プラクティス中に本気でシューティングした日がなかったので。試合本番でしか本気の釣りはできないので。自分はとれて3本かな?って思ってました。そして誰か絶対6キロ持ってくるとは思ってました。
--サイズはけっこういいサイズです?キロくらい?
A:キロ以上で3本で3~4キロかな?って思ってました
--3日間保つ自信はありました?
A:全然ないです。3、2、1くらいかと思ってました。
お昼前にはリミットメイクするも一抹の不安を抱えていた大会初日
--初日です。雨予報だったけどあんまり天気は関係ないんですよね?
A:でも雨は活性は良いです。どの釣りでもそうだと思います。
--初日は5本でした。どんな展開だったのでしょう
A:流しながら見ていって開始30分くらいで1本めを見つけてヴィローラで釣って、運がいいことにリグってるうちにもう1本が同じところに現れて、ほぼ2投連続の勢いで釣れて。
--見つけた、っていうのはずーっと流してて、基本はなにも映らなくてバスっぽいのが写ったらすぐ釣れるって感じ?
A:あの湖はそんなにスレていないので見つけてくれたら、ヒューって寄ってきてパク、みたいな。
--バスがあちこちに居て、居るけど食わない訳でなくて、スタートして30分は何も映らなかったけど、それっぽいのが映ったら高確率で食ってくれる、っていう感じなんですね
A:そうです。映ったのがバスだったら食ってくる感じですね。
--さっきの話に戻るけど、あんまり沖をやってないって言ってたけど、狙っていたのは岸から続くブレイクとかをやっていたってこと?
A:岩盤だったりブレイクだったりフラットだったりするんですけど
--あ、そもそもあの厚東川の中~下流でど真ん中は何メートルくらいあるんです?
A:本湖っぽいとこは25mとかあるところはあると思います。
--25mボトムの10mラインに浮くのを狙っていたという訳ではないんですね?
A:あんまりそういうのは居なかったです。岩盤とかに沿って動いてるやつとかを狙ってたので、そんな沖の魚ではなかったです。
--なるほど。ど沖のなんもないところの空中戦ではなく岸から続いてる地形を狙っていたんですね。
A:そうです。岸に沿って回遊してるバスを狙ってました。
--傍からみると結構岸から離れてるように見えたので。
A:けっこう距離をとって狙っていました。
--当日の話に戻ります。朝の30分くらいで2本とって、その後は
A:僕の流す範囲は会場横の橋から下流の水を動かす機械があるところまでの範囲なので、そこを行ったり来たりしてました。で、3本目は一回その下流まで流していってUターンして戻ってきて、最初の1,2本を釣った場所あたりで見つけて、ヴィローラで釣りました。
--その間はバスは見つけてないってこと?
A:うーん、そうですね、バスだったら食ってくるんですよ。
--ゆいPがバスを持ってるところを遠目で見たけど、それが3本目?
A:それは4本目ですね。
--ずっと流しててバスがちょいちょい画面に映って、釣れるのと釣れないのがある、というわけでなく、基本的には流してても映らなくて、バスが映ったらほぼ確実に釣れた、というイメージなんですね。
A:そうです。居たらもう食うな、っていう感触でした。
--記者が見た11時9分のバスが4本目。その時点はもうこれはイケるって感じ?
A:いや、これはもしかして爆発してるんじゃないかな?って。
--あー自分だけでなく、他の人も釣ってるのでは?という一抹の不安。
A:シャローとかもヤバいかもな、って思ってました。
で、5本目釣ったのが4本目釣ったところからずっと下流のカーブするところ。そこで1本見つけて、それはフットボールで。トガシさん(記者)とすれ違ってから30分くらいあとですね。
--ではもう昼くらいには5本揃ってたんですね。
A:2~3時間余ってたんでそうです。
--その後は? 翌日のプラ?
A:もう自分の魚は触らず、上の魚を見ていこうと、左の筋(*厚東川の上流)を軽く。自分の魚じゃないのでデカいのが釣れればラッキーくらいな感じで打ち続けて。それで初日は終わりました。
--検量したら周りはあんまり釣れてなくて。トップウエイトで。佐々君も6キロで。どんな感想でしたか?
A:僕的には一日で終わる選手じゃないので相手が嫌でしたね。バンクビーター(*岸沿いを流すスタイル)とかなら一日目バーンって釣ってもその後は萎む感じですけど、佐々さん系はまた釣ってくるタイプだから、これはヤバいな、と。
--ちなみにお互いエリアが全く被ってないから、お互いどこで何やっているかは大会中は知らないよね?
A:そうですね。一回も会ってないです。全然わかんなかったです。
--でも佐々君だから、だいたいライブシューティング系の釣りをやってるのは想像できるという。
A:上流にそんな場所あったかな?って思ってたんですけど、あの浚渫(佐々一真選手の場所)は怪しいなってのはありました。もしシューティングしてるんならあの浚渫だろうな、って思ってました。
11時までに3本釣るも、その後は苦しんだ大会2日め
--2日目は天気ガラッと変わって快晴だったけど、それはあんまり関係ないんですよね?
A:みんな同じくキツイので。
--あ、キツイはキツイんですね。で、スタートして初日と同じようなコースを狙ったんですね。
A:同じコースでした。で11時までには3本とったんです。ヴィローラで2本、ダディで1本。で、そっからがキツくて。
--魚が映らなくなった?
A:たまに映って2~3本は食ってきたんですが、プレッシャーか天気か、たぶんプレッシャーだと思うんですが甘いバイトで。一瞬ジって掛かるけどプンって外れるような。それが3回あって。もうかなりプレッシャーが効いてる感じがあって。で、バスの動きも変わってきてたんです。ベイトと一緒には居るけど浮いて食わないで、ベイトの下に陣取って、なんか警戒しながら食ってるみたいな。だから、これはちょっと新しい釣りを考えないとなーって思ってたのが、2日めでした。
--ベイトはワカサギ?
A:ワカサギとワタカですね。
--ベイトはそこら中にいるの?
A:居ることにいる感じですね。それはプラ中に把握してました。
--2日目は11時までに3本釣ったけど、その後はキツかったと。プレッシャーっていうけど、その魚って唯君以外は狙ってないのでは?
A:ずっとバスは回遊してると思うんで、ブラインドの人のルアーを見てるとか、極端にボートが多いとか、プラを5日間もしてるんで、絶対にバス達は気づいてると思うんですよね。
--なるほど。普段のことはわからないけど、そんなボートが多いようには思えないので、そんな静かな小野湖にいきなり50人も来て何日も釣りしてるから、ってことですね。で、帰着しました。3本ながらウエイトは良くて。
A:でも佐々さんが5本で。もう終わったな~って思いました。自分が3本の時点でもうこれは負ける試合だなって思ってました。
まだ居るんだろうなって。
--佐々くんのエリアにはまだ魚が残っていると。とはいえウエイトが良かったから予選結果は500g差でした。で、お立ち台で言ってたけど、2日目の夜に状況変わったバスを釣るために色々と作戦を考えた、と。
A:ヴィローラスリムのリアクションダウンショット用のタックルを1本増やしました。
--それはシンカーが重いやつですよね
A:5.3gシンカーですね。その重さで瞬間的に食わせる感じです。バスに考える間を与えず、みたいな。見せたら食わなくってたので、目の前にパッと落としてパクっと食わせる感じです。
--それも全て画面で解るんですね
A:だいたいそうですね。
--それは普段からやっていた技の一つですよね?他の湖でも。
A:自分の手のうちのひとつです。
運命の最終日、3本しか釣れず負けたと思ったが・・・
--最終日は3本でした。
A:ヴィローラスリムのリアクションダウンショットで2本、そのあとヴィローラのミドストで1本。11時半とか12時とかまでに3本(*最終日は13時まで)。自分的にはもうこれは駄目だったかーと。3本の時点で負けたと思ってました。
--で、帰着のために会場前に戻ってきて。ラスト5分で佐々君が会場前で釣ったのは知ってた?
A:帰着待っているときに耳にしたんですよ。あーこれは佐々さんの勝ちパターンじゃん、って。
今の自分のMAXをぶつけた大会
--でも結果的に124g差で優勝でした。だいぶ感情が爆発してました。あれは何故に?
A:小野湖はそれぞれの得意な釣りが炸裂する場所だと思うんですよ。
--いろんなスタイルの釣りが通用する。個性をぶつけ合える会場だと。
A:僕的には面白かったんです。真似されないし。僕のなかでの最強の自分の釣りを全力でぶつけたんです。シューティングの釣りでも色々あって佐々さんがやっていたようなボトムのエビ食いを狙うパターンもあります。でも、僕が狙ったのは僕が一番得意としてる中層を回遊してる魚、魚を食ってる魚をシューティングで狙う釣り、シューティングの中で僕の最強の釣りをぶつけてたんで。それでもし負けたら、トップ50で自分が通用しないってことになるので。必死でしたね。
--なるほど。最強を全力でぶつけて勝った、っていう嬉しさね。泣いちゃったもんね。あれは嬉し泣き?感動泣き?
A:ホッとしただけですね。ずっと吐きそうだったんで。
--あーずっと笑顔もなくね。副会長にも壇上で言われてたけど、優勝決まってやっとゆいPが笑ったって。やっぱりそれくらいのプレッシャーだったのね。おめでとうございました。ちなみに朝はいつもヨーグルトだけ?
A:ヨーグルトとウィダーのブドウ糖とみたいな。
--試合中はなにも食べず?
A:試合中はウィダーの別の味です。夜は毎日ココイチ。
--ココイチは験担ぎ的な?
A:ご飯の量とか野菜の量を自由に選べるので健康に良いなって感じで。
--なるほど。あ、最後に補足でベイトの話でワカサギとワタカの見分けについて、それは魚探映像で解るってこと?
A:わかります。大きさが全然違うので。どちらも群れで動いてるんですが、魚探に映る粒の大きさがぜんぜん違うので誰でもわかります。
--ワカサギについてるのとワタカについてるのはどっちが多いんだろう?
A:たぶんワカサギだと思います。長くついてるのはワカサギ。ワタカはすれ違いざまに食ってる食ってる感じ。
お立ち台でのオーバーシェアリング?!
--その辺はゆいPだけが知ってる深いナニカがあるんでしょうね。お立ち台で言ってた画面に映る魚の泳ぐ時速でバスかどうかを判断するみたいな。凄すぎ。
A:時速2.5キロ以上で泳ぐのがバス
--そんなキモをお立ち台でゆって良いの?
A:小野湖のバスの話です。あんまりゆわないほうがいいですかね?(笑)
--そう思います(笑)
A:プラクティスからずっとやってて、いろんな条件、バスである条件をずーっと探してて僕的に法則を見つけてったら・・
--2.5km/h以上で泳ぐのがバスだった、と。もう衝撃発言でした(笑)。この前のマスターズ河口湖でも表層の釣りのもの凄いキモになる波紋の話をライバルしか居ないお立ち台で話してて、えーーそれを言うの?って凄いびっくりしたけど、あんまりいわないほうがいいのでは?(といいつつここに書いてますが)
A:笑
--もちろんそれだけで釣ってるわけじゃないし、それだけで真似できるわけでないけど。そこまで言うんだって感心しました。
現状、無敵状態ですが、次は霞戦。あ、今プラ終わり?
A:はい昨日終わって今日は帰ってきたところです。僕的にはいま一番楽しいフィールドです。
--釣れそう?
A:わかなんです(笑)。気ままにやります。じぶんがやりたいことをやり通します。
--マスターズとトップ50と2戦あるもんね。
A:外せないです
--京弥くんはクリアウォーターだけでなく旧吉でも遠賀でも勝ってるので、ここでゆいPが霞で勝ったら、もう誰もぐうの音も出せない頂点オブ頂点だね。
A:カスミで勝つはかなかな厳しいです。でも、上位には入りたいです!
--ありがとうございました
キャプチャ引用元の動画
写真・レポート:NBCNEWS H.Togashi
写真・動画 青木唯Facebook
地図出典:国土地理院ウェブサイトhttps://maps.gsi.go.jp/を元にNBCNEWSが加工し作成