JBマスターズ第2戦デジタルストラクチャーCUP

2026年 07/18 (土) ~07/19 (日) 愛知県 入鹿池

45gが分けた初開催の入鹿池戦 新谷健斗、ラージマウスFFSの最前線を制す

JBマスターズが初めて入鹿池へ足を踏み入れた。全国屈指のラージマウスFFSレイクには、赤カベ前を中心に近年まれに見る大船団が出現。魚影の濃さを証明する連続ヒットが見られた一方、その魚に口を使わせることは決して簡単ではなかった。

初日首位の新谷健斗と、2日目首位の小林翼は、ともに199ポイント。最後は2日間の総重量差、わずか45gで勝負が決まった。

江戸時代のため池で進化した、ラージマウスFFSの最前線

入鹿池は、1633年に築造された農業用ため池である。満水面積約152ha、貯水量約1,520万立方メートル。ため池としては全国でもトップクラスの規模を誇り、約400年にわたって尾張地方の農業を支えてきた。その歴史ある水面は現在、国内でも有数のライブソナー・トーナメントレイクとなっている。

JB/NBCトーナメントにおいて、ライブソナーを使った釣りが発展してきた代表的なフィールドといえば、桧原湖や野尻湖などのスモールマウスレイクが挙げられる。河口湖も有名だが、ソフトルアー禁止という独自のルールの中で進化を遂げてきた。その一方、入鹿池はソフトルアーを使い、ラージマウスバスを狙うFFSの代表的なフィールドである。

河口湖とのサイズ比較(どこでも河口湖マップより)

ワカサギなどのベイトフィッシュが豊富で、湖底変化の少ない皿池状の地形を持つ入鹿池では、沖を回遊するバスをライブソナーで探し、魚の動きを見ながらルアーを送り込む釣りが発達した。目に見えるカバーを追うのではなく、一見何もない中層から一匹のバスを見つけ出す能力が問われる。

2021年には、藤田京弥がJB入鹿池の第2戦から第4戦まで3連勝を達成し、年間チャンピオンを獲得。ライブソナーを駆使した圧倒的な強さは、入鹿池をラージマウスFFSの最前線として全国に強く印象づけた。また、JB入鹿池やNBCチャプター愛知からは、ライブソナーを得意とする若手アングラーも数多く育っている。入鹿池は単なるローカルレイクではなく、最新の魚探技術とシューティング能力を磨く重要なフィールドとなっている。

約400年前に造られた巨大ため池で、最新鋭の魚探とソフトルアーを駆使した戦いが繰り広げられる。今回、JBマスターズが初めて足を踏み入れた入鹿池は、歴史と最先端が同居する、JB/NBC屈指のトーナメントレイクである。

DAY1 ホトトギスが鳴く、蒸し暑い朝

初日の入鹿池は曇天無風。湖畔ではホトトギスが鳴き、朝から湿度の高い、蒸し暑い空気に包まれていた。

取材艇を出し、湖を時計回りに一周する。入鹿池は農業用のため池だが、岸辺だけを見ていると(マウンテン)リザーバーに近い。山に囲まれた湖全体を引きで眺めると、どこか野尻湖にも似た印象を受ける。

冨沢真樹

選手たちの動きを大まかに分けると、岸を狙っていたのが2割ほど。3割ほどが沖の何もない場所に浮くバスを狙うFFS組。そして、半数近い選手が通称「赤カベ」前に集中していた。まるで20年前の河口湖・ロイヤルワンドを思い出させるような光景だった。記者も久しぶりに、あのクラスの大船団を目の当たりにした。

赤カベ前を埋め尽くした大船団

赤カベ前大船団

午前10時頃から、取材艇を船団の近くに止めて試合を見守った。この頃から程よい風が吹き始め、朝から続いていた蒸し暑さも少しだけ和らいだ。

湖上は静かだった。選手たちはほとんどロッドを動かさず、ライブソナーの画面を見つめ続けている。しかし、その静寂の中で、ポツリ、ポツリと誰かのロッドが曲がった。

小林翼

半数近い選手が同じスポットを狙っていても、魚は釣れていた。入鹿池の魚影の濃さを感じさせる光景だった。

釣れれば1500g――驚異のコンディション

検量が始まると、さらに驚かされた。まるでプリスポーン期のバスを思わせるような、お腹がパンパンに張ったグッドコンディションの魚が次々と持ち込まれた。特に多かったのが、1500g前後の魚だった。

新谷健斗 5,395g
小林翼 5,025g

85人中47人が検量し、79匹、総重量108,502g。1匹平均重量は1,373gに達した。リミットメイクは12人にとどまったが、釣った選手の多くが良型を手にしていた。初日トップは、3匹5,395gを持ち込んだ新谷健斗。2位には5,025gの小林翼が続いた。

近年まれに見る大船団戦となった一方、0匹や1匹で終わった選手も多い。魚はたくさんいる。だが、その魚に口を使わせることは、決して簡単ではなかった。

DAY2 ラージマウスで初めて見た5人連続ヒット

2日目も取材艇を出し、赤カベ前の船団へ向かった。しばらくは何も起こらなかった。ライブソナーの画面を見つめる選手たちと、静かな湖面。初日と同じような沈黙が続いていた。

その空気が突然変わった。食い気のある群れが回ってきたのか、まず2人のロッドがほぼ同時に曲がった。それをきっかけに、周囲の選手が次々とバスを掛ける。短時間に5人連続ヒット。

中田敬太郎
小林翼 

桧原湖のスモールマウス戦では、ときおり見られる光景である。しかし、ラージマウスバスの大会でこれほどの連続ヒットを見たのは、27年間の取材で初めてだった。

初日だけでも、このスポットから数十本のバスが抜かれているはずだ。それでも、まだ多くのバスが残っていた。2日目も85人中47人が検量し、77匹、総重量107,685g。1匹平均重量は初日を上回る1,398gだった。入鹿池のポテンシャルは本物だった。

初日首位・新谷は船団の外にいた

五条川河口付近

赤カベ前の船団を離れ、湖東側へ取材艇を走らせた。五条川河口付近で発見したのが、初日トップの新谷健斗だった。

新谷健斗

新谷はライブソナーを確認しながら、1ozはありそうな重いリグを、短い間隔でキャストしていた。選手の半数近くが一カ所へ集まる中、新谷は船団とは別の魚を追っていた。そのとき投げていたリグこそ、後に入鹿池初代マスターズ王者を生み出す、1ozのヘビーキャロライナリグだった。

RESULT 199ポイント同士、最後は45g

2日目の単日トップは小林翼。初日5,025g、2日目5,055g。2日間とも5kgを超える驚異的な安定感を見せた。

一方の新谷健斗は、初日5,395gでトップ。2日目も4,730gで単日2位に入り、小林と同じ199ポイントを獲得した。JBマスターズでは、各日の順位ポイントの合計で総合順位を決める。同ポイントの場合は、2日間の総重量が多い選手が上位となる。

新谷は10,125g。小林は10,080g。その差は、わずか45gだった。

最終成績

1位 新谷健斗 10,125g/199ポイント 
2位 小林翼 10,080g/199ポイント 
3位 河田裕介 8,735g/193ポイント 
4位 中田敬太郎 7,835g/188ポイント 
5位 赤木誠二 7,731g/187ポイント

優勝が決まった新谷は、お立ち台で涙を見せた。

「嬉しすぎて、ちょっと涙が出ちゃいました」

歴史ある入鹿池で初めて開催されたJBマスターズ。その初代王者となったのは、船団の外で沖のバスを追い続けた新谷健斗だった。

新谷健斗 考える時間を与えないリアクション

新谷がメインにしたのは、ジャバスティック2インチをセットした1ozのヘビーキャロライナリグだった。狙ったのは、水面下2m前後の中層に浮いているバス。

スーパーフィッシュローラー7.5インチ・ジャバスティック2インチ

魚の近くへ直接キャストすると、着水音やボートの存在を警戒して逃げてしまう。そのため、新谷は魚から離れた位置へロングキャストし、リグを魚の前まで引いてきた。そして、バスの顔の前で斜めに一気にフォールさせる。

クリアレイクのサイトフィッシングでも、バスの顔の近くを高速で横切るようにルアーを通し、反射的に口を使わせるテクニックがある。新谷はそれを、目視ではなくライブソナーの画面を通して行っていた。

バスがルアーを見切る前に、落ち切る途中で食わせる。まさに、サイトフィッシングを水中の魚探画面上で再現した、完全なリアクションの釣りだった。

もうひとつ用意したのが、スーパーフィッシュローラー7.5インチを使った高速のi字引き。ボートを嫌い、水深10m付近の水温躍層まで潜ったバスの進行方向へルアーを先回りさせる。バスがルアーに気づいた瞬間、高速で逃がして反射的に食わせた。

1ozのヘビキャロも、7.5インチのスーパーフィッシュローラーも、共通していたのは魚に考える時間を与えないことだった。多くの選手が、ルアーを見せ、追わせ、食わせる方法を選ぶ中、新谷は見切られる前の一瞬に勝負をかけた。

小林翼 4度目の2位、2度目の同ポイント重量負け

新谷とは対照的に、小林翼が使ったのはフラッシュJのマイクロホバストだった。単発で中層を泳ぐバスには、ルアーをシェイクせず、ゆっくりと持ち上げながら食わせる。群れが入ってきた場合は、同じルアーをボトムまで沈めてシェイク。群れの中にいる良型をボトムへ呼び込んで食わせた。

同じルアーでも、魚の状態によって泳層と動かし方を変える。小林が2日間で釣ったのは、初日4本、2日目3本。決して数多くのバスを釣ったわけではない。それでも、2日連続で5kgを超えた。

新谷が強いリアクションで魚に判断させなかったのに対し、小林は極小ルアーを繊細に操作し、少ないチャンスを確実に重量へと変えていった。

これで小林は、マスターズ戦で4回目の準優勝。しかも、同ポイントからの総重量差で敗れたのは今回が2回目だという。前回も40g余り。そして今回は45g。優勝カップは、今回もあと一歩のところで届かなかった。

3位 河田裕介 沖から岸へ引くアプローチ

河田裕介は、稲荷山周辺をメインエリアとした。狙ったのはワカサギの群れそのものではなく、水深4m前後を単発で回遊するバス。

18gのフットボールジグを魚に追わせ、水深8mほどのボトムまで落とし、着底後のシェイクで食わせた。初日は4,070g。2日目は4,665gまでウエイトを伸ばした。

2日目に改善したのが、ボートのポジションだった。ボートを岸側へ寄せ、沖から岸方向へジグを引いてくるアプローチへ変更。この方向から引くことでバイトが増え、総合3位へと順位を上げた。

4位 中田敬太郎 いつ来るか分からない一瞬を待つ

プリプラクティスに入れず、前日練習だけで大会を迎えた中田敬太郎。その前日練習で赤カベ前に浮いた瞬間、目の前の光景に衝撃を受けたという。魚が「一山」に見えるほど、大量のバスが映った。

赤カベには、急激に深くなるブレイクが何カ所か存在する。その岩壁沿いへ、ワカサギを追うバスが一気に上がってくるタイミングがあった。中田は、バスが必ず通る岩の付近へハンクルフライ25と30のホバストを置き、フィーディングの群れが回ってくる瞬間を待った。

何も起こらない時間が長く続く。しかし、ベイトが壁際へ追い込まれた瞬間、連続バイトが起きる。2連発や3バイト連続という場面もあったという。

ただ止めているだけでは食わない。何らかの細かな操作を加えていたが、その内容については、お立ち台でも「それは言えないです」と笑った。

初日3,945g、2日目3,890g。一度しか練習できなかった入鹿池で、2日間とも約3,900gを揃える安定感を見せた。

5位 赤木誠二 風裏を選んだ現実的な判断

赤木誠二が使用したのは、ナカタジグ1/2ozにブルフラット3.8インチを組み合わせたフットボールジグ。バンク沿いの岬など、ワカサギが溜まる場所についたバスを狙った。

ジグのカーブフォールで魚に追わせ、そこからボトム付近へ落とし込んで食わせるライブサイトの釣りだった。初日は風が強く、ライブソナーの操作が難しい状況だった。

そこで赤木は、あえて風裏を選択。画面を見ながら狙いやすい場所で釣りを組み立てた。得意な場所を押し通すのではなく、自分が確実に釣りを成立させられる環境を選んだことが、初日3,955g、2日目3,776gという安定した結果につながった。

船団戦では、なかなか勝てない

今回のような船団戦は、ときおり発生する。ここまで密集していなくても、有名エリアに参加選手の半数以上が集まることは珍しくない。

そうした船団から単日トップウエイトが出ることはある。しかし、記者の経験では、2日間、3日間と続く大会で、最後まで船団の中から優勝者が出るケースは意外なほど少ない。大勢の選手が同じ魚を狙うため、日を追うごとにプレッシャーが高まり、魚の反応も変化する。

今大会も、赤カベ前の船団組からお立ち台に立ったのは、2位の小林翼と4位の中田敬太郎の2人だった。優勝した新谷は、船団の外にいた。

それでも、差はわずか45gだった

船団から優勝者は出なかった。しかし、その差はわずか45gだった。小林があとわずかに重い魚を1匹入れていれば、結果は逆になっていた。

「船団では勝てない」というこれまでの経験則と、船団の中から優勝まで45g差に迫った小林。今大会は、その両方を同時に見せた試合でもあった。

勝者が選んだ「反省釣り」

大会終了後、「反省釣り」と称して、もう一度湖へ出る選手は少なくない。多くの場合、それを行うのは悔しい敗戦を経験した選手である。しかし、今回の新谷は違った。

優勝したにもかかわらず、入鹿池にもう一泊し、翌日も丸一日練習すると話していた。その理由を尋ねると、大会中にライブソナーの画面で確認したバスは、100匹ほどいたという。しかし、その中から狙った反応を引き出し、ヒットまで持ち込めた魚はごくわずかだった。それが自分自身に腹立たしく、悔しいのだという。

もっと反応させる方法があったのではないか。もっと多くの魚に口を使わせる手段を見つけたい。勝ったから終わりではない。

入鹿池初代王者は、優勝翌日も湖へ出た。その飽くなき探究心こそが、45g差の勝負をものにした最大の理由だったのかもしれない。

次戦は、夏の河口湖

次戦は、8月8日、9日に開催されるJBマスターズ第3戦シマノCUP。舞台は夏の河口湖である。

昨年の河口湖戦では、FFS全盛の時代にありながら、長年の経験を生かしたオールドスクールスタイルが勝利を収めた。

ラージマウスFFSの最前線・入鹿池を制した新谷が、次戦でも勢いを見せるのか。それとも、河口湖を知り尽くしたベテランが待ったをかけるのか。

最新技術と長年の経験が交差する、真夏の河口湖戦が始まる。

レポート作成:GPT-5.6 Sol
写真・構成:NBCNEWS H.Togashi

TOP