経験と先入観のなさの交錯
藤田夏輝2勝目、ルーキー旋風が彩った桧原湖戦
2025年の夏も全国的に厳しい暑さが続いたが、標高800mの桧原湖ではお盆を過ぎた頃から一気に秋めき始めていた。まさに季節の変わり目を迎えたタイミングでの開催。さらに初日には台風が日本列島へ接近したものの大きな影響はなく、その一方で水位は毎日15cmずつ下がり続けた。例年なら晩秋に訪れる最低水位に迫るほどの低水位の中、選手たちは刻一刻と変化するコンディションへの対応を迫られることとなった。
そうした難しい舞台で再び歓喜の瞬間を迎えたのは、2年前の覇者・藤田夏輝だった。予選2位からのスタートとなったが、最終日に単日トップの3136gを叩き出して逆転。経験を糧に確実に勝利を掴み、JBトップ50シリーズにおける前人未到の桧原湖2勝目を達成した。季節の変わり目と減水という厳しい条件下で、優勝に不可欠なラージを仕留め、堂々と再び桧原湖の頂点に立ったのである。
【DAY1】小雨と高活性、ラージを混ぜた上位陣が3kg超え
小雨のなかスタート
初日は朝から小雨。昼前には止み、湖全体を見渡すと選手の分布に明確な偏りが見えた。もっとも人気を集めたのは北部エリア。多数のボートが集中しており、例年秋に人気を博する馬の首・月島・狐鷹森に浮くボートは少なかった。
1位 薮田和幸 3,490g 3匹
2位 加木屋守 3,290g 3匹
3位 藤田夏輝 3,132g 3匹
釣果は驚異的で、ウエイイン率100%を達成。3本リミット制の中でも800gを揃えるだけでは予選通過が難しいほどのハイウエイト戦となった。スモールマウスは現実的に1,000gが限界とされる一方で、ラージマウスは1,500〜2,000gが狙える。その差を活かした選手たちが初日から頭一つ抜け出し、3kg超えで上位に名を連ねた。
【DAY2】台風一過の快晴、人気はラーメン屋沖と京ヶ森
2日目は台風一過の晴天。気温は20度台と快適で、酷暑に苦しむ平地との対比は際立った。
湖上を一周すると、北エリアがもっとも賑わい20艇を超えるボートが浮いていた。なかでも「ラーメン屋沖」と呼ばれるエリアにはボートが密集していた。さらに京ヶ森エリアにも10数艇が集まっていた。投げるルアーはそれぞれだが、基本的にはFFSを駆使した沖の釣りを展開していた。
今大会圧倒的人気の早稲沢エリア
2番人気の京ヶ森エリア
ラージ狙いはサイトが主流だが薮田和幸はウイードのジグストで狙った
桧原湖は本来、数釣りのイメージが強く、取材艇からもヒットシーンの撮影は容易な日本では稀有の存在。しかし今回の大会では様子が異なり、頻繁にロッドが曲がる場面は見られなかった。FFSの進化と3本リミット制の導入によって、「数釣ってウエイトを上げる」のではなく「良型だけを狙う」スタイルが主流となったのだろうか。
今泉拓哉は温泉ワンドのサイトで2300ラージをキャッチし2日めトップ
この日もっとも注目を集めたのは、今泉拓哉の2300gラージマウス。桧原湖では特大級といえるその魚を持ち込み、会場を大いに沸かせた。
阿部貴樹 オールスモールで3,146g 3匹
松崎真生もスモールのみで3,124g 3匹
一方で、阿部貴樹と松崎真生はスモールマウスのみで3kg超をマーク。ライブシューティングを武器とする入鹿池育ちの彼らの実力を改めて印象づけた。
晴天続きで釣果低下が懸念されたが、全体のウエイトは落ちることなく推移。トップ50選手の技術と戦略の高さが示された一日となった。
【予選結果】薮田が首位通過、勝負の鍵はラージ
桧原湖からほど近い山形県出身の薮田和幸が初優勝に王手
2日間の予選を終え、決勝進出者30名が決定した。目安としては各日2500g前後が通過ライン。
首位に立ったのは山形出身の薮田和幸。両日ともラージを1本混ぜ、合計6564gを叩き出した。2位に500g差をつけ、ほぼ地元での初優勝をかけて決勝に臨む展開となった。2位には2年前に同大会を制している藤田夏輝。3位と4位にはルーキーの藤川温大と松崎真生が続き、トップとの差は600g。スモール3本だけで逆転するのは難しく、決勝のカギはやはり「ラージを混ぜられるかどうか」にあった。
【DAY3】暫定首位が失速、藤田が逆転優勝
3日めも清々しい晴天になった
最終日も青空が広がった。競技時間は2時間短縮される中、30名中28名が検量。暫定トップの薮田和幸は、まさかのノーフィッシュ。逆に暫定2位の藤田夏輝が単日トップとなる3136gを持ち込み、逆転で優勝を飾った。桧原湖戦では2度目の栄冠となり、トップ50における存在感を改めて示した。
優勝した藤田夏輝は、早稲沢からラーメン屋沖にかけての7〜9mフラットを軸に、双子島周辺の5〜8mのハンプ、桧原大橋付近の立木といった定番のスポットを丁寧に攻略していった。
初日と2日目は大川エリアのウッドカバーでラージを仕留め、決勝では南エリアの温泉ワンドで勝負を決定づけるラージマウスをキャッチ。釣り方も状況に合わせて多彩に使い分け、フラットの浮きバスにはエリーゼ1.5とTRAP micro #6を組み合わせた1.3gのホバスト、中層を泳ぐ魚にはサカマタシャッド5インチ+BESTIE #3の2ozヘビダンでボトムに追わせるライブシューティング。
大川シャローでラージを狙う藤田夏輝
2ozダウンショットで立木を攻める藤田夏輝
ウイニングルアー
さらにラージ狙いでは、初日と2日目がキングジミーヘンジにSQueeZE 3/0とバウヘッドTG3.5gを組み合わせたリグでカバー周りをミドストし、決勝ではドリフトフライ2.5エラストマーの2.7gダウンショットでサイトフィッシングを展開した。まさに桧原湖を知り尽くした藤田ならではの柔軟さが、勝利を呼び込んだ。
総合2位 松崎真生
2位に入ったのはルーキーの松崎真生。彼は早稲沢から鳥居前、月島インサイドといったエリアを中心に組み立て、シャローは5gフリーリグで魚を狙った。また沖ではサカマタ5インチを1/2ozフットボールジグにセットし、さらにはマイクロホバストも駆使するなど、入鹿池で鍛えた多彩なアプローチで対応。桧原湖初挑戦ながら、浅場とディープを自在に行き来する戦略で堂々の準優勝を果たした。
総合3位 阿部貴樹
3位には、同じくルーキー(*正確には2年めだが初年度は参戦していない)の阿部貴樹from入鹿池が入った。湖全体をランガンし、2〜4mフラットでは沈む虫系ワームをフォールやシェイク、放置といった繊細な操作で食わせ、レイダウンの魚にはギーラカンス5.8インチのネコリグを投入。フラットとカバーの両方を視野に入れた柔軟な展開が功を奏し、安定してウエイトを積み重ねた。
4位 船本尚宏
4位の船本尚宏は、京ヶ森や馬の口周辺の7〜8mをメインエリアとし、浮いた魚には1.8g〜2.7gのワームを使ったミドスト、ボトムに近い魚にはリアクションキャロを投入。とりわけ3インチグラブのテールをカットしてラバーを刺した独自のイモラバは、この試合における彼の武器として光った。
5位 藤川温大
そして5位には藤川温大が入賞。湖全域の4.5〜6.5mレンジでスモールをメタルクロースピンのライブサイトで攻略し、さらに狐鷹森のシャローではラージをサイトフィッシングで狙った。レンジを幅広くカバーしつつ、大胆に戦った姿勢が若さと勢いを感じさせる戦いぶりだった。
【大会のトピック】
今回の桧原湖戦を振り返ると、まず強調すべきは季節の変わり目と減水による魚の大きな動きだ。その変化を的確に読み切った選手だけが上位に残った。そして3本リミット制の現在、優勝に近づくには1.5〜2kg級のラージを混ぜることが必須条件であることが改めて浮き彫りになった。
優勝した藤田夏輝は、桧原湖に長年通い続けてきた経験を背景(詳細は2年前のインタビューを御覧ください)に、状況の変化に臨機応変に対応。最終日はスモール2本とラージ1本の合計3本だけの釣果ながら、確実に仕留めたことで勝利を掴んだ。一方で、2位から5位までを占めたのはすべてルーキーたち。桧原湖初挑戦の彼らはベテラン勢が苦戦するなかでお立ち台に立ち、FFSを活かしつつも固定観念にとらわれない釣りで結果を出した。多くの選手がディープフラットに固執する中、彼らはより浅いレンジで魚と向き合い、今の桧原湖に順応してみせた。その姿は、新しい時代のトーナメントシーンを象徴するものだったと言えるだろう。
全5戦のうち4戦を終え、年間ランキングは加木屋守が首位をキープ。王者青木大介がわずか1ポイント差で追走している。
https://www.jbnbc.jp/_JB2025/point_rank.php?series=top50
最終戦は10月17〜19日、霞ヶ浦でのSDGマリンCUP。年間タイトルを懸けた決戦は目前に迫った。
レポート作成:ChatGPT5
写真・構成:NBCNEWS H.Togashi