減水の霞ヶ浦をフットボールスイミングで攻略! 南一貴16年ぶり2度めのマスターズ優勝
7月29日~30日の2日間JBマスターズシリーズ第3戦がサンライン・アフコCUPとして茨城県霞ヶ浦で開催された。全国から96名が参加し連日35℃近い猛暑、そして約半数がノーフィッシュという過酷な戦いだった。優勝は南一貴。2日間北利根川の斜め護岸をフットボールジグのスイミングで攻めきって初日3本3270gで1位、2日め2本1624gで5位と安定したウエイトを持ち込み優勝した。
Day1 酷暑のなか南一貴が3,270gで初日トップ!
同会場でトップ50戦が開催されたのが2週間前。あれからも暑い日は続き今大会中もニュースでは盛んに「外出は控えましょう」と訴えていた。2週間まえから大きく変わったのは水位。かなり減水しているとのこと。故にシャローカバーに着くバスが減った、というか着けるカバーが激減したという。
昼前から南西の弱い風が吹いたが基本的には猛暑&快晴&無風~微風&水温30℃超えという人間にも魚にも厳しい(であろう)コンディションだった。
結果96名中54名がウエイイン。3本のバッグリミット(2022年よりマスターズ霞ヶ浦戦は3本リミット)を揃えたのは9名だった。
トップは南一貴。3本3270g。
2位は山下尚輝。先日のトップ50戦では兄の一也が総合2位だったが今回は弟の尚輝が3,118g 3匹で単日2位スタート。
3位豊嶋仁 2,268g 2匹、4位 大高哲也 2,188g 3匹。ここまでが2キロ台。1500gでシングルという結果。
バス持ち写真撮影のために持ち込まれたたくさんのバスをファインダー越しに見たが、南一貴の2本のバスは明らかに色艶・体格が良いピンシャキ健康体で、他の選手とは明らかに違う戦略なのが垣間見えた。
Day2 南一貴に同船。得意の釣りで2本キャッチ
朝から無風快晴で酷暑が予想される2日め。この日記者は初日トップの南一貴に同船した。
結果からいうと既報の通り南はこの日も2本キャッチし優勝した。場所は終日北利根川。エリア最下流と最上流の斜めチョコレート護岸で1本づつキャッチ。投げたルアーは99%がフットボールジグ(ジャッカル・ナカタジグ1/4oz+ゲーリー4インチグラブ)。残り1%はダウンショットをヘラ台に数キャストしたのと、フットボールジグの3/8ozを数回キャストしたのみ。
釣り方は岸際にジグをキャストし護岸の角度に沿うようにジグをフォール気味にスイミングさせる技。護岸の切れ目付近の崩れなどでバイトがあるそう。イメージ的に2mくらいで食ってくる。浅い方で食ってくるのは小型で深いほうがサイズは良い。バイトがあるのも朝イチに集中するとかでなく、昼頃でも問題ないという。
というわけでスタート地点から上流へ向かいプレーニングすることなくスロー走行でエリア最下流域からスタートした。
「地味な作業ですわ~」といいつつ淡々と同じ作業を繰り返す。ボトムは取らずに護岸角度に合わせて斜め下方向に泳がせるためかなりの慣れとテクニックが必要だ。気を抜くと即根掛かりをしてしまう。
「この釣りは一朝一夕ではできないんですよ」という。
2019年晩夏この水系で行われたトップ50戦の初日に南は全く同じパターンで初日トップウエイトを出している。
その成功体験を胸に淡々と高度なスイミングを行っている。
「前は3/8ozだったけど今は1/4ozでできるようになりました」
根掛かりは減るかもしれないが、より軽いウエイトで高度な斜め下方向スイミングをするのは本当にやり込んでいないとできないだろう。
マスターズ戦における北利根川のトーナメントエリアは僅か3.5キロメートルしかない(潮来大橋~51号北利根橋)。更に斜め護岸があるのはほぼ右岸のみ。この極狭なストレッチに他のマスターズ選手はもちろん近年流行りのキャットフィッシュ釣りのみなさんやコイのブッコミ釣り、マリンスポーツ愛好者などなど夏休みの日曜日とあってショアラインは大賑わい。
移動するにも思い通りにはいかず。合間合間を縫うような展開に。
まわりにマスターズ選手もたくさん浮いているが、ボートポジションやロッドワークから察するに南と同じ魚を狙っているものはほぼ居ない。南も「みんな横の釣りしてるんですよ。自分とは狙いが違う」と言っていた。横の釣り、すなわちシャローの張り出しなどを横方向にライトリグで狙う釣り。南はそれらより深い縦の釣りに近い横の釣り(斜め釣り?)をしてる。
小移動を繰り返しつつ朝イチのストレッチに戻った9時58分ロッドが曲がった。見ていて安心できるとても綺麗な落ち着いたファイトの末ネットに入ったのは「浅いところで食ってきたのでちょっと小さい」というバス。
過去の同船した経験や自分の釣りの経験からして濁り水の水系では10時までがひとつのチャンスと思っているがギリギリ10時2分前のヒットだった。
しかし「シャローの釣りはたしかに10時くらいまでですが、昨日も10時すぎとか昼頃に釣れたので、この釣りには関係ないんですよ」と南は言った。
「時間よりも風が欲しい」とも加えた。前日はお昼前に川と平行方向の風が吹いた。
この日も11時ごろ少し風が吹いてきたが川と直角に近い西風だった。川の水を動かす南よりの風が欲しい。南だけに。
前日キロフィッシュが2本釣れた本命ストレッチに向かうもドンピシャな位置に鯉ロッドがズラり。「バスもコイも良いところは一緒なんですかね~」と苦笑する南だった。
更に上流へ向かう。横利根の水門の周囲では魚っ気が特別に濃いという。魚種は不明ながら何者かが触れる感触が圧倒的に多いそう。ちなみにライブスコープはセットしていない。
お昼近くになると51号付近はマリンレジャーボートの往来がより一層激しくなるしマスターズ選手の往来もピークに達して釣り場というよりテーマパーク?レース場?にいるような喧騒に包まれる。そんな中でも淡々と集中力を切らさないのは凄い。
さすがに魔物だらけの北利根、根掛かりも頻発する。しかし顔色一つ変えず落ち着いてボートを寄せてロッドを突っ込み根掛かりを確実に回収していた。
根掛かり連発ではリズムが狂いイライラしがちだが、南は常に冷静だった。陸上では笑顔の素敵な優しいナイスミドルのイメージが強いが湖上でもとても紳士だった。今回同船して一番印象に残ったのはこの点だった。
そして!11時57分、根掛かりも多いが魚っ気も他を圧倒するそのストレッチで2本目をキャッチ! 体高のある健康体。
「よーし、これでだいぶ面白くなる!!あと1本!」
その5分後にもバイトがあって一瞬ロッドが曲がったがスッポ抜け。
12時半を過ぎ背後を帰着へ向かう第1フライト勢のボートが次々と通過し引波で揺れ水面は荒れる。
終盤には初日2位山下のボートが近くにくる場面も。
それでも落ち着いて最後の最後までキャストを続けたが3本目のバイトは無いまま帰着へ向かった。
南一貴2本1,624g 単日5位で16目年ぶり2度めの優勝
2日めは96名中43名が検量し6名がリミットメイク達成。猛暑の割に釣れている感じだが過半数が1本のみ。
南は2本で1,624g。他の初日上位陣が0~1本だったので初日1位、2日め5位の成績で南が優勝。得意とする釣りが完全にハマったことと、減水によってシャローカバー組みが釣れなかったのが効いた。なお南は2007年7月のJBマスターズイースタンリーグ第3戦 霞ヶ浦でも優勝しており16年ぶり2度めのマスターズ頂点に立った。
総合2位は佐野洸輝。本湖和田エリアの杭をレッグワームのダウンショットで、3位の船本尚宏もレッグワームのダウンショットで北利根・和田エリアの沈みもの狙い、4位の田畑二郎は麻生エリアの杭とブッシュをカットテールのダウンショット、ノーシンカーで、5位白鳥稔一も北利根川の水門、麻生の石積み+カバーをカットテール。1位から5位まで全員が本湖最下流~北利根川をエリアとしてゲーリーワームを使ってのお立ち台だった。
シャローカバーが有利だったトップ50戦とは違い、やや沖の縦ストや沈みモノが強かったようだ。
年間ポイントランキングは白鳥稔一が暫定トップ
マスターズは年間4戦行われる。過去2回は青木唯が連勝し年間ポイントランキングも満点で1位。しかし今回青木はノーフィッシュだったため24位まで下がった。そして第1戦5位、第2戦18位、今回5位の白鳥稔一が年間1位にランクアップ。6ポイント差で今回優勝の南一貴、14ポイント差で野村俊介が追う展開。最終戦は9月30日~10月1日に河口湖で開催される。