FFSにスレた夏バスを攻略
河口湖20勝超の覇者・林直樹、ブラインド戦術で王座奪還
真夏の河口湖で行われたJBマスターズ第3戦シマノCUPは、フォワードフェイシングソナー(FFS)が主流となった時代において、ブラインドの回遊待ち戦術で2日間を通して安定して高ポイントを積み重ねた林直樹が頂点に立った。初日は2位、2日めは1位と着実に加点し、計199ポイントで総合優勝。FFS全盛期にあって、魚探をあえてルアーに当てないという徹底したアプローチで真夏の難しい河口湖を攻略した姿は、多くの選手や関係者に衝撃を与えた。大会後、FFSの第一線で戦う選手が自身のSNSで「FFSの終焉がよぎる」と語ったように、この勝利はバストーナメントの戦術史に残る一戦となるかもしれない。
Day1 幾志健一郎 4,975gで初日トップ!
初日は曇り空の下、気温は16〜26℃。平地の猛暑が嘘のような涼しさだったが、朝は無風で湿度が高く、じっとしていても汗が滲む蒸し暑さ。やがて弱い風が湖面を撫で、体感気温が下がっていった。水位は異常な低さでニュースにも取り上げられるほど。西湖からの放水は止まり、全体的に水の流れは乏しい。
沖のFFS組
KHB放流組
ボートは1週間前に放流が行われたKBH周辺に集中し、例年人気の鵜の島周辺は意外にも閑散。その代わりに「奥の三連ワンド」や「長浜沖」が賑わった。
トップ幾志健一郎 4,975g 3匹 Photo by カメラッツ
沖のネイティブを狙うFFS組が上位を形成する中、不人気エリアの橋内を選んだ幾志健一郎が4,975gを持ち込み初日トップ。2位は鵜の島東「溝」で回遊待ちに徹した林直樹(4,605g)。3位は大橋〜鵜の島間を風やタイミングを読みながらランガンした北原麻七都(4,136g)、4位は酸欠ワカサギパターンでハワイや長浜沖を攻めた冨沢真樹(4,104g)、5位は坂野純平(3,280g)が続いた。
この日の全体釣果は、検量人数85人、リミットメイク43人(50.6%)、1匹平均重量は565g。傾向としては、沖のネイティブ狙いをした選手は3〜4kgのウエイトを持ち込み、上位の大半を占めた。一方で、KBHなど放流魚を狙った選手はよくて2kgちょっとにとどまり、戦略の差が明確に結果へ反映された。
Day2 ベテラン林直樹が脅威の5,715g!
本降り予報はハズレた
2日めは終日雨予報に加え雷注意報も発令され、運営も安全確保に緊張感を強めた。しかし予報は外れ、雨はほとんど降らず雷も鳴らないまま推移。気温は20〜27℃、午前10時過ぎからは強めの風が吹いた。
KBH放流狙い
奥の三連ワンドが珍しく人気
この日はクルマで一周してみたが、取材の目に映ったのは、初日と大きく変わらないボート分布だった。
貸し切りポイントに浮く林直樹
帰着が始まって、真っ先にやってきたのは初日2位の林直樹。「昨日より釣れた」とにこやかに語っていた。
林直樹の3本
全体釣果は、検量人数83人、リミットメイク43人(51.8%)。ローライトと風が魚の活性を上げたのか、FFSネイティブ狙い組は初日よりも好釣果が目立った。
1位 林直樹(初日4,605g/2日め5,715g/計199p)
河口湖の夏を知り尽くした──その言葉にもっともふさわしいのが林直樹だ。河口湖だけで20回以上の優勝実績を誇る“夏の覇者”。特に夏以降の大会では圧倒的な強さを見せ、2010年代にはローカルJB年間優勝(AOY)も複数獲得。フォワードフェイシングソナー(FFS)以前の時代から、回遊待ちや季節特有のパターンを駆使して結果を残してきた。そんな林が、FFS全盛の今、再び夏の河口湖で頂点に返り咲いた。
今回のメインエリアは鵜の島東に位置する、通称「溝」。プリプラクティスで3本7kg超という驚異的な釣果を叩き出したこの場所は、ビッグバスが回遊してくるルート上にあるが、魚影は濃くても回遊タイミングは非常に限られる。
林はライブ魚探を当然所持しているが、今回はあえてルアーには音波を当てず、ざっくりな魚の位置確認にとどめた。
使ったリグは、ポークルアーの下端にシンカーを埋め込み、リーダーを通すという独自の変形ダウンショット。
ラインがポークの中を通ってる
これによりネコリグのようなアクションを出しつつ、シンカー飛びを防止。ボトムに置いて脂分多めのポークルアーの頭部だけを微細に揺らし、FFSによる横方向の動きにスレたビッグバスの警戒心を解いた。
初日は2時間に1本のペース、2日めは1時間に1本というペースで3本を揃え、2日間とも高ポイントを獲得。「この場所は長年通ってきた経験がなければ、信じ切って粘れない」と林は語る。FFS全盛の中で、あえて“待つ”釣りで夏の河口湖を攻略した一戦は、多くの選手に戦術的インパクトを与えた。
2位 冨沢真樹(4,104g/4,640g/計197p)
この大会を「ここ5年で最も難しい」と評した冨沢。その理由は、参加者の多くがFFSを使いこなし、バスがいる場所は共有されてしまい、どこも極限までプレッシャーがかかっていたからだという。
それでも安定して上位を確保できたのは、酸欠ワカサギパターンを軸にした戦略。湧き水と当歳ワカサギが溜まる場所を事前に調査し、初日はハワイで2本、長浜沖で1本。2日めはハワイで1本、馬場川沖で2本というペースで釣果を積み上げた。
長浜沖の冨沢
メインはOSPで開発中の非公開表層ルアー。これで見切られたときは、0.6gジグヘッドにポークワームをセットして水面直下を漂わせ口を使わせる。狙いは群れではなく、単発で泳ぐ回遊魚。風や日差しの加減、時間帯ごとの活性変化を読み切ったランガン能力が、2日間連続の4kg台を可能にした。
3位 北原麻七都(4,136g/4,460g/計196p)
大橋〜鵜の島間の沖をメインに、風や光量を見ながら細かくランガン。ルアーは5gダウンショット、3/4ozスピナーベイト、メタルワサビー12gなど比較的重めのルアーでスピードによるリアクション狙い。特にダウンショットではフリーフォールで魚を追わせ、やる気が見えた瞬間にボトム近くでカーブフォールを入れ、いわゆる「逃がし」で食わせるという高度なアプローチを展開した。また、ジョーダン50による表層ゲームも状況に応じて投入。2日間通してバイトチャンスを逃さない柔軟な釣りが功を奏した。
4位 中田敬太郎(3,168g/4,765g/計194p)
取材艇の前で2ozスピーナーベイトでキャッチ
久保井ワンド・二町ワンド・鵜の島西といった人気ポイントを主戦場とし、2日間とも明確な「地合い」に勝負をかけた。朝7時半〜8時半、そして10〜11時にスクールの活性が高まるタイミングを把握し、それ以外の時間は無駄撃ちを避けてプレッシャーを与えないという徹底ぶり。
状況に応じて表層~中層~ボトムを色々なルアーで狙い2日めはすべての地合いで計6本の魚をキャッチしポイントを伸ばした。
5位 原田匠(3,108g/4,094g/計192p)
白須と大石の沖で、単発の回遊魚を狙う戦略。FFSで広範囲をサーチしながらも、人が少ないスポットを選び、プレッシャーの低い魚にアプローチした。
使用ルアーはフットボールジグによるボトム攻めと、ジョーダン50・トラファルガー5といった表層プラグ。2日間とも4kg前後の好ウエイトをマークした。
総括
今大会は、FFSを駆使する選手が大半を占める中で、ベテラン林直樹が「魚の動きを読み切る力」と「戦略の一貫性」で2日間にわたり高ポイントを積み重ねたことが最大のトピックとなった。FFS第一線で戦う選手が「FFSの終焉がよぎる」と語ったように、夏の河口湖でブラインド戦術が総合優勝を果たした事実は重い。次戦の舞台は野尻湖。選手たちは再びFFSとどう向き合い、どのような戦術で挑むのか──注目の一戦が待っている。
レポート作成:ChatGPT5
写真・構成:NBCNEWS H.Togashi