「諦めない気持ち」で最後の最後にキロフィッシュ連発!鈴木隆之が濁り水も制覇
2018年7月14~15日茨城県霞ヶ浦でJBマスターズ第3戦イズムCUPが開催された。ここ数年の恒例となっている真夏の霞戦。魚と人間との戦いに加え猛暑との戦いを強いられるのがこの大会。今年も気温水温ともに30℃を超える過酷な大会となった。優勝はクリアレイクを得意とする鈴木隆之。これまでに桧原湖・河口湖での優勝経験は多数あるものの濁った水での初優勝となった。
Day1 佐々一真同船レポート
初日NBCNEWSは年間ランキング3位につけている新鋭の佐々に同船した。
前日プラでは「行くところ、行くところ反応があって困った」という。軽く4~5キロはいく感触だったそう。今日のプランは朝の有望ポイントでキーパーを釣る。リミットメイクが理想だが、3~4本は釣りたい。その後、グッドサイズを求めて湖各所のスポットをランガンする、という作戦。
早いフライト順だったので、狙いの沖テトラ帯にすんなり入れた。7時30分釣り開始。
投げるのはシャッド(シマノ・パブロシャッド59SP)数多くある沖テトラ帯でなぜこの場を選んだのかと尋ねると、その一文字だけブロックの沈み方が他と異なり沖目までブロックが沈んでいるという。シャッドを常に沈みテトラに当てつつ巻いていた。
釣り開始3分で1本めがヒット。
ナイスキーパー。長さはそこそこながら体高があってコンディションも良い個体。
このタイミングでこのエリアの時合だったようで、外側を流していた一般の方のボートが連発(しかもグッドサイズ)、隣のテトラに浮いている北崎友康も釣っていた。
記者は純粋に「霞ってこんな釣れるんだなー」と思った。そして佐々のパブロシャッドがまた襲われた。
開始30分で2本キープという快挙。まだテトラ帯の片側しか流していないため、このまま揃うのでは?という期待が高まる。が、しかし。さすがにそこまでは甘くなかった。
9時前に弱風によるさざ波がテトラに当たりだした。活性UPを期待するも状況は変わらず。周囲にたくさんの沖一文字があるが、そちらへ移動せず同じテトラをぐるぐる回っている。風が吹いたあとはクランクベイト(シマノ・コザック)を巻く場面もあったが、最初の2本以降反応がなくなる。
9時21分。はじめてのエンジンによる小移動。同エリアにある数本の竹杭があるスポットへ。ダウンショットを杭周りに落とす。1本の杭に対し2~3回。けっこうじっくり狙っていた。一回だけギルっぽいバイトがあったものの、釣果は得られず。
9時46分。51号橋周り~北利根へ移動し鉄パイプや杭をダウンショットで軽くチェック。すごく細かいバイトはあるという。のちにヨシノボリ系のバイトだと確信することに。本来のプランではこの時間までに3~4本はキープしておきたいところだったが現実は2本のみ。しかし前進あるのみで10時15分にグッドサイズを拾っていくパターンにシフトした。
妙技エリアまで移動し沈船をラバージグなどで狙う。
沈船狙いで活躍していたのがハイテク魚探
ガーミンのGPSMAP7408の前方ソナーで沈船の位置・高さをチェックしながら高効率でチェック。
10時53分。妙技入り口のショアラインをスピナーベイトで流すも反応なし。
フレッシュ(そうな)水が流れ込む激浅水門へエレキマウントにフェンダーを挟んで侵入。「流れ込み+周囲がカバー+リップラップ」という夏の教科書的なスポットで期待が高まる。前日プラでは魚影を確認していたらしい。
が、今日は残念ながらお留守。
11時30分霞ヶ浦大橋まで移動。この頃にはかなりのハイライト。シェイドを狙うしか無いということで、沈み木や縦ストの影などをチェックする。なお朝27℃だった水温が昼頃30℃を超えた。
12時19分。近くのドックの壁打ちやテトラを探ったりするもハゼ系バイトのみ。
帰着は14時まで。残り1時間というところで、朝イチに2連発した沖テトラへ。
あっけなく3本目。
他にもバスのウロコがフックについてきたりの反応があったものの追加出来ず。
「こんなんだったら一日ここで釣りしてればよかったですね~笑」といっていたが・・・・
結果3本1,868g 27位で初日を終えた。
Day1 横山朋毅が4475gでトップ
というわけで全体の釣果は112名参加で94名が検量台へ。ウエイイン率は83%とかなり良いものの、半数が1~2匹。アルミボートで参加する選手も多く、北利根エリアにボートが集中するため「魚の奪い合い」になってしまうのだろう。
この日のトップはトップ50の横山朋毅で4475g,2位は小林幸央で4162g、5位の伊藤康晴までが4キロ台。ただしマスターズ戦は総重量制ではなく2日間のポイント制で競われる。2キロ台の選手にも逆転の可能性はじゅうぶん残されている。
Day2 鈴木隆之同船レポート
2日めは初日3位の鈴木隆之に同船した。記者とは同郷であるため、スタート前の待ち時間のとき、子供の頃にみたCMネタなどで盛り上がりツカミはOK?
20分ほどの移動で最初のスポットへ到着。沖へ伸びる導水管。「ここで5本釣れたら良いですね~」と冗談っぽく言っていた。そんな馬鹿な話?と内心思ったが・・
「僕、釣りそんなに上手じゃないので笑わないでくださいね」と言いつつ導水管の脚へネコリグ(OSP 3D-ワッキーのカバーネコセッティング)を入れていく。答えはすぐに帰ってきた。
「うおおおおおお、優勝への第一歩!」とテンションMAXに。
サイズは小型ながらも、開始2~3投で1本めをキープできるというのは精神衛生上最高だ。腰を据えてリグり直す。なおシンカーは「そのへんのをテキトー」に使っているため重さ詳細は不明(推定1.3g)。
リグり直した次のキャストで!
まさかの2連続ヒット!霞水系でもこんなことが起こるんですね。
「あれ?やっぱり僕、釣り上手ですね(笑)」と更にテンションアップ。
まだまだ撃ってない橋脚がたくさんあるため、本当に5本釣れるのでは?という勢いだったが、さすがにそこまで甘くなかった。とはいえ、この導水管の釣りはあくまでも「行き掛けの駄賃」である。鈴木の本当のパターンはショアラインのカバー撃ちだ。初日はその釣りで5本キャッチ。そのうちの1本が2キロフィッシュだった。
メインタックルは4本。ドライブスティック4.5インチノーシンカーのオフセット順刺しとストレートフックの逆刺しバックスライド仕様の2セットをメインとして岸のカバーに落とす。
ウッドカバーの濃いいところにはドライブビーバーのテキサスリグ(初日の2キロフィッシュがこれ)。最後の1本が朝イチ使った3D-ワッキーのカバーネコで、ところどころ現れるシートパイルやドック、杭などの縦ストを狙う。
7時30分からメインのパターンに移行。
開始30分、8時にラインが横走りするバイトがあったがスッポ抜け。それを最後にしばらく無の時間が続く。なお、このストレッチはかなり浅く普通はバスボートでの侵入は躊躇いがち。前日もガラガラだったそうだが、2日めもほぼ貸し切りだった。「9時以降は食いが渋るので、それまでには4本とりたい」と言っていたが、9時までに朝の2本のみ。初日の佐々と同じ流れになっている。
なお初日は11時までに4本、2キロのキッカーは12時過ぎに釣れたそう。その後は場所温存のために、他の場所に移動したという。故にまだまだ魚は残っていると信じてひたすら流し、ひたすら撃つ。
時より現れる人工ショアラインにはダウンショットを投入。
10時13分。一番やりたかったというストレッチにウェーディングの先行者がいて凹む。でも声をかけて少し離れたところに入れさせてもらう。
そんな期待のスポットだったが反応なし。
おにぎりタイム。競技中、一切た食べない選手もいるが、鈴木は食べる派だった。
転機が訪れたのは11時45分。水門に絡むシートパイルをダウンショットで狙っていたときピックアップにグッドサイズがチェイスしてきた。
「うあぁぁぁ上げるの早すぎた~」と落胆する。その後も何度かアプローチするも反応なし。そしてまた事件が起こる。今度は反対側を撃っていたときに、ロッドが絞り込まれるところまでいったものの痛恨のミス。
デッキに崩れ落ちる。先程のピックアップチェイスのときに「歯車が狂い始めた」と言っていたが、このミスで「完全に狂った」と悲しげに言っていた。「でも、これがあるから(思い通りにならないから)トーナメントは面白いし、辞められないんですよ!」と元来の明るいタカユキスマイルで話してくれた。
時間にして4時間、距離にして約4.5キロメートルひたすらショアラインを流しチェイス1回・ライン走りバイト1回・フッキング後のミス1回。残り時間は1時間弱。ここで心が折れて諦めかけるも、気持ちを入れ替え、朝イチの導水管へ戻ることに。帰着時間が迫っていることと、帰着場所から更に離れることになるので、一か八かの勝負にでた。
朝は沖側から入ったが、今回は風下である岸側の脚からアプローチ開始。ここで記者は釣れる予感がしたのでiPhoneで動画撮影を始めた。そして朝釣れた先端付近の脚でロッドが絞り込まれた!
3本目!動画どり成功! pic.twitter.com/QuaE7boWTS
— JB/NBC Official site (@wwwjbnbcjp) 2018年7月15日
以下は動画から切り出した静止画。
朝の2本は小型だったが、これはキロフィッシュ。ネットに入った瞬間雄叫びを上げるのも無理ないサイズだ。
これでトータル2キロちょいは超えたはず。記者はキャストからランディングまでの一部始終を動画におさめることができた喜びを噛み締めながら、不要部分をトリミングしてツィッターにアップロード。ひと仕事終えた気分でシートに座っていたら・・・・え?また?
iPhoneに高温注意報が出ていたため、慌ててシートから飛び上がりデジカメを持ってバックシートへ無我夢中で連写するも、ふたりとも興奮しててとっちらかりの船上。
鈴木はネットイン後にロッドを落とし慌てて回収するなど船上が戦場に。最後の最後に奇跡の4本目しかもキロフィッシュ!
この流れも昨日の佐々と同じで「こんなんだったら、一日ここをやれば良かったですね」と佐々と同じセリフ(笑)
「あー帰着間に合うかな?」と怖い言葉を発して会場方面へ。結果、時間の余裕があって、北利根エリアで数キャストするも「なにかあったら怖い」ということで早めの帰着。
本人は過少申告するが記者の目にはどうみても3キロは確実に超えているように見える。初日に3キロあればシングルなので、2日めの3キロもかなり好成績なはず。あとは他の上位陣の結果しだい。優勝は無理でもお立ち台は確実だろうと思いつつ、鈴木のボートをあとにした。
Result 鈴木隆之マスターズ2勝目!
早々と検量を済ませた鈴木隆之の公式ウエイトは3402gだった。検量が進んでいくと初日2位の小林・山下がローウエイト。鈴木が最も恐れていた横山朋毅も1300台だった。残るはマスターズ選手の誰もが上手いと認める伊藤康晴。結果リミットメイクするもサイズに恵まれず2074g。
終わってみれば鈴木隆之は2日も単日3位の好成績だった。結果、260満点中256点の好成績で優勝。2003年の河口湖以来15年ぶりのマスターズ優勝カップを手中におさめた。桧原湖・河口湖のクリアレイク以外では自身の初優勝でもある。
レポートの通り、鈴木の戦略は徹底したどシャローカバー撃ち。2日めは結果的にサブパターンの導水管で全ての魚をキャッチした。お昼前の2度のミスで気持ちが折れかかったそうだが、最後まで諦めない気持ちを持てたのが勝因だったとお立ち台で語っていた。また「マスターズはみんな釣りが上手いので、ここに出ていないと釣りが下手になる気がする。ライバルの皆さんに感謝します」とも言っていた。現役トップ50選手が言う言葉なので重みがある。
そんな釣りウマ揃いのマスターズ選手でも一目置かれてるのが準優勝の伊藤康晴。日差しが強まる9時までは和田エリアの杭をダウンショットで、暑くなってからはシャローのウッドカバーシェイドを5gテキサスリグで狙うプランを実行。初日はサイズに恵まれ3本で4キロ超え。2日めも前半同じ展開をしたもののサイズが大幅ダウン。一気に狙い所を変え、今までやったことの無いエリアを新規開拓。釣り方は同じシェイド撃ちで1時間に4本ヒット。しかしこちらもサイズに恵まれず5本で2074g。ただ周りがもっと釣れてなく2キロでも2日め単日6位になり準優勝。
3位はクラシックウイナー斎藤哲也。霞ヶ浦の釣りでは日頃から場所よりもタイミングを重視。10分で5本釣れた経験もあるため、場所よりも連発するタイミングを狙っている。今大会では2日めにそれを引き当て1つのストラクチャーに時間を置いて入り直し合計6本釣ったという。
4位は横山朋毅。「アシ原にある冠水植物」がキー。そこにバックスライドワームを滑り込ませるパターンで初日のトップウエイトを叩き出した。2日めはその釣りが機能せず1370gを釣るのがやっとだった。
5位は中澤諒。北利根の沈みモノピンスポットをダウンショットで狙うパターン、晴れたら石積みシェイドにバックスライドワームを入れるパターンで初日2キロ、2日め3キロ釣ってきた。
年間ポイントランキングは時の人「藤田京弥」がトップをキープ
JB三大タイトルの一つ「バスアングラーオブザイヤー」はJBマスターズの年間ランキング1位に与えられる。全4戦中3戦を終えた時点でのランキング上位は以下のとおり。
暫定順位 | 氏名 | ポイント計 | 重量計 | 1位との差 |
---|---|---|---|---|
1位 | 藤田京弥 | 361p | 11,076g | 0p |
2位 | 佐々一真 | 356p | 8,060g | 5p |
3位 | 斎藤哲也 | 335p | 8,052g | 26p |
4位 | 横山朋毅 | 332p | 8,367g | 29p |
5位 | 野村俊介 | 324p | 4,842g | 37p |
先週のトップ50で優勝した時の人「 藤田京弥」がトップをキープ。同じく新鋭佐々一真が5ポイント差で京弥を追う。去年同時期同場所で開催された最終戦、藤田京弥は3位、佐々一真が18位。最終決戦は09/29 (土)~30日(日) 野尻湖で開催される。
写真・レポート:NBCNEWS H.Togashi