2013年8月30日~9月1日に福島県桧原湖でJBトップ50シリーズ第4戦エバーグリーンCUPが開催された。過去最高のハイウエイト戦を制したのはシリーズ参戦4年目の奥泉悠介。めまぐるしく変わる天候にうまくアジャストしシャロー~ディープにいるグッドサイズをキャッチした。
猛暑のニュースが飛び交った2013年夏。しかし東北地方は例外で7月は低温と長雨に見舞われた。プリプラクティス期間前半の桧原湖は、その影響でとても涼しいうえに高水位をキープ。8月第1週はシャローの虫パターン、ディープのジグ・ライトリグなどで船中40~50本の爆釣が続いた。その後、梅雨があけ束の間の真夏が到来。どうじに放水が始まり徐々に水位が下がって行った。お盆近くには昼と夜の寒暖差が広がり、場所によっては水質が悪化。多数の選手によるフィッシングプレッシャーも加わり釣果はかなり厳しくなっていったらしい。
2週間空けた公式プラクティス。28日水曜日はぐずついた天気で長袖必携の寒さに見舞われた。水温は25度前後で8月の頭と同じ感じ。梅雨明け以降最高水温に達してからの下降傾向。水位は1m以上下がっていた。全体的に濁りが広がり湖北部の水面はアワアワ。満水時にたくさん居たシャローの生き物も激減していた。お盆過ぎの山上湖は一気に難しくなるケースが多いが、今回もそれに該当してる感じだった。
29日木曜日は朝こそ冷え込んだものの、晴れあがった日中は一気に真夏の陽気になった。
去年の大会は7月だったためシャロー~ディープにボートが散らばった。大会中に40~50本釣れる大爆釣大会だったが、今回は完全に晩夏のディープの釣りになっていて、去年のように数がたくさん釣れる感じではない。
ただしウエイトは去年よりもアップし「2500gで普通以下」、「3キロチョイで団子を抜ける」、3500を三日間で「かなりイイセンもしくは優勝」という印象だった。去年までは3キロ3日間で優勝ラインだったが、桧原湖バスは年々巨大化している。
ビッグウエイトの鍵をにぎる1キロ前後のラージマウスはシャローに少なく、大会の流れに影響をあたえるほどの数は居ないように感じた。
台風接近のニュースを気にかけつつ、大会本番に臨んだ。
台風と前線の影響を受け厚い雲に覆われた朝。プラ初日もこんな空だったが、大きく違うのは気温の高さ。いかにも「釣れそう」な雰囲気を醸し出していた。湖上からのビューポイントが少ない桧原湖ではあるが、一応湖畔を一周してみる。定番早稲沢フラット~糠塚島が一番人気。でも去年ほどの船団ではない。大川・月島・早稲沢にも数艇浮いている。釣れているシーンを何度か目撃したが、去年ほど数が釣れている感じではなかった。
とはいえ、去年が釣れ過ぎただけで、公式ツイッターには早い段階から続々とリミットメイク~入れ替えの報告が入っていた。
初日トップは五十嵐誠。ディープのダウンショットで600g台のベースを作ったのち、前日巨大スモールを2匹見かけていた大川エリアへ移動。一回ミスったものの、得意のネコリグ(レインズスワンプ)で食わせたのが49cm・1500クラスのスーパーキッカー。大台に20g足りなかったものの3980gという見事なウエイトを持ち込んだ。
2位は関和学。20mラインに沈む立木トップ10mにスモラバ(エバーグリーンC4ジグ2.2g+C4シュリンプ2.8インチ)をステイさせるというスゴ技を使い、誰にも狙えないビッグバスを狙った。結果1678gという今回のビッグフィッシュ賞を獲得したスーパーキッカーを混ぜ3945g。
3位は阪本浩隆。湖中央部のハンプ群をライトキャロライナリグ(エコギアバグアンツ+2.7g)で狙いグッドサイズを連発。11時の時点でセーブし、5本で3870g。
トップ3が4キロに迫る勢い。優勝ラインと読んだ3500で11位、3キロ釣っても33位。曇天低気圧高気温の恩恵なのか、予想を遥かに上回るハイウエイトが続出した初日だった。
薄曇りで始まった2日目。日中は晴れ。初日と天気が大きく変わった。初日ハイウエイトを出した選手が軒並み苦戦しているようすがツイッターのタイムラインに並んだ。初日と同じパターンで700g以上のグッドサイズを狙い続ける勝負に出た選手がノーバイト地獄に陥った。180度変わった天候では2日続けて同じ釣りが通用しないようだ。ラージでもその傾向はあるが、スモールの場合はそれがより一層顕著に現れる。
そんな状況にしびれを切らし、2日め途中から釣り方を大きく変えて成功したのが馬淵利治。ディープの釣りでは埒が明かないことを悟り2日め途中からシャローのパターンにシフト。スタンプにイモラバ(イマカツ・アンクルゴビーのテールカット+毛刺し+シンカー)を絡める釣りで今大会トップウエイトとなる4330gを持ち込み会場を沸かせた。
山木一人は湖各所のインレット沖にあるチャネルの段差、立木トップに浮く個体をダウンショット(エコギア・サンスン)で狙い3865g。単日2位の成績を残した。
単日3位は藤木淳。無名島北側のチャネルでキーパー取りをし2600のベースを作ったのちに月島ハンプで入れ替えを行った。いずれもキャロライナリグ(イマカツ・ジャバスティック)とネコリグ(イマカツ・セクシーアンクル2.5インチ)のシューティングで狙い最終ウエイトを3622gとした。
ほぼ全員がリミットメイクという結果は前日と変わらずだったが、全体的に釣れた数(入れ替えされた数)は減ったようで、5本の最終ウエイトは少し落ちた2日めだった。
初日7位、2日め2位の山木一人が232ポイントで予選トップ通過。9点差で奥泉悠介が2位、11点差で馬淵利治が3位。
年間ポイントランキング暫定トップの北大祐が4位、桧原湖優勝経験がある福島健が暫定5位にはいった。
山木一人はトップカテゴリー参戦10年以上のベテラン選手。河口湖での圧倒的強さは言わずと知れているが、トップカテゴリーでの優勝はまだ無い。11点差のリードだけに「遂に順番が回ってきた」と周りは喜んでいたのだが・・・
30位の小池貴幸が3006g、3008g。2日で6キロが予選通過の目安だった。ちなみに過去の予選通過ウエイトを並べてみると
2009年 2878g
2010年 4314g
2011年 4750g
2012年 5630g
2013年 6014g
という感じ。開催された季節が同一ではないにせよ、桧原湖バスの巨大化がデータとしてはっきりわかる。
小雨で始まった最終日。予選通過した30名のボートが各自思い思いのポイントに向けてスタートした。小雨ローライトで釣れそうな感じだったのは最初の2時間ほど。10時過ぎには青空が顔をのぞかせ、2日めのような少し釣りづらいコンディションになった。初日・2日めの天気を半日に凝縮したような最終日。
5日目のプレッシャーと好天の影響か、各選手苦戦しているのがツイッターで判明。特に暫定トップの山木一人は大苦戦しているようだった。
一方、タイムラインにたびたび上がったのが「野村俊介が一人でイレぐっている」というもの。多くの選手の目に見える範囲で「野村劇場」を開演しているもよう。
そんな野村は3604gで単日トップウエイトをマーク。エリアは月島北。4.5~7mベイトが溜まるところにキャロライナリグをズル引きし、周りに浮く選手のやる気を削ぐほどの怒涛のイレグイショーを演じた。2日め後半にその場所を見つけたらしく、初日の成績が悔やまれるところだ。
暫定トップの山木一人は2694gで最終日を終えた。他の選手が軒並み3キロ近いウエイトなので、優勝のセンはなくなった。
暫定の2位の奥泉悠介と3位の馬淵利治がトレーラーウエイインを行い、優勝はこの2名に絞られた。
結果、奥泉悠介が単日3位の3424g、馬淵利治は3434gで2位。馬淵が最終日の獲得ポイントと重量ポイントで奥泉を上回ったが、初日の点差が追いつかず2ポイント差で奥泉悠介が優勝した。
優勝の奥泉悠介はスモールが大好き。以前は3~4年ほど桧原湖に通い、JB桧原湖戦に出場。優勝1回と年間2位の好成績を収めている。今年は野尻湖でガイドサービスを開始しスモール漬けの日々を送っている。その中でスモール特有の癖を掴み、今回の優勝に繋がった。詳しくは優勝者インタビュームービーで本人が語っているが「居れば一発で食う」「粘らない」「フォールがキモ」などをキーワードに湖北部を3日間ランガンした。狙いは多岐にわたり、初日は水深1m未満のフットボールジグ(3/8oz+ゲーリー4インチグラブ)で朝から連発、その後、馬の首バンクへ移動し同じく1m未満をダウンショット(ゲーリーピンテールワーム)のダウンヒルで攻略。晴れた2日めはバスがボトムべったりなことに気づき、ネコリグ(ゲーリーピンテールワーム)をもちいたシューティングで攻略。シャローではキャロライナリグ(ゲーリーヤマセンコー)や虫パターンでも追加し3366g。
最終日は前半大苦戦。行く先々で他のボートが釣っているシーンを見て気持ちが折れかかった。それでも自分を信じて釣り方・場所を決めつけず各所をランガン。1本550gが残ったものの、最終的に700g前後を4本入れて3424g。最終日は釣りビジョンカメラが同船しているので詳細はそちらで。
総合2位は馬淵利治。初日3282gと出遅れたものの、前出のとおり得意なシャローパターンに切り替えてからは怒涛のビッグフィッシュラッシュ。「まさか桧原湖でお立ち台に立てるとは思っていなかった」と。いつもなら悔しい2位だが、今回は嬉しい準優勝だったようだ。
総合3位は山木一人。大幅リードのアドバンテージを生かせずあと一歩及ばず。とはいえ2年連続のお立ち台の快挙。
4位はオールドルーキー頼末敦。関西在住の同選手は今回が初桧原湖。ノーマークだった月島南エリアを一人独占し初日2日めは3400g台。最終日も3キロを超え初参戦で堂々の4位。
5位は青木大介。お立ち台常連だった同選手も今年は不調に陥っていたがここに来て復活。青木レベルの選手になると、優勝以外のお立ち台では滅多に喜ばないが、今回ばかりはかなり嬉しそうだったのが印象的だった。
しつこいようだが年々大きくなっている桧原湖のスモールマウスバス。今年は遂に3日間の総重量が11キロ台にまでなった。今年5月のJB桧原は3本で3310gという記録がでた。プリスポーン期にトップ50が開催されたらどんなハイウエイト戦になるのだろうか?
記者は全国各地のフィールドに行っているが、
これらの条件を高度に満たしているバスフィールドは桧原湖以外に思い浮かばない。景色の美しさも日本のバスフィールドではNo1かもしれない。宿泊施設もバッチリ。ぜひとも全国のバスアングラーにこの素晴らしさを味わっていただきたい。
1位 北大祐 215p
2位 市村直之 202p
3位 澳原潤 190p
4位 青木大介 188p
5位 川口直人 180p
6位 篠塚亮 175p
7位 山木一人 174p
8位 沢村幸弘 173p
9位 SHINGO 171p
10位 早野剛史 168p
暫定トップ2は北大祐・市村直之で変わらず。今大会予選終了時に北が4位、市村が17位で北の楽勝ペースかと思われた。が、最終日に北が失速し単日23位。一方の市村は6位の成績。最終成績は北が10位、市村12位となった。現時時点での得点差は13。
計算上ワールドチャンピオンの可能性は暫定16位の田渕秀明まである(北が0点で終わった場合)。現実的には暫定10位の早野剛史あたりまでが逆転の可能性を秘めている。またクラシック出場を賭けた年間トップ10入り、エリート5のトップ5入りが確定するなど最終戦の見どころは多い。その最終戦がまかつCUPは10月4日から徳島県旧吉野川で開催される。
写真:NBCNEWS・オブザーバー
レポート:NBCNEWS H.Togashi