移住10年めで遂に頂点に!
安江勇斗 真夏の超接戦を制す
2023年JBトップ50シリーズ第3戦はSDGマリンCUPとして7月14日~16日に茨城県霞ヶ浦で熱く暑く開催された。上位3名の差が275gという超接戦を制したのは霞ヶ浦を極めるために10年前に愛知県から茨城県に移住してきた安江勇斗だった。
Day1 曇天無風 絶好のコンディション。5キロ台続々
大会前の木曜日まで行われる5日間の公式プラクティス期間は35℃を超える猛暑に襲われる日もあった。しかし大会初日は一転し終日曇天・小雨。気温も25℃前後に落ち着いた。風もエリア全域を走り回るのになんの支障もない無風~微風。これ以上ないほどの天候に恵まれた。
スタート地点は北利根川の潮来港。フライトが始まると8割のボートが霞ヶ浦方面へバウを向けた。
記者は午前中に霞ヶ浦本湖東岸を1時間ほどクルマで走ってみたが発見できた選手は僅か3名だった。
15時に検量が始まる。47名中36名がウエイイン。うち6名が5本のバッグリミットを揃えるという好釣果。トータルウエイトも絶好調で5キロ前後が4名にのぼった。この水系では3キロ台でトップウエイトになることが多く5キロはかなりのハイウエイトといえる。
初日トップは山下一也。5本で5550g。2位SHINGO 4本ながら5,440g(含む1990gのビッグフィッシュ賞)。3位安江勇斗 5,225g 5匹、4位梶原智寛 4,990g 5匹。
9位の三谷聡までが3キロ台。それまでの酷暑な日々から曇天ローライトに変わったのが功を奏したのだろうか、よく釣れた初日だった。
Day2 初日トップの山下一也に同船してわかったことは北利根が釣れてること
予選二日目も曇天ローライト・無風でスタートした。記者は初日トップの山下一也(以下山下)に同船した。山下は8番フライトで北利根川の下流へ向かった。その後、下流側に来たボートは数艇のみだったので二日目も多くのボートは霞ヶ浦へ向かったようだった。
山下の戦略は北利根川の岸沿いに点在するアシ+ミズヒマワリに着いてるやる気のあるバスをバックスライド系ノーシンカーで狙うのがひとつ。もう一つはそれらの沖の沈みものに着くバスをネコリグなどで狙う方法。
朝の早い段階ではミズヒマワリをテンポよくまわっていった。そして開始10分、斜め護岸でバスっぽい音のボイル音が射程距離内で発生。すかさずバックスライドリグを直撃し首尾よくヒット! 小型ながら幸先よいスタートを切った。
その頃、対岸のアシに浮いていたのが初日3位の安江勇斗だった。
朝の早い段階で北利根川はガラガラで山下は思い通りにランガンすることができていた。8時30分に狙い通りにミズヒマワリで2本目をキャッチした。
初日は10時過ぎまでミスが続きノーフィッシュ。そこから13時までにキロフィッシュ連発で5キロを超えたらしい。この日はサイズが下がったものの8時台に2本キープしており順調な滑り出しだった。
しかしその後少し風が吹き始めたくらいから北利根川にボートが増えてきた。それを機に一旦は霞ヶ浦本湖へ移動。前日にビッグフィッシュをミスったスポットらしいがこの日は無反応。再び北利根川へ戻る。場所によっては水がクリアでバスが見えるシーンもあったが口を使わせることはできず。
沈みものを狙っていた11時に3本めのバイトがあるもミスってしまう。その後は反応無し。2本1,298gで2日めを終えた。
殆どの時間を北利根川で費やした山下艇から安江勇斗・梶原智寛・釘崎誠治・三谷聡のボートを見ることができた。初日シングルの半数が北利根川をメインにしていたようだが・・・・
Day2 上位陣が入れ代わり 黒田健史が4,072gでトップウエイト
2日めは35名が検量しリミットメイクは僅か2名。
単日トップは人気薄の北浦をチャターベイト系で攻めた黒田健史。4,072g 5匹をマーク。2位は市村修平 3,366g、3位 佐々一真 3,316g。4位 小林明人 2,838g。
北利根川で見かけた初日上位陣の殆どが2日めはスコアを落とした。さすがに狙い所が少ないうえに入れ代わり立ち代わりで狙われるため、2日間は保たなかった。そんな中、安江勇斗は3本 1,898で単日7位の成績を納め、なんとか持ちこたえた。
Day3 暫定8位の佐々一真に同船
記者は暫定8位ながら唯一二日間連続でリミットメイクした佐々一真(以降 佐々)に同船した。トップとの差は2,241g。去年9月の霞ヶ浦戦では小林知寛が3キロ差、9人抜きの実績があるため逆転優勝も不可能ではない。
佐々の予選2日間は霞ヶ浦本湖東岸のリップラップインサイドにある流木につくバスをノーシンカーワッキーで狙う釣りがメイン。水色や日差しの加減をみつつ合間合間でリップラップ際にノーシンカーワッキーリグをトゥイッチ+スイミングさせたりミズヒマワリなどのカバーを撃った。
もう一つは西浦の流入河川の壁沿いを回遊するバスをポッパーやノーシンカーで狙うパターン。この2つで予選両日リミットメイクを果たした。
10分ほどのドライブで東岸リップラップへ。エレキを下ろしリップラップの内側へ静かに侵入。その様子をツイッターに書き込むタイミングで1本めが宙を舞った。記者の視線はアイフォーンでありカメラのファインダーではなかったのが悔やまれる。佐々開始1分で1本めをキープ。
その後はひとつの倒木に時間をかけた。前日はその倒木一箇所で3本釣れたそう。そのバスの成る木は形状が複雑で軽い根掛かりが少なくない。7時45分、やや致命的な根掛かりをしボートを寄せて回収を試みる、その瞬間根掛かりがバスに変わって2本目ヒット! 瞬間的に抜き上げるためまたロッドが曲がっているシーンは撮れなかった。
初日の山下が狙っていた魚は「居れば一発で食う魚」だったが佐々が狙うこの木に着くバスは「居るけどすぐには食べない」感じだった。それだけ同じ木に何度もキャストしていた。
他の釣り方も試すが反応は無し。そして9時20分、やはり沈んだ木を執拗に攻めた後にロッドが曲がって3本めをキープ。順調な序盤戦だった。
9時30分に土浦方面へ大移動。流入河川を遡りつつ垂直護岸沿いを回遊するバスを狙う。小魚はたくさん目視でき生命感に溢れている。しかしこの日は快晴。そしてこの場所は完全に風裏で猛暑。さすがに予選のようにトップウォーターにでる雰囲気は薄い。同じ場所に加藤栄樹も上がってきたが、さすがにこのド快晴無風では反応が無い。
10時過ぎてから佐々は西浦エリアの夏っぽいスポットをランガンする。しかし三連休中日とあって行くとこ行くとこバッティングに遭ってしまい思い通りにまわれない。
最後に朝イチのリップラップに戻るも反応ないまま帰着に向かった。
Result ルーキー安江勇斗が超接戦を制する
決勝最終日、暫定上位陣の多くが1本のみで終わった。暫定トップ安江勇斗706g、2位 山下一也706g、3位 梶原智寛1,416g、4位今泉拓哉 1,160g、5位 SHINGO 1,422g。ウエイトにばらつきはあるが全員1本のみウエイイン。
全体でも30名22名がウエイインし14名が1本のみ。
相当数の選手が「あと1本」に泣いた。あと1本で優勝、あと1本でお立ち台、あと1本で賞金圏内。しかしそのたった1本が果てしなく遠い最終日だった。
優勝はトータルウエイト7,829gの安江勇斗。10年前に霞ヶ浦を極めるために愛知県から茨城県に移住。魚の全体的な生態を知るため霞ヶ浦の漁業に従事していたという異例の経験をもつバスプロ。2016年チャプターデビューし2021年からJBマスターズ参戦。マスターズ2年めに年間16位で今年からトップ50参戦。近年では珍しくなくなったもののデビューイヤーで優勝は素晴らしい。また地元では優勝できないというジンクスもあるがそれをも覆した。10年かけて日本最高峰の舞台で頂点に。優勝が決まった瞬間の雄叫びは過去に例がないほどだった。
2023年の安江勇斗にはルアーマガジン誌がずっと密着している。今大会も記者が3日間同船した。安江勇斗の詳しい戦いはルアーマガジンを御覧いただきたい。
総合2位は梶原智寛。外浪逆浦~常陸利根川エリアのシャローカバーや水門をスモラバ、野良ネズミで攻めた。予選を暫定3位で抜け最終日は1,416gを1本。トップとの差は僅か217g。あと1本・・・
総合3位は山下一也。同船レポート項のとおり北利根川をメインとしシャローカバーと沈みものを狙った。初日の5550gは見事。最終的にトップとの差は275g。梶原と同じくあと1本・・・・
4位はSHINGO。今回も若手がお立ち台を占拠する勢いだったが56歳が割り込んだ。ノーマークの恋瀬川までロングランし初日に2キロ近いキッカーをキャッチしたほか、2日めも1500フィッシュを釣るなどして4位入賞。
5位は去年夏の北浦戦で準優勝だった今泉拓哉。本湖東岸のドック周りやクイなどの縦ストをリーダーレスダウンショットで狙った。エビが多いエリアがキモだった。
2023年トップ50シリーズも5戦中3戦を終えた。年間ポイントランキングトップは佐々一真、2位志達海輝、3位梶原智寛、4位黒田健史。上位4名が10ポイント以内の差。
次回第4戦は9月8日から福島県 桧原湖にてケイテックCUPとして開催。5年ぶりの9月初旬の桧原湖戦となる。
写真・レポート NBCNEWS H.Togashi
*ルアーマガジンさんが密着取材してるため今回優勝者ロングインタビューはありません。