早春の七色を読み切った者たち。吉川永遠、七色ダム戦連覇で2026年シーズン開幕戦を制す
いよいよ2026年のJBトップ50シリーズが開幕した。舞台は奈良県・七色ダム。今季の開幕戦には7名の新人を含む51名の精鋭が集結し、冬から春へ移ろう難解な早春のフィールドに挑んだ。
七色ダム戦は過去にも3月末から4月初旬の開催例はあったが、3月中旬というこのタイミングでの開催は初。プリプラクティスが可能だった2月下旬は完全な冬、水中はそこから本番までにどう春へ向かうのか。その見極めこそが大会最大のテーマだった。
3日間現地で見えたのは、日ごとに変化するフィールドの表情と、それに合わせて戦略を修正していくトッププロたちの凄みだった。そして最終的にその流れを最も高いレベルで読み切ったのが、前回のトップ50七色ダム戦覇者でもある吉川永遠だった。
早春の七色ダム。その難しさと面白さ
七色ダムは、全国でも屈指のポテンシャルを秘めたリザーバーだ。サイズの夢があり、数も期待できる。一方で、季節の変わり目にはその表情が大きく変わる。特に今回は、プリプラクティスが行えた2月下旬が完全に冬。本番は3月中旬。わずか数週間の間に、バスのポジションも、食うベイトも、口を使うタイミングも変わっていく可能性があった。
3月中旬は過去のプリプラクティス期間でもあるためベテラン勢の中には、この時期の七色ダムを経験として知っている選手も多い。しかし、経験があるからといって簡単に解けるほど甘い状況でもなかった。逆に新人選手にとっては、早春特有の進行の読みづらさに真正面から向き合わなければならない、非常に難しい開幕戦だったと言える。
3日間、現場で見続けて強く感じたのは、七色ダムというフィールドが持つ懐の深さだった。朝の一発が勝敗を分けるように見えて、午後の気温上昇で一気に流れが変わる。前日に爆発した場所が、翌日には静まり返る。だがその一方で、どこか別の場所では新たな群れが差し、新たな正解が生まれる。選手たちはそのわずかな変化を追いかけながら、開幕戦の重圧と戦っていた。
Day1 西の川が火を吹いた、開幕初日
初日の朝はとにかく寒かった。気温は氷点下1度前後。選手のボートデッキは霜で真っ白になっており、見た目にも真冬の朝そのものだった。だが天候は快晴、風はほとんどなく、昼頃には気温は11度まで上昇。後に選手たちに聞くと、水温はおよそ8~11℃。空気は冷たいままでも、水の中では確かに春への気配が動き始めていた。
フライトが始まると、ほとんどの選手が下流方向へとボートを走らせた。上流へ向かったのはわずか数名。まずは下流域を中心に、多くの選手が勝負の第一手を打った形だ。
スタートを見送った後、取材艇を出した。例年通りこの日もっとも人気を集めたのは西の川。今年は特に上流側に選手が集まっていた。取材艇が西の川に入ったのは9時過ぎだったが、後に聞いたところでは朝イチの上流側が大きく機能し、この日の上位陣を多数輩出したという。
西の川に浮く河野正彦
現場でヒットシーンを見ることはできなかったが、初日上位に名を連ねる選手達のボートを確認することができた。七色ダム戦において西の川が毎年キーエリアになるのは周知の通りだが、同時にプレッシャーに弱く、好調が2日以上続きにくい場所でもある。例年の傾向通りなら、ここでの爆発は初日限りになってもおかしくない。そんな気配を、すでにこの時点で感じていた。
その後、取材艇で中~下流域を回ると、要所要所に選手のボートが浮いていた。一昨年の覇者・吉川永遠もこのエリアで、いつも通りハイペースなランガンを展開していた。10時を過ぎると選手のボートの往来がさらに増え始める。これも七色ダム戦ではよく見る展開だ。答えを探しながら、選手たちがエリアを見切り、組み直し、次の一手へ移っていく。
下流域の吉川永遠
昼前になると、上がってきた気温とともに魚が動き出したのか、選手がバスを持っている場面に何度か遭遇した。ヒットの瞬間こそ見られなかったが、釣った直後の計量シーンには3回ほど立ち会うことができた。七色ダムはポテンシャルの高いフィールドではあるが、取材艇から実際に釣果の瞬間やその余韻に何度も遭遇できるのはかなり珍しい。そう考えると、初日はかなり釣れたのでないか、そんな印象を抱きながら取材艇を返却した。
そして結果は、その感触を裏付けるものだった。3月半ばという決して簡単ではないタイミングにもかかわらず、41名がウェイイン。約半数の選手がリミットメイクを果たした。昨年のようなナナマル・5kgフィッシュ級のスーパービッグこそ出なかったが、上位4名は4kgオーバー。七色ダムの地力と、トップ50選手たちの対応力の高さに改めて驚かされた。
トップ 河野正彦 4,905g
2位 藤田夏輝 4,485g
3位 加藤栄樹 4,440g
この日の上位陣を振り返ると、朝イチの西の川で流れをつかんだ選手、あるいは午後の気温・水温上昇を味方にしてキッカーを加えた選手がスコアを伸ばしていた。初日は、まさに早春の七色らしい高水準の幕開けだった。
Day2 北山川で炸裂した山岡計文の6130g、予選を揺らした2日目
2日目も天候傾向は初日とほぼ同じだった。朝は氷点下1度前後、昼は11℃前後まで上昇。快晴、風はほぼ無風から微風。見た目には穏やかなコンディションが続いていたが、実際の中身はすでに前日と同じではなかった。
1番フライトで上流へ向かう山岡
スタート時、この日も上流へ向かったボートはほとんどなかった。多くの選手がやはり下流へ走る。初日の結果を踏まえれば自然な流れだろう。朝イチは取材艇ではなく、クルマで地上からの撮影を試みた。七色ダム戦は陸上から観戦できるポイントが限られるが、例年、小口橋から望む西の川インターセクションは非常に撮れ高が高い。だが、今年は橋周辺で工事が続いており、その騒音の影響なのか、例年ならボートが浮くはずのエリアにほとんど姿がない。森の隙間から下流側を見ても、今回は一艇も確認できなかった。
例年撮れ高最高の小口橋、今回は収穫ほぼ無し
その後、10時から13時まで取材艇を出した。取材時間帯が初日とは違うこともあり、湖上のボート分布はやや異なって見えた。人気の西の川はこの時間帯にはボートが疎らだった。ただし後に選手たちから聞くと、朝イチは20艇近くがひしめき合う大船団になっていたという。初日に上位陣を多数出しただけに、当然の集中だった。しかし、その大船団の中で実際に魚をキャッチできた選手は多くなかった。
その一方で、この西の川の大船団を尻目に大きなドラマを起こしていた選手がいた。超地元、山岡計文である。
北山川上流を貸し切り状態の山岡(朝8時に陸上から撮影)
山岡は朝から北山川上流をほぼ独占状態で釣っていた。七色ダムの全てを知り尽くしていると言っても過言ではない山岡は、この時期に大型バスがそのエリアを通過するタイミングがあることを長年の経験から把握していた。今大会は、まさにそのタイミングに当たった。朝から3kgフィッシュを含む3本を揃え、2日目単日6130gという圧巻のスコアを叩き出す。
しかもその釣りは、単なる地元勘では終わらない。山岡は魚がボトムでヤゴやカニのようなものを食っていることまでつかんでいた。使ったのはイマカツ・リグラーのオフセットフック仕様ネイルリグ。これをボトムで這わせ、スーパーキッカーに口を使わせた。さらにルアーを確実にボトムトレースさせるため、ラインシステムにはシンキングPEと3mの長いフロロカーボンリーダーを採用。大型が通るタイミング、食っているもの、そしてルアーを通すレンジと角度。そのすべてを噛み合わせた一撃だった。
この日も、午後になるにつれて気温と水温が上がり、魚は動いた。だが2日目は初日の再現ではなかった。初日に西の川でスコアを出した選手の多くは伸び悩み、逆にその変化にいち早く気づいた選手たちが順位を上げてきた。フィールドは確かに前へ進んでいる。だが、その進み方は誰にでも見えるわけではない。2日目は、そうした変化を読む力がより強く問われた一日だった。
2日目トップ 山岡計文 6,130g
2位 黒田健史 4,295g
吉川永遠 4,270g
予選結果 30位争いが示した、今大会の難しさと高レベル
2日間の予選が終了し、決勝へ進む30名が出そろった。今回の七色ダム戦は、釣れている。だが、決して簡単ではない。まさにその両面を数字が物語っていた。
予選通過ラインとなる30位に必要だったのは、2日間合計でおよそ2500g前後。単純計算すれば、1日あたり1200gから1300g程度を連日持ち帰らなければならない計算になる。七色ダムは3kgフィッシュも十分現実的に出るフィールドだが、だからこそ一発狙いだけでは足りない。2日間を通して外さない安定感も必要だった。冬から春へ移る端境期という難しい条件の中で、なおかつこの通過ラインが求められたこと自体、選手層の厚さと大会レベルの高さを物語っている。
一方、予選上位の争いはさらに熱かった。重量順の暫定首位には吉川永遠と山岡計文が並び、その差はわずか174g。両者とも奈良県の選手であり、七色ダム戦での優勝経験を持つ。まさにホームの水を知り尽くした者同士が、僅差で決勝日を迎える展開となった。
そして七色ダムというフィールドでは、3kgフィッシュが現実的に狙える。つまり2kg差程度なら一発で十分ひっくり返る。上位陣の顔ぶれを見渡しても、誰が勝ってもおかしくない。開幕戦らしい緊張感と、七色ダムらしい爆発力。その両方を抱えたまま、最終日の戦いは始まることになった。
決勝 曇天、強風、冬のような最終日。それでも勝った吉川永遠
曇天・強風で真冬に逆戻りの最終日
決勝日の朝、空気は再び大きく変わった。終日曇天。最低気温は7℃と3日間でもっとも高かったが、最高気温はわずか8℃。さらに強い風が吹き続け、体感温度はむしろ3日間で最も低く感じられた。水温も上がらず、湖の表情は再び冬の様相に引き戻されたようだった。
決勝に進んだ30名がスタートすると、この日は昨日までガラガラだった上流域へ10艇ほどが進んでいった。2日目の山岡の爆発を意識した動きだったのかもしれない。そこで朝イチは、取材艇で山岡を追うことにした。前日、朝の短時間で2本を獲ったという情報もあり、その再現があるのかに注目していた。
山岡が狙っていたのは川の中央部のボトムだった。同じエリアには暫定3位の梶原智寛も浮いていたが、遠目からでも釣りの方向性はまるで違っていた。山岡が川中央のボトムを見ているのに対し、梶原はどシャローのカバーを撃っている。しかもその梶原が、早い時間に1本をキャッチするシーンに遭遇した。
対岸の梶原智寛にヒット
周囲ではボイルも何度か起き、朝の上流域は生命感に満ちていた。
しかし、山岡は違った。1時間半ほど見守ったが、釣れている気配はなかった。同船している記者とずっと会話を続け、リラックスした雰囲気を崩さない。余談だが、同船記者に一切の物音を許さない選手もいれば、普段ガイドをしているからか会話が途切れない方がリズムに乗れる選手もいる。山岡は後者なのかもしれない。
同船記者と話を続けるリラックスモード
取材艇はその後、中~下流域へ移動し吉川永遠を追った。下流域のガレ場で、特徴的な緑色のボートを発見する。吉川はバンク沿いを丁寧に、手を変え品を変えながらアプローチしていた。同船しているルアマガ記者にジェスチャーで状況を確認すると、すでに2本キープしているという。決勝のプレッシャーの中でも、吉川のリズムは途切れていなかった。
下流域の吉川。9時の時点で2本キープ
昼前、再び山岡の様子を陸上から眺めた。相変わらず同船記者と楽しそうに会話している。優勝がかかった最終日とは思えないほどの軽さ。その空気からは、むしろ“釣れている人”の余裕すら感じられた。だが、実際は違った。山岡は結局この日ノーフィッシュ。
最終日トップの完勝! 吉川永遠 5,190g
そして結果は、暫定トップだった吉川永遠が最終日も単独トップ。快勝、そして圧勝だった。最も寒く、競技時間も予選より2時間短い決勝日。それでも半数の選手がリミットメイクを果たした七色ダムは、やはり素晴らしいフィールドだ。そしてその中で最も深く、最も柔軟に湖を読み切ったのが吉川永遠だった。
最終日、会場には吉川永遠のご家族や仲間たちも応援に駆けつけていた。多くの人が見守る地元同然のフィールドで、強い想いを背負って戦い、その期待に応えるように勝ち切る。前回のトップ50七色ダム戦に続く2連勝。開幕戦でそれをやってのけた意味は大きい。
Result 上位5名が語った、七色ダム攻略の核心
1位 吉川永遠
吉川永遠のコメントは、今回の上位選手の中でも群を抜いて情報量が多く、そして価値が高かった。なぜなら彼は単に「どこで何を投げたか」を語っているのではなく、「湖の中で季節がどう進み、サイズごとの魚がどう動くのか」という、トッププロならではの視点そのものを明かしているからだ。
吉川はまず、バスを一括りに見ていない。湖全体にいる魚を、大型から小型までピラミッド状の集団として捉え、その中のどのボリュームゾーンを狙うべきかを考えていたという。特大の魚、小型の魚、その中間のキロ前後から2kgクラスの魚。それぞれが同じスピードで春へ進むわけではない。だからこそ“今、どのサイズの魚がどの季節段階にいるのか”を読む必要がある。吉川のトーナメントは、まさにその発想から組み立てられていた。
2月末のプリプラは、大潮一発目、いわば春の扉が開くタイミングだった。吉川はこの時点で、特大級はすでに動き始めていると見ていた。だが、自分がメインターゲットにしたかったのは、その超ビッグではない。狙っていたのは、キロ前後から2kgまでの魚たち。トーナメントを組み立てるうえで、最も数と質のバランスが取れるレンジを担う魚群だ。
プリプラでその魚たちがいたのは、10~12m前後。ガレ場のブッシュ、岩盤の立木の根元、スタンプのような場所。完全な冬のポジションから、ほんの少しだけ春を意識し始めた魚たちの居場所だった。そしてそこから本番までにもう一発大潮が入る。吉川は、その魚が確実に一段上がると読んだ。おそらく5~8mレンジまで差してくる。実際、直前プラではその読み通りに魚が上がってきていたという。
さらに彼は、小バスのスクールが一気に増えたことも見逃していなかった。小型の群れが増えるのは、湖全体が明確に春へ向かっている証拠でもある。三寒四温が始まり、完全に季節は前に進んでいる。そうなると重要なのは、今そこにいる魚を狙うことよりも、“その魚たちが差してくる場所”を押さえることになる。吉川は、魚そのものを追い回すというより、魚の移動の中継地点、上がってくるライン上のスポットを丹念に回る戦略を取っていた。
この視点が実に興味深い。岩盤にいた魚が、次はガレ場へ移る。そこからさらに岩盤やシャローへ進む。縦ではなく横に移動していく感覚も含めて、魚の進行を一つの“流れ”として捉えている。しかもそれは、この魚は何メートルにいる、という単純な話ではなく、湖の地形変化と季節進行を組み合わせた読みだ。七色ダムを知っているからこそできる話であり、同時に全国どこのフィールドにも応用できるトップクラスの考え方でもある。
ルアーについても、吉川は非常に柔軟だった。前回の七色戦で優勝をもたらしたコイケは、今回も候補にはあった。しかしコイケはルアーパワーが強く、魚が一度見てしまうと覚えやすい。しかも今や多くの選手が使う。前回同様“同じ魚に2回投げない”という意識を持ちながらも、今回は魚がすでに学習していると判断し、コイケでは結局1本も釣っていないという。
3インチクラスのミドストも試したが、これも食い切らない。魚は追うが、寸止めになる。中層で見せて食わせる、という従来の組み立てだけでははまらなかった。ここで吉川は、一度釣った魚から得た情報をもとに発想を切り替える。初日のキーになった魚は、ボウワムヌードルのネコリグで獲った1本だった。中層系ルアーには見に来るのに食わない魚が、ボトムにルアーを置いてやるとあっさり口を使った。そこから「今は中層だけではない」と気づき、思考を柔軟に切り替えていった。
実際、大会後に記者が吉川永遠と近いエリアで、似たような魚を狙っていた選手たちに話を聞くと、「ライブ画面にはバスが追ってくるのが映る。だが、そこから口を使わせることができなかった」という証言が複数あった。つまり、この時の七色ダムでは、ライブで魚を映して中層で見せて食わせるアプローチそのものが、すでにかなりプレッシャーを受けていた可能性が高い。魚はルアーを認識し、追う。しかし最後のひと口に至らない。その壁を越えられた選手は、ごくわずかだった。
その延長線上でたどり着いたのがダートパニックだった。春先に効く、鋭いダートアクション。しかも初日の終盤には、浅い魚だけでなく深いレンジの魚までこれで獲れることが分かった。シャローだけ、ミドルだけ、ディープだけではない。今自分が狙っている魚群全体にこのルアーが届く。そう確信できたことが大きかった。さらに、まだこのルアーを本格的に使っている選手が少なかったことも、結果的には大きな差になったのかもしれない。ライブで追わせるだけでは食わない魚に対し、他の選手とは少し違う角度からスイッチを入れられたこと。それが、吉川だけが同じような魚にしっかり口を使わせることができた理由のひとつだったように思える。2日目にはこの釣りで7本をキャッチし、4200g台まで伸ばす。しかも最小が800g前後という、極めて質の高い内容だった。
決勝日は風が強く、ライブスコープで細かく合わせるには難しいコンディションだった。それでも吉川は魚の移動先を把握していた。朝イチ、ガレ場でダートパニックによりポンポンと2本。そこから先が難しかったが、下流のクリークへ移ったことで再び展開が動く。橋の架かっていない長い方のクリーク、その深いガレ場にはキーパーが入っていることを把握していたが、この日はそのシャロー側に今大会最大級となる3kgクラスが入ってきた。
この魚にも、背景がある。今回の開催は平日で、水があまり動かない(七色ダムは土日にしか放水しない)。しかも下流に入る選手は少なく、そのクリークも3日間ほとんど触られていなかった。だからこそ、魚が安心して差してきた可能性がある。その状況にぴたりと当てて、最終日のビッグフィッシュを仕留めた。
初日3kg台、2日目4kg台、最終日5kg台。単に守り切ったのではなく、日を追うごとに精度を上げ、ウエイトを上げていった。しかもその根底には、季節進行、サイズ別の魚群の進み方、地形変化、プレッシャー、ルアー選択、それらをすべて統合していく高度な思考がある。今回の吉川永遠のコメントは、七色ダム戦を語るうえで非常に貴重な記録と言っていいだろう。
2位 梶原智寛
梶原智寛の準優勝もまた、非常に内容の濃いものだった。本人はプリプラクティスの段階で「かなり見えていなかった」と率直に語っている。自分の中で明確な本線が作れないまま、唯一、ファットウィップ3インチの瞬テキで800g未満の魚がポロポロ釣れる程度。トップ50の開幕戦としては、決して安心できる材料ではなかったはずだ。
だが、直前プラに入って状況は大きく変わる。西の川と北山川に、かなり魚が差していることに気づいたのだ。ここで梶原は、自分の強みをはっきり押し出す方向に舵を切る。サイトフィッシングとカバー撃ち。この二本柱で勝負することを決めた。
西の川でメインになったのはカバースキャット3.5インチ。高比重ワームをラインごと沈め、ボトムに置き、通りすがりの魚にアクションして食わせるというサイトフィッシングである。ここで重要なのは、上から追わせて食わせるのではなく、あくまで魚の進路や目線に合わせて“そこに置いておく”ようなアプローチをしていることだ。多くの選手が上からルアーを投げ込む中で、違う角度で魚に口を使わせる釣りだった。
しかも梶原は、この釣りがデカい魚に効くことをプリプラの中で感じ取っていた。初日に4kgオーバーを持ち込めたのも、その読みが機能したからだろう。一方で、ビッグだけでは試合は成り立たない。そこでサブパターンとして組み込んだのが、ファットウィップ3インチ「瞬テキ」。キーパーをきっちり揃えるための釣りを持っていたことが、3日間を通して大きかった。
2日目は、西の川の見えバスのテンションが落ち始めたことで展開を変える。北山川へ移動すると、そこにも魚は差していた。しかも、ただ見えているだけではない。見えていた魚が深い方へ落ちていくのを確認し、その落ちた先へ瞬テキを入れると一発で食ったという。この“見えている魚のその先”を釣る感覚は、梶原らしい強さでもある。
さらにもう1本は、カバーに入っていく魚を見てウッドチップを撃って獲った。今回のウッドチップは薄く、幅30cmあるかないかというレベルだったというが、それでも魚は入っている。広くて分かりやすいカバーではなく、春の差し場として機能する“薄いカバー”を見逃さず打ち続けた点も印象的だった。
最終日は北山川最上流へ。そこにあるウッドチップをすべて撃つような感覚で回り、カバーネコで3本をきっちり揃えた。前回七色戦の準優勝時とはまったく異なる釣りだったというが、苦しいプリプラから自分の強みを信じてまとめ上げた内容は見事だった。3日間トータル10kgオーバー。優勝に届かなかった悔しさは大きいだろうが、タイトルホルダーらしい底力を見せた準優勝だった。
3位 加木屋守
加木屋守の3位は、積み重ねてきた下見の量と、その情報を“今”に合わせて再構成する力が結びついた結果だった。
加木屋は1月の段階から七色チャプターにも参戦し、1週間に1回ほどのペースで七色ダムへ通っていたという。家が極端に遠いわけではないとはいえ、1月からこの開幕戦を意識して湖を見続けていたことは大きい。その中で加木屋が把握していた冬の七色は、13~14mから7mくらいまでのレンジで魚が釣れる、いわば“冬っぽい”湖だった。
ところが、公式プラクティスで確認すると、季節は確実に前に進んでいた。上流や各クリークの入口に魚が増えている。つまり、冬のディープに溜まっていた魚が、春を意識して入り口側へと差してきている。その動きに気づいた加木屋は、特定の場所に執着せず、七色ダム全域でその“増えた場所”を探しながら魚を集めていく戦略を組んだ。
ここが加木屋の面白いところで、“ここで勝負する”と一点に賭けるのではなく、湖全域で同じ現象が起きている場所を探して回る。クリーク入口、上流、魚がたまり始めるスポットを拾いながら、その日の組み立てをしていた。大会を通して水の全域を見ながら書き集めるように魚を釣っていった、という本人の表現がしっくりくる。
メインルアーはジャッカル エリーゼ1.5インチ、1.3gのホバスト。加木屋もまた、小鮎を強く意識していた。七色ダムでは春先、こうした小さなベイトに魚が強く反応するタイミングがあり、その流れにエリーゼを合わせていった形だ。そして、スーパービッグを狙う明確な単独パターンは見つけ切れていなかったため、まずはキロ前後までの魚をしっかり揃え、そこにキッカーをどう混ぜるかという現実的な戦略を取っていた。
そのキッカー役として投入したのがコイケ。3.5gのバウヘッドで沖を回遊する魚にシューティングで当て、最終日にはこの釣りでこの日最大級の魚をキャッチしている。エリーゼによる手堅い組み立てと、コイケによる一発。この二枚看板で3日間を戦い抜いた。
表彰式で本人は「3位で満足か」と問われ、「全然満足じゃない。そろそろ優勝が欲しい」と即答した。昨年年間タイトルを逃した悔しさを抱えたまま迎えた新シーズン。その開幕戦で3位スタートは十分立派だが、本人の目線は明らかにその先にある。だからこそ、この3位は“うまくまとめた3位”ではなく、“優勝を狙ったうえで足りなかった3位”として強く記憶に残る。
4位 江尻悠真
江尻悠真の4位は、季節進行の変化を見誤らず、むしろ途中で大きく舵を切ったことで手にした順位だった。
プリプラクティスでの江尻は、完全に冬パターンを見ていた。水深10m、12mといったディープレンジで、ゲーリースコープシャッドのミドストやシューティングがよく釣れていたという。おそらくその時点では、それが本線になる可能性も十分あったはずだ。
だが、直前プラに入るとその釣りがまったく通用しない。そこで江尻は、自分が狙っていたレンジの魚が“もう一段春っぽくなっている”と判断した。この修正力が大きかった。冬の魚を追い続けるのではなく、春へ寄った魚へ狙いを切り替える。そしてそれは、単なるレンジ変更ではなく、釣りそのものを一気に変える決断でもあった。
魚探を見ない。シャローのバンクを撃つ。ブッシュや小さなチップ、時には水深30cmほどしかないような浅い場所まで含めて、カバーネコでひたすら撃っていく。使ったのはスリムヤマセンコーやカリフォルニアロール。1.8gから3.5gまでのネイルリグで、春っぽい魚を丁寧に釣っていく組み立てだった。
しかも江尻の狙いは、ただ小さな魚を拾うものではなかった。浅い方に寄った魚をベースにしながら、ロールするビッグベイトでディープから一発の大きい魚も狙っていたという。つまり、春へ寄った魚を軸にしつつ、試合を変えるキッカーも別に用意していた。結果的に、魚はデカいが数が取れず、昨日も今日も2本だったと本人は振り返っている。それでも3kg前後を毎日持ち帰っているのだから、一匹一匹の質の高さがうかがえる。
極めて浅いカバーに対するネコリグ撃ちという、いかにも春の差し始めを狙った釣りに見えて、実はその裏には“冬パターンが壊れた後、魚が次にどこへ動くか”を考え抜いた読みがある。試合中にそこまで切り替えられる対応力は、さすがトップ50の舞台だと感じさせた。
5位 藤田夏輝
藤田夏輝の5位は、土台にある読みが非常に明快だった。
藤田がプラクティスで感じていたのは、「まだ冬だな」という感触だった。上流に見えるバスが増え、いかにも春らしいサイト戦ができる状況を少し期待していたようだが、実際にはそうではない。藤田自身、見えるバスを釣るのが好きだというが、その好きな展開に無理に寄せず、今の湖に合わせて中下流域をメインに組み立て直した。
その判断の背景にあったのが、ベイトフィッシュの小ささだった。プラクティス中、ベイトボールに突っ込む魚に遭遇し、「小さいベイトを食っている」と感じたという。ここから藤田は、ルアーサイズを明確に合わせていく。エリーゼ1.5インチのマイクロホバスト、そしてドリフトフライ・エラストマー2.5インチの2.2gジグヘッド。浅いフィーディングの魚だけではなく、普段のレンジは7mから14mくらいにいると見ていたため、ある程度重めのセッティングにしていた。
この“マイクロベイト+やや深め”という読みの中で、初日に大きな意味を持ったのがダートパニックだった。岩盤にフィーディングで入ってきたデカい魚が2匹おり、それをライブで見て仕留めたという。表彰式でも本人が認めていた通り、初日の4485gはこのビッグフィッシュの存在が非常に大きかった。結果論ではなく、湖の状態とベイトサイズ、そしてフィーディングの入り方を読んだ先にあった一撃だったと言える。
しかも藤田は、この試合で使うメインルアーを3日間ほぼ変えていない。エリーゼ、ドリフトフライ、そしてダートパニック。中下流域、岬、クリークのバンク沿い、岩盤のフィーディング差し場。そうした複数のシチュエーションを、ベイトサイズの一致という一本の線で結んでいた。ビッグフィッシュの印象に隠れがちだが、試合全体としてかなり再現性のある組み立てをしていたことが伝わってくる。
開幕戦が示した、2026年トップ50の面白さ
こうして2026年のJBトップ50シリーズ開幕戦、七色ダム大会は幕を閉じた。
3月中旬という初めての開催タイミング。完全な冬から早春へ移ろう難しい条件。初日の西の川、2日目の各エリアの変化、そして最終日に勝敗を分けた下流域の展開。3日間を通して、七色ダムは常に表情を変え続けていた。
その中で優勝した吉川永遠は、前回のトップ50七色ダム戦に続く2連勝を達成した。湖全体の季節進行、サイズごとの魚の動き、プレッシャー、レンジ変化、そのすべてを高いレベルで読み切った末の勝利だった。開幕戦から、トップ50の頂点を争うにふさわしい内容を見せつけたと言っていい。
一方で、梶原智寛のサイトとカバーを軸にした準優勝、加木屋守の全域ランガン、江尻悠真の大胆な春シフト、藤田夏輝のマイクロベイト対応と、上位陣が見せた答えは一つではなかった。つまり2026年のトップ50シリーズは、今年も簡単には一色に染まらない。選手それぞれの読みと武器が、より鮮明にぶつかり合うシーズンになるはずだ。
開幕戦を終え、年間争いはまだ始まったばかり。次戦はJBトップ50 第2戦東レCUP、6月12日(金)~14日(日)、山口県 弥栄湖で開催される。2026年シリーズの流れを占う次戦にも注目したい。
レポート作成:ChatGPT 5.4
写真・構成:NBCNEWS H.Togashi