東レ・ソラロームCUP

JBトップ50第2戦東レ・ソラロームCUPストーリー

2025年 06/06 (金) ~06/08 () 山口県 小野湖

あの日の涙を力に変えて
佐々一真、小野湖で雪辱のV

2年前、小野湖で行われたJBトップ50では、青木唯と佐々一真による圧巻のハイスコアバトルが繰り広げられた。3日間トータル14キロを超えた異次元の戦いの末、僅差で涙をのんだ佐々一真。あの記憶が色濃く残るこのフィールドに、今年ふたたび戻ってきた。迎えた2025年シーズン第2戦東レ・ソラロームCUP。フィールドは一転してタフな様相を呈し、全体を通してリミットメイク率は15%前後に低迷。沈黙する湖の中で、選手たちは少ないチャンスに全神経を研ぎ澄ませる戦いを強いられた。佐々一真はかつての成功パターンに固執せず、すべてをリセットして新たな局面を切り拓いた。読みと集中力を研ぎ澄ませ、ついに頂点へ――。記憶と実力が交錯した、静かなるリベンジの物語が、いま幕を閉じた。

DAY1:山下一也 3,668gで単日トップ、他3キロ超えが2名

フィールドの規模や特徴については、2年前の大会ストーリーに詳しくまとめてあるので、ぜひそちらを参照してほしい → 2023年大会ストーリー

今回の大会前に話を聞くと、多くの選手が「とにかくタフ」「1本釣るのも大変」「20人がノーフィッシュでも驚かない」といった重たい見通しを口にした。誰もが簡単には釣れないと感じていたようだ。

厚東川上流へ向かうボート
厚東川上流へ向かうボート

会場は例年通り、小野湖の中央に位置するアクトビレッジ小野。朝のスタート直後、選手のボートは三方向に分かれてゆっくりと進んだ。ちょうどきれいに三等分されたかのように、厚東川上流、厚東川下流、大田川方面へ。

取材艇もエレキボートで出艇。本流下流を往復してみたが、多くの選手は岸際にボートを寄せていた。

厚東川下流域の様子
厚東川下流域の様子

そんな中、2~3艇ほどは、2年前の青木の優勝パターンと同じく、湖のど真ん中でFFSに集中していた。

お昼前からは大田川へ。ここもボートの分布は下流域と似ており岸沿いを流すボートが多く、数艇は湖中央部に浮いていた。

大田川広大なフラットに浮く佐々一真
大田川の広大なフラットに浮く佐々一真

ただし、大田川は全体的に水深が浅いため、湖中央部に浮いていても水深は5m程度。ベイトにつく空中戦FFSでなく、流木などの沈みモノをFFSで狙っているようだ。
厚東川上流へは時間の都合で足を運べなかったが、取材艇から見えた範囲だけでも「静かな緊張感」が強く伝わってきた。

15時、検量が始まった。
その成績は、戦前の予想通り、いや、それ以上に厳しい内容だった。

トップに立ったのは山下一也。持ち込んだのは2本ながら3,668gをマークし、いきなりの暫定首位に立った。

山下一也	3,668g
大田川の沈みモノを狙った山下一也 3,668g
会場前の橋脚で連発!野村俊介	3,370g	3匹
会場前の橋脚で連発!野村俊介 3,370g 3匹
厚東川下流のレイダウンでボトスト!松田守彦	3,000g	3匹
厚東川下流のレイダウンでボトスト!松田守彦 3,000g 3匹

3匹のリミットを揃えたのは全53名中わずか7名(13.2%)にとどまり、なんと19名がノーフィッシュ申告。バスの総匹数は62匹、いかにこの日の小野湖が厳しかったかを物語っている。

明日以降、どう状況が変化していくのか。
この重苦しい空気の中から、抜け出す者は現れるのか。

DAY2:吉川永遠 3,822gで暫定トップに

大会2日目の朝、天気予報は外れ、空から静かに雨が降り出した。午前中いっぱいは雨雲が断続的に通過し、選手たちは想定外の天候にレインウェアを急いで着込むこととなった。

夫婦岩の吉川永遠
夫婦岩の吉川永遠

取材艇はまず厚東川上流へ。茶色く濁った水色が、上流に進むにつれてクリアアップしていく特徴的な流れの中、10名ほどの選手がカバー撃ちやサイトフィッシングを展開していた。

大田川フラットの江尻悠真
大田川フラットの江尻悠真

大田川に移ると、前日と同じく岸寄りを攻める選手に加え、中央部でFFSを駆使する姿も多く見られた。後にこのエリアから2日めのハイウエイトの多くが輩出されていることがわかった。

午後には雨が止み、湖面には薄日が差し込んだ。そして15時、検量が始まった。

この日、最も重いウェイトを持ち込んだのは吉川永遠。3本で3,822gという圧巻の釣果をマークし、50ポイントを獲得。2位は江尻悠真、3本で3,000g。
そして3位には、芳賀龍平が2,904g(3本)で続いた。

 吉川永遠	3,822g	3匹
吉川永遠 3,822g 3匹
江尻悠真	3,000g	3匹
大田川フラット組 江尻悠真 3,000g 3匹
芳賀龍平	2,904g	3匹
大田川フラット組 芳賀龍平 2,904g 3匹

リミットメイク達成者は10名(18.9%)と、前日の7名(13.2%)から微増。
総匹数も71匹とやや回復し、バス総重量は53,152g、平均重量は748gとなった。

ただし、依然として厳しい状況には変わりなく、14名がノーフィッシュに終わる結果に。釣れる選手と釣れない選手の差が大きく、予選通過ボーダーをめぐって明暗が分かれた。

検量された魚体からは、まだ産卵を終えていない個体や、尾びれに損傷を負った個体も見られ、小野湖はスポーニング終盤の不安定な状態が続いているようだ。

決勝に駒を進めた30名

2日間にわたる予選が終了し、30名の決勝進出者が出そろった。

首位通過は吉川永遠。DAY1では1匹1,698gという価値ある1本を持ち込み、42ポイント。DAY2はリミットメイクで3,822g、50ポイントを重ね、合計92ポイントで首位に立った。総重量も5,520gに達し、内容・安定感ともに抜群だった。

2位は江尻悠真。DAY1は1,532g(35p)、DAY2は3,000g(49p)で合計84ポイント。リミットを揃えた安定した展開で決勝進出を決めた。

3位の佐々一真は、DAY1で2,732g(47p)をマークし、2日目は1,498g(35p)とやや苦戦したが、計82ポイントで上位を維持した。

4位には松崎真生(1,514g→2,640g/合計4,154g)、5位には宮嶋駿介(1,486g→1,964g/計3,450g)が入り、いずれも両日で確実に釣果を重ねて上位に食い込んでいる。

予選では、2日間のポイント合計で上位30名が決勝進出となる。

最終的な通過ライン=30位のポイントは48ポイント。
これを達成したのは、DAY1で3,000g(48p)を持ち込んだ松田守彦。DAY2はまさかのノーフィッシュだったが、初日のビッグスコアだけで16位通過を果たしている。

なお、30位と31位の差は、たった1ポイント。つまり、1匹釣れるかどうかで、明暗が分かれるギリギリの戦いとなった。

目安として、30位以内に入るには――

2日間で4匹前後のバスを釣ること(多くの通過者が3〜6匹)

総重量でおおよそ3,000g以上をクリアしておく必要があった。

DAY3:優勝候補、無念の失格──静寂の湖に響いた13時の衝撃

大会最終日の朝には、開催地・山口県宇部市の篠﨑圭二市長が現地を訪問され、スタート前のミーティングにて選手たちに向けて心温まる歓迎のご挨拶をくださった。自治体の首長が自ら大会の現場を訪れ、選手や関係者を迎え入れる姿勢は、地域とバストーナメントとの強い結びつきを象徴するものである。市長の丁寧なお言葉に、選手たちはあらためてこの地で迎え入れられていることへの感謝と誇りを胸に、静かに出船していった。

取材艇はまず厚東川を遡り、暫定1位の吉川永遠に密着。

夫婦岩の吉川永遠
夫婦岩の吉川永遠

吉川は「夫婦岩」と呼ばれる名所周辺に浮かび、静かにロッドを握っていた。到着前に1500g級を1本キャッチしていたというが、取材中に追加のキャッチはなかった。だが、その画面・湖面を見つめる集中力と、無駄のない動きからは、勝利を狙う強い気持ちがひしひしと伝わってきた。

取材艇は厚東川を下り、大田川へと向かった。会場前インターセクション部では、この3日間、夏鳥キビタキの美しい囀りが静かな湖に響き渡っていた。そのソングポストのすぐ下――水深7メートルに横たわるレイダウンには、佐々一真のボートが長時間にわたり張り付いていた。周囲の時間が止まったかのような静けさの中、彼はただ一心にソナー画面を見つめ、勝利への一手を探し続けていた。

島周りの山下一也
島周りの山下一也

広く広がる大田川のフラットエリアには、暫定上位陣の姿が複数確認できたが、いずれも表情は重かった。釣果の様子を尋ねたいところではあったが、その場の空気は張りつめており、声をかけることすらためらわれるような空気が漂っていた。

そして迎えた13時。帰着締切に合わせて各艇が戻り始める中、会場が大きくどよめいた。なんと、暫定トップを走っていた吉川永遠が帰着遅れで失格となる事態が発生。しかも、ライブウエルには3kg近いウエイトがキープされていたという。このドラマティックな展開に、会場には言葉を失う関係者も多く、波紋のような空気が広がっていった。

まるでその空気をなぞるように、午後からは冷たい雨が降り始めた。静かな幕引きのように降る雨の中、DAY3の戦いは終わりを迎えた。

RESULT 戦略は五者五様──バラバラの釣りが最後に交錯した決勝戦

お立ち台
お立ち台

優勝は佐々一真。2年前、小野湖で青木唯と歴史に残る接戦を繰り広げた佐々は、その時2位に終わった悔しさを胸に、今回の大会に挑んでいた。当初は前回と同様に大田川の沈みモノで勝負するつもりだったが、初日からそのエリアが沈黙。過去の成功体験に固執せず、即座に方向転換したのが勝因の一つだ。選んだのは会場前のインターセクション部にある水深7メートルのレイダウン。

ここに浮くバスをFFSで精密に探し、魚のレンジや位置に応じて複数のルアーとアプローチを組み合わせていった。ラインはPE1.2号+14lbリーダー、タックルはパワー系。

佐々一真選手提供の動画

レイダウンの奥にいる魚にも主導権を渡さず引きずり出すセッティングで、躊躇なく狙った。最終日はまさにこのパターンが炸裂。集中力を切らさず粘り続け、3,202g(2匹)という大会最大級のビッグウェイトを持ち込み、逆転で栄冠を掴んだ。

佐々にとってはトップ50通算2勝目。そして今回は、故郷・九州に近い山口県での開催ということもあり、最終日には地元から駆けつけた仲間やご両親の姿も会場にあった。2年前にあと一歩届かなかったこの小野湖の地で、応援してくれた大切な人々の目の前でリベンジを果たした優勝は、格別な意味を持つものとなった。

2位には宮嶋駿介がつけた。注目すべきは、3日間すべてで釣果を積み上げ、特に最終日に3,112gを記録した爆発力だ。戦略はクラシックスタイルに徹し、FFSに頼らず勝負した。

2日目に大田川のインレットにあるごく浅いドシャローで、長年の霞ヶ浦水系での経験から導き出したタイミングで自身がプロデュースしたトップウォータープラグ「クランポ」を投入し、見事に1,964gのビッグフィッシュをキャッチ。この日の魚を支えに最終日も同エリアへ入り、シャッドテールノーシンカーを表層引きで使い、1400gクラスを追加。極めつけは沈みモノに対するヘビーダウンショット。素早いリフト&フォールのリアクション技で神がかり的にバスを連発させた。予選を冷静に乗り切りながら、決勝で一気に伸びる「爆発力」は、今シーズンのトップ50で最もインパクトのあるパフォーマンスのひとつだった。

3位は吉川永遠。2日目までの暫定首位であり、優勝に最も近い位置にいた男だ。フィールド全体が厳しい中で、吉川は厚東川の名所「夫婦岩」周辺の岩ボトムに広がるフラットエリアと、大田川の橋脚周辺をメインに組み立てた。

戦術はシャローでのFFSを駆使したハイテクスタイル。
厚東川のクリアウォーターでは、水中を実際に泳ぐバスを目視できるため、そのサイズ感や動きと、FFS(フォワードフェイシングソナー)の画面に映る魚影との対応関係を掴むことができた。この経験が、バスの姿が見えない濁った大田川で活きた。画面にはバス以外の魚も多数映るが、厚東川で得た“この映り方はバスだ”という感覚を頼りに、画面の情報だけでターゲットを選別。迷いなくルアーを入れる判断力と選球眼の高さが、安定した成績に結びついた。同じ個体に対しては決して同じルアーを繰り返さず、ミスキャストも少なく、極めて丁寧な釣りが印象的だった。だが最終日、アクシデントが発生。成績には「0g」が刻まれたが、最終的には初日・2日目の貯金で3位に踏みとどまった。

4位は野村俊介。予選初日に3,370gを叩き出し、一気に注目を集めた。

彼が選んだのは、プリプラクティスで唯一手応えがあったという会場前の橋脚。バスの回遊ルートとフィーディングスポットが重なるこのポイントに、何度も入り直す戦略を採った。釣り方は、FFSに頼らない伝統的なダウンショットの釣り。2.5gのシンカーとワームを使い、岸に向かって丁寧に投げ続けた。昼過ぎに橋脚へ入り直したタイミングで1600gと800gのラッシュがかかり、それまでキープしていた2本から入れ替えることに成功。クラシックな釣りに徹した精神力と、タイミングを見極める判断力が光った。2日目以降はやや失速したものの、全日程で安定して魚を持ち込んだ。

5位に入ったのは山下一也。

初日は午前中いっぱい厚東川下流のディープシューティングに徹したが、思うようにバイトが得られず、13時に思い切って大田川へ大移動を決行。この判断が功を奏し、3.5mラインにある沈みモノで3匹のバスと遭遇。ホバストとダウンショットを状況に応じて使い分け、短時間で2匹を仕留め、3,668gというビッグウェイトを叩き出した。2日目は同じ大田川の沈みモノを攻める展開に。大規模の沈みモノに魚がついていたが、同じエリアに入る選手も多く、プレッシャーは高かった。そこで山下は、小さめのワームをリアクション気味に操作し、スレた魚を引き出す戦略にシフト。最終日も粘り強く攻め続け、5,000gを超えるトータルウェイトで堂々の5位入賞を果たした。

2年前の悔しさを胸に挑み、記憶の地・小野湖でついに頂点を掴んだ佐々一真。その姿は、積み重ねた努力と信念が実を結ぶ瞬間を物語っていた。リベンジを果たした男の眼差しは、すでに次の戦場を見据えている。そして現在、全5戦中2戦を終えた時点で、年間ポイントランキングの暫定首位に立つのも佐々一真。悲願の年間タイトルに向けて、これ以上ないスタートを切った形だ。

次戦、JBトップ50第3戦 エバーグリーンCUPは、7月18日(金)〜20日(日)、福岡県・遠賀川で開催される。真夏の舞台で、さらなる激闘が幕を開ける。

レポート作成:ChatGPT
写真・構成:NBCNEWS H.Togashi

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